ホームノートはじめの記

高速バスをO駅で降りる。B市行きのバスへ乗り継ぐ。国道10号線、高崎山を過ぎるとBの景色が見えてくる。普段は胸を衝かれるような感動に似た思いがあるのに、今回はなかった。なぜかはわからない。左側の窓から見える「ラクテンチ」のライトをいつまでも目で追う。大人になってからも思い出がある場所。祖母と行った電器店の展示会。Wくんとのデート。改装で盛り上がっていた2004年ごろは、A子さんと何度も。そう考える間にバスはB市街へ近づく。
T温泉近くのバス停で降りて歩く。行きつけの店を通りすがると、RさんとYさんとLちゃんがいた。私に気づいた、LちゃんとRさんが出てきてくれ、ご挨拶。店の横の階段から自宅部分へ。お父さんの部屋をのぞく。寝てた。
再度、店に降りて待っていると母が帰ってくる。友人とその辺で遊んでいたらしい。いつものMさんで、揚げ出し豆腐、にゅうめんなど。座敷にいたのは高校の部活のK先輩。私の母も交えて一時間ほど話し込む。あんた遠くに行ったんやっちな。昔と変わらないしゃべり方で懐かしかった。そうなんですよ。さびしいです。誰も遠くに行きよなんか言ってねえになあ。母の相槌もさびしいです。帰宅後は風呂に入って、母と居間で話。こんなこと昔はしなかった。遠くに離れたことで得たものだと思う。寝ていたはずの父も起きてくる。可愛くよぼよぼしてた。故郷で過ごす自室の夜は貴重で、眠るのがもったいないけど明日は朝起きて行きたいところがあるからおやすみなさい。YさんとLちゃんに幸せそうだと言われたから、安心しました。本当かな。さびしさ、という言葉が常に自分に貼りついていて、取れないよ。

当時の日記を編集したもの。私は高速バスでO県B市に帰省する。当時の実家は店舗付き住宅で、B市の繁華街の中にあった。

ホームへの気持ちがなかなか断ち切れず、断ち切らないと自分の幸せはないような、追い詰められた心境でもあったころ。



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