見出し画像

脇エピ満点 ㊳「悪夢館でつかまえて」

秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ順不同にいきます。 

38作目「悪夢館でつかまえて」1996年

ある日の学校帰り、桜崎探偵事務所へおもむく由香と左記子。そこにお昼をごちそうしてくれるはずの圭一郎さんたちの姿はなく、知らない男の子がひとりいた。二人に相談したいことがあるというその男の子は桜崎さんたちを「圭一おじ」「圭二おじ」と呼ぶ。なんと二人のお姉さんの息子で、甥っ子だという。友人の家でおかしなことが起こっているので話を聞いてほしいということで、二人は彼と現地に…。

出版当時、二人と同じ高3の受験生だったわたし。読み始めたときは年上だった二人とどんどん年齢が近づいていく中で、この作品は実際の自分を数か月差で先行く二人。二人は受験の結果が出てていいなあ、私はこれからだもんな、と思いながら放課後のマクドナルドでこの作品をひとり読んだことを覚えている。

***************************

この作品は、主な事件のほかに脇のエピソードが面白い。由香と左記子のW家出。どちらも母親とのケンカが原因。

雨の渋谷で、由香と左記子は偶然にも菊地さんの姿を見つける。

「俺はきみを忘れない。だから、たまには、電話しろ」
(それが、菊地さんの最後の言葉だった)

かかってはこないとわかっているのに、たまには電話しろなんて言えない。

最後の言葉がこれだなんて、そりゃ作者もまた出してレギュラーメンバーにするよ。こんな魅力的な人。

************************

本篇の事件は、いつものように関係者の証言や行動の矛盾に違和を感じた由香の推理から解決へ向かっていく。ときどき、真犯人が睡眠薬などを由香たちに盛ることがあるけど、今回はそれでした。桜崎さんたちが救出に来るためのお約束感は多々あるが、カッコいいので好きです。

いつまで経っても、これは「高3の頃マクドナルドで読んだ」ことを覚えてるんだろうなと思う、大事な一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?