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初期の良作 ㉖「葡萄畑でつかまえて」

秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ順不同にいきます。 

26作目「葡萄畑でつかまえて」1994年

依頼人の登場につながるまでの導入部が、左記子のハチャメチャな行動によるもの、というのはこのシリーズの初期にはよくあった。
探偵ごっこをしていることを校内で吹聴してまわり、それがきっかけで相談を持ち込まれるパターン。

この作品は左記子が「チラシ」を作って小林くんと由香を巻き込むことで始まる。つかまえてシリーズには、こうして左記子が作ったチラシとか招待状、ときどき出てくるけどどれも本当に面白い。

最初に関係ない人たくさん出して三人のらしい盛り上がりを見せてから、本当の依頼人と巡り会うことで本編に入る。

左記子が作ったチラシはワープロで作ったもの。
そのページの挿絵、とっても時代を感じる。
正体不明氏への連絡手段は公衆電話。
初期のつかまえては、メンバーが公衆電話を使うシーンがけっこう出てくるし、待ち合わせの方法も○○に目印の○○を持参で、という古典的なものが多くて時代を感じるけど、そこがまた、とてもいい。

事件解決も、圭一郎、圭二郎の力を借りながらの地道な捜査で真相にたどり着くし、初期の良さがたくさんつまった良作だと思います。

「病院勤務なのに違う病院に通院すること」が解決のヒントになるけど、これってそんなにおかしなことなのかは、当時と現代では少し違うのかもしれないなと思う。

由香の異性関係で気になるのは、「つきあっていたような、いなかったような関係」って表現。小林くんとも、菊地さんとも、圭二郎とはっきりするまでも、この表現好きだよねえ。つきあっているような、いないような関係って、昔も今も私にはよくわかんない。

初期の良作として、好きです。



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