アウトブレイク ―感染拡大―
Epidemie/Outbreak(フランス/カナダ/2020)
感染拡大を防ぐには新たな感染者を見逃してはいけない――
医療スリラーとしてスタートしたこのドラマ。驚くべきことに、放送が開始したのは2020年1月。
製作者も出演者も、撮影中はまさか世界がこんなことになるとは思いもしなかった、と驚いているそうです。
今日は昨日と同じ。明日も今日と同じはず、と無意識に信じて生きている中で、新しい脅威に人はなかなか気づくことができません。
違和感を感じても、「まさかね」と見過ごしてしまう。
その隙をつくように、新型感染症はまたたくまに広がっていく――
特定の民族が感染源だというバッシング、ヘイト、医療従事者の声に耳を傾けない政治家、無責任に拡散していく根拠なき噂、浸透しない感染対策、マスクや医薬品の不足、それにともなう買い占め、高額転売、院内感染、医療崩壊。
ドラマの中で起こっていく出来事は、まさに私たちが今、現在進行形で体験していることばかりです。
ドラマの中の人物たちを追いながら、
手から手に渡されるペン、素手で持つティッシュ、感染者に防護服なしで対応する医師、咳をする人に貸したスマホ――ああ、今接触感染した、飛沫感染した、空気感染した――そんなふうに鳥肌を立てながらの鑑賞でした。
ドクター・ルクレールが呼びかける感染対策は、マスクをする、よく手洗いする、感染者に接触しない、密集しない、感染者を見逃さない、新たな感染者を出さない。これも今現在の私たちにとって「ニューノーマル」となっている提言ばかりです。
ドラマにはエンディングがありますが、現実世界にエンディングはありません。
次々に変異するウイルスの報告、増え続ける感染者数、という現実が、アフターコロナを迎えるまで続いていきます。
感染しない、感染させない、手洗い、消毒、人の密集を避ける、マスクをする――こうすれば感染爆発は防いでいける、とドラマは伝えています。
私たちも、半年前には、今の状況など夢にも思いませんでした。
劇中の、PCR検査、パンデミック、オーバーシュート、クラスター、コロナウイルスという言葉も、半年前には馴染みのない言葉ばかりです。
「まさかそんなはずは」という出来事が次々に襲い掛かってきて、本当にドラマそのものの現実が目の前にあります。
ドラマを鑑賞する中で、ドクター・ルクレールとともにウイルスと戦う体験は貴重な時間になりました。
とてもオススメのドラマです。
コロナ禍で戦うすべての人に感謝をこめて――――