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家族の節目の手作りデコレーション?ケーキと私ーその1

「お誕生日おめでとう」
家族の誰かが誕生日を迎え、皆でお祝いをする。
ケーキは毎年手作りだ。
母がジェノワーズを焼き、真っ白いホイップクリームと赤い苺がその上にのる。
ジェノワーズは二段になっており、その間にも缶詰のみかんがひそんでいる。
家庭で作るケーキだから毎年出来栄えが変わる。
ジェノワーズがかたかったり、クリームがとても甘かったり。
それでもなんだか美味しくて。

それは私が子どもの頃のお誕生日の思い出だ。

そうして私はその思い出をもとに、お誕生日にはケーキを焼く。
お誕生日=デコレーションケーキ
その図式は揺るがなかった。
しかし、その図式に激震が走った。

思い出すとバニラの香りすら漂う気がする、デコレーションケーキに対する家族の評判が今ひとつなのだ。

18センチの手作りデコレーションケーキは後日に持ち越され冷蔵庫へ収まる。
その後食べたがる声も聞こえることなく、なんとなく消失する。
そんな調子だった。

デコレーションケーキは手間がかかる。
ジェノワーズを焼くところから始め一度冷やすことを考えると1日がかりだ。
冷蔵庫に収まりその後声がかからないケーキを見ると、完成までの労力にそぐわないやるせなさを感じた。

ある時、娘が小学校へ入学した頃だろうか。
誕生日をひかえた娘に、ケーキへの要望を聞いてみた。
返ってきた答えは「チーズケーキ」だった。
デコレーションケーキよりチーズケーキが好きだという。

誕生日に、チーズケーキ??

デコレーションの必要がない、チーズケーキ??

娘の誕生日は6月なので、苺がない。
ということでさくらんぼを飾っていた。
北海道で買う6月のさくらんぼは高い。
しかし娘の誕生日だから!と奮発して用意していた。
そう、その必要もない。

そうして作られたチーズケーキは好評で、その結果毎回それぞれに要望を聞くことにした。
娘はチーズケーキ、それに引っ張られて息子もチーズケーキ。
夫に至ってはチョコのブラウニー。
そう、夫は果物全般が苦手で好んで食べない。
果物のゼリーや缶詰は食べるのに。

そんな調子で迎えた昨年のクリスマス。
そう、クリスマスもやはり手作りケーキだ。
誕生日のケーキの要望に引きずられるようにクリスマスにもチーズケーキやチョコブラウニーを焼いていたが、ここにきてデコレーションしたい欲が私の心にムクムクと広がってきた。
単純に、冷んやりしたジェノワーズにデコレーションするのが好きなのだ。
搾り袋に程よくホイップしたクリームを詰め、さまざまな金口を駆使しながら美しく絞っていく。
真っ赤な苺を程よく飾っていく。
完成の頃にはなんともいえない幸福感と達成感に包まれる。

私の心はすっかりデコレーションケーキモードにシフトチェンジされ、クリスマスシーズンに出回る苺も買った。
んが。
「土台のケーキとクリームは好きだけど、果物のせないで」
それが夫の要望だった。
今まで秘めていたのか、初めてそう言ったのだった。
そこまで果物が苦手だったのか。
張り切って作る私の手前、言えなかったのだろうか。

とはいえ、私は真っ白なホイップクリームが苦手。
果物と合わさることでなんとか食べていたものの、それだけだと厳しい。
折衷案ということでチョコホイップで冷えたジェノワーズを包んだ。
二段にしたものの、間にもチョコホイップのみ。
チョコホイップを作る手間に疲弊し、搾り袋を使うことはなかった。
更地のケーキに申し訳程度に粉糖をふった。

苺は別皿に盛られた。
子ども達は苺が好きなのだ。
あっという間になくなった。

さて、今回のデコレーション?ケーキに家族の反応は…

皆大喜び。
かつて後日に持ち越していた完璧な姿のデコレーションケーキではない、デコレーション?ケーキは、完食されたのだった。

少し形は変わったが、この時まで「家族で同じものを分け合って食べる」という私の希望と概念はかろうじて保たれていた。

しかし、今年迎えた夫の誕生日にそれすら崩れ去るのだった。

その2に続く

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