この一か月、次のひと月
新しい出会い。それが、今これからの自分にはどうしたって必要だ。
ひりひりするような気持ちでこの数年考えてきたこと。明日から契約職員として勤務する会社では、どんなそれが待っていることだろう。
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三行だけ書いて放置していた。入社前日。この一か月を振り返ってみる。
入社日の朝。緊張しすぎて眠れなかったのと、朝から雨が降っていたからテンションは低かった。私服で勤務するのは初めてなのでオフィスカジュアルというものがよくわからず、初日からラフすぎるのもまずいかなというショーワ的な価値観に縛られて、ボトムはスーツのパンツ、トップスは半そでシャツの上にカーディガン、足元はパンプスを履いた。晴れた日には自転車、雨が降ればバスで通勤することにしているので、雨が降ったこの初日にはバスに乗った。
そして始まった新しい日々。
一週目は、フルに一週間五日間の勤務だった。毎日、行って帰るだけでいいと割り切ってなんとか過ごした。作業もほとんど与えられないので、入社日にもらった新規採用された方へ、みたいなパンフレットや就業規則を読んで過ごす時間がけっこうある。そういうとき、舅姑との間に起こったことや投げつけられた言葉がふっとよみがえる瞬間がたくさんあって、まだまだ立ち直れていないのかな、と落ち込んだ。
二週目も引き続きそんな感じ。フラッシュバックもばりばり。
自分らしさをまったく出さずに、出せずに過ごす日々はしんどい。だけど、私は自分自身を磨くためには、こういう時間の中に宝があることを知っている。自分らしく生きることを目指すだけが豊かな人生ではない。そうはできなかった経験が、いつか大きな実りになることを知っている。
三週目は、外線電話の一部に対応することになり作業も増え始め、それなりに日が過ぎるようになってきた。数人の方から、もう慣れた?と声掛けをしていただくが、はいともいいえともいえず、わかりませんとできるだけほがらかに答えている。三月末までの契約、双方希望すれば一年度ずつの更新、最大五年間。その前に八月二十日までは試用期間。先のことは考えすぎず一日ずつを積み重ねていけたらそれでいい。
四週目は、自分の人生に少しの前進を感じた。
それは、「新しい場所で苦手な人ができたこと」
私はこの数年間というもの舅姑との関係に神経をすり減らし続けてきたから、その他で出会うネガティブな出来事が、ちっとも心に残らなかった。
遠くに住む自分の両親や友人に連絡する以外は日常に接触するのは夫と彼らだけ、という日々を過ごしていたから、苦手になるほどそれ以外の他者と関わることがなかった、ともいえる。改めて考えるとこれってなかなか気持ち悪い。自分の人生におけるネガティブなものが舅姑だけに集約されて、それ以外は見えなくなっていたなんて、まともな環境じゃなかった。
職場の方でひとり苦手な人ができた。この人は私の直接仕事を教えてくれる先輩。三つ上の女性で十四年目の契約職員。入社した時期によっては契約職員の一部は無期雇用らしくこの人はそうなんだとか。
同じ業務グループのほかの三人の女性もそうで、皆さん十年以上勤務しているベテランばかり。無期雇用の四名の中に、最大五年間勤務の私がひとり追加されたという感じ。
この先輩、いい人なんだけど、返事下手。作業の終わりや質問に対して、ぶっきらぼうにハイ、とかはあ、とか冷たく言い捨てる癖があるみたい。他の慣れ親しんだ人たちにはしない。ひとところに長くいる人ってこういうところがあるんだよなあ。と過去の経験に照らし合わせてしまう。それは昔の自分自身。私、こういうことたくさんやってたな。と思い出す。そこの職場のことなら何でも知っている、みたいな存在になるとささやかな言動に傲慢さがのぞくようになる人がいる。「機嫌がいいときはいい人」危ない危ない。
この人苦手だな、と思ってる間は舅姑のこと全く思い出さないので、これもひとつの新しい出会いだし、自分が望んでいたことだと思っている。
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明日から二か月目。残りひと月の試用期間。
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