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ひとり福島旅行でいただいた「お酒」
東日本大震災の数年後、僕は福島へ1人旅に出たことがある。
理由は風評被害で福島の一次産業が苦しんでいたこと、それにともない飲食店も大変な思いをしていると知ったこと。
そんなことから、飲食で美味しい食べ物やお酒をいただいて、経済を回す役に立つかも!などと思い立ち、知り合いがいるわけでもない福島へ、ホテルすらとらず東京から夜行バスで思いついたかのように突然出発しました。(もちろん、美味しいものを沢山飲み食いしたい気持ちも大)
新宿のバスタでバスを待ちつつ、1人で福島へ旅に出ることをTwitterで呟くと、友人の1人からLINEがきて「え、死ぬの?」ってきて笑った。
安いバスの固いシート、ケツの痛みに耐えながら数時間経った後、午前4時30分くらいに福島駅にたどり着くとあたりは真っ暗で雪がチラチラ降っていて極寒の世界だった。
しばらく駅で暖かい缶コーヒーをのみつつ、バスで海沿いへ。その頃にはTVなどではすっかり報道されなくなった福島は常磐線が一部区域運行していないなど、未だ完全に復興したとはいえない現実を思い知ったのであった。
夜はいわき市の適当なホテルに入り荷物を置いたあとは、散策しつつ見つけた居酒屋でご当地のお酒をいくつか選びつつ一杯飲み、その店を出て向かった先はメインの目的「夜明け市場」。
夜明け市場は兄がTVか雑誌か何かで見たらしく、福島県いわき市の復興を目指して瓦礫の中作られた飲食店の集まりがあって作られたそうで僕に面白そうだから行ってみたら?と言われたのである。
一番行きたかった割烹のお店が定休日だったため、夜明け市場内の居酒屋に入り少し飲んで、手品バー(現在は閉店)に入り手品を見せてもらい何杯か飲んだ後で、KINKAという店に入った。
KINKAは正直1人で入るのも戸惑うくらい、中が見えない店で入って大丈夫かな・・・。とビビリながらの入店。中には常連ぽい2人組と、カウンターには兄弟のマスター2人。
僕は1人でビールを注文し待っていると、常連客の1人が「ここは御通しからすごいよ〜」と声をかけてくれたので、ワクワクしながら待っていると・・・。
確かに、御通しからすごい贅沢な料理だった。
あん肝と、玉子の天ぷら、ウニといくらが盛られたもので、その時すでに数軒ハシゴしていた僕のお腹は満腹気味だったので内心「うまそうだけど、胃のキャパやばいぞ!」と思いましたが、どれも最高に美味しくてペロりと食べました。
その後ビールを飲み、日本酒へ移行した頃には、店主2人と常連のカウンターの2人との話も盛り上がってきていた。(僕と兄は居酒屋でよくこうなる)
その中で「福島の復興の役に立てればとお金を使いにきたんです」そして先ほどの居酒屋でいただいたお酒が美味しかったなどと話した時に常連客の男性の1人が驚き言いました。
「あ!それ家の酒蔵だよ!ありがとう!」
僕も驚きました。そんな偶然あるんですね・・・。
その後は震災の話を聞かせてもらったり、僕が兄弟で音楽をやっていることなどを伝えると曲を店内で流してもらったりと、深夜まで飲んで最高に楽しい時間を送る途中、常連の方2人は朝が早いので・・・と帰ってしまったのだけれど、僕が帰り会計をする際にマスターから「さっきのお客さんが君の分全部払ってくれているから大丈夫だよ。」と言われました。
被災した方に、被災してない僕が御馳走してもらうなんて・・・、でもその気遣いがとても嬉しかった。
その方に2度と返せないかもしれない恩を、僕はいつか出会った別の人に返したいと強く思ったのだった。
願わくばそんな恩がグルグルと地球をまわってほしい。
孤独な1人旅に最高の思い出、最高のお酒でした。
また行きたい、福島。