副業ダイアリー 4 身体を損傷する職場環境
日本には古くから職業病、という言葉が浸透しています。
職業病とは一体何でしょう
繰り返し人体に負荷が加えられ続けると、身体には様々な故障が生じていきます。
パート、アルバイトでメジャーな損傷
変形性膝関節症
TFCC損傷
腱鞘炎
筋膜炎
頸肩腕障害
腰痛
半月板損傷
亜脱臼
ヘルニア
などが挙られています。
痛みを伴う、そしていったん発症してしまうと長期に渡って再発・悪化を繰り返す悩ましい疾患です。
A子さん
スーパーレジ打ちのパートタイマーで勤務中、10キロ以上のレジカゴ(米・ビール・徳用冷凍肉・ケース売りペットボトル飲料)をシフト中、何度も繰り返し運搬した結果、肩、肘、手首、腰、膝に激しい痛みとしびれを感じるようになった。
現在通院中。
B子さん
ネットスーパーアルバイトで勤務中、ケース売り、箱売りのアルコール類、ペットボトル、洗剤、米を繰り返し運搬した結果、首、肩、背中に激しい痛みが発生。
腱鞘炎、ヘルニアと診断され通院中。
※どちらのケースも事業者側は労災を認めていません。
アルバイト・パート・非正規雇用でも労災保険は適用されます。
しかし、労働が原因で健康を損ねてもなかなか労災認定されない現実があります。
事業主側が労災を認めてくれない場合は労働基準監督署に相談してみましょう。
厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署、等で対策を呼びかけていますが――
人間は物質ではなく、生身の存在です。
扱える重量には限界があります。
女性労働基準規則
重量制限
つまり、体重48キロの女性の場合
48kg×40%×60%=11.5kg以下となります。
お米10キロとペットボトル2リットルのレジカゴは一発アウトですね。😔
身体の損傷が起こりやすいレイアウト ~スーパーレジ~
レジ打ちのたびにレジ担当者がレジカゴの移動をしなければならないレイアウトの店舗があります。
混雑具合にも左右されますが、おおよそ2桁から3桁の件数、レジカゴ運搬をレジ担当者が行うことになります。
このようなレイアウトは身体への負担が大変大きいです。
求人に応募する前に職場環境のチェックをしておくと安心です。
運搬するレジカゴは一つで10キロオーバーはざらで、それがカゴ2つ、というケースも非常に多いです。
この場合、一組の顧客対応ですでに重量制限オーバーです。
これを数時間連続で、おおよそ2桁から3桁の件数、行わなければなりません。
また、リスクの少ないレイアウトの店舗でも、高齢者ユーザーの増加から、レジカゴ運搬回数が増えています。
POS導入で職業病問題は解消されたのか?
POS導入によりレジ担当者の身体的負担問題はほぼ解消された、という見解の事業主が多いのですが――。
共働き家庭が一般的となり、休日に買いだめするユーザーが激増した今、キロ単位の買い物光景はごく当たり前のものになっています。
ケース売りビール、米、ケース売り洗剤やケース売りペットボトル飲料など10キロ前後のものを何時間も繰り返し手首で持ち上げ、さらにスピードを要求される現場では、POS導入後も変わらず身体の損傷、痛みに苦しむ人が絶えません。
繰り返しの負荷で、首、肩、背中、肘、手首、手指、股関節、膝、足首、等の損傷が起こっていきます。
これは後々、フレイルを引き起こす非常に危険な損傷でもあります。
寝たきり(要介護)につながるフレイルとは
関節疾患は一度発症すると慢性化し、フレイルにつながっていく深刻な疾患です。
3分でわかる「フレイル」
寝たきり(要介護)となる原因の第5位が
関節疾患
です。
(1位認知症 2位脳血管疾患 3位高齢による衰弱 4位骨折・転倒)
腰・膝・足首の痛みから歩行が困難になると、歩行時間が激減します。
歩かないことで筋肉減少、体力低下が加速し、それが歩行困難を加速させるという負の連鎖が起こります。
動けないことでうつ病などの精神的フレイルや認知症にもつながっていきます。
健康寿命を伸ばすには、フレイル対策はとても重要になります。
パワードスーツ!?フルアーマー!?
必ず身体に負荷がかかる環境で働く場合、損傷が起こる前に、コルセットやテーピング、サポーターを付けておくことをオススメします。
痛みや損傷をかなり防ぐことができます。😉
現場の方々が個人負担で購入している現状ですが、制服にコルセットやサポーター機能がはじめから装備されていれば、労災や離職者を相当数、防げるのではないでしょうか。
事業主の皆様、いかがでしょう?
アシスト機能装備やスプリング機能装備の近未来型の制服が標準となれば、人手不足や離職ドミノの現場に新しい風が吹くかもしれません。
海外のレジ事情
万年人手不足の日本のレジ現場ですが、海外ではどうなっているのでしょう。
・重量制限オーバーのレジカゴ問題
欧米 なし → そもそもレジカゴが無い。
・ケース買い、箱買い運搬問題
欧米 なし → そもそもスタッフが持ち上げない。ケースや箱はカートに乗せたまま、ハンディスキャナーで読み取りをする。
欧米のスーパーでは、買い物客が商品を直接カートに入れ、会計時にレジのベルトコンベアに商品を乗せてから、袋詰めエリアに移動します。
スタッフがスキャンしたらそれをどんどん袋詰めしていく、という流れが主流です。
「なぜ日本のスーパーは何度もカゴの中に品物を入れるのか」と来日した外国人の方によく聞かれます。
商品→レジカゴ→商品スキャン→レジカゴ→袋詰め という買い物方法は日本ならではかもしれませんね。
日本も車で買い物に行き、キロ買い箱買いが日常風景になってきた今、需要に合わせて、レジカゴやカートの形状、レジ決済方法も変わっていくのかもしれません。
子供の世話をしながら大量の買い物をするユーザー側からも「スキャンした商品をそのまま袋詰めしたい」という要望が増えています。
ユーザーやスタッフが「使いにくい」と感じるものには、改善の余地がまだまだある、というヒントなのです。💡
一部店舗では、スキャン後の商品を持参のレジカゴに入れ、袋詰め作業なしにそのまま持ち帰れる、マイレジカゴ、マイレジバスケットなどのサービスを導入していますが、あまり普及していない様子です。
そんな中――
スマートショッピングカート
レジに並ばなくて良い、買い物しながら合計金額が見える、決済がスムーズ、という画期的なスマートショッピングカートを導入する店舗が増えてきました。
ユーザーやスタッフが抱えている「困りごと」や「要望」をかなり解決できそうですね。
2022年現時点、私はまだ利用したことがないので、是非利用してみたいと思います。😀
労働現場での死亡
見過ごされることが多いのですが、過労死につながる、労働による「疾病に付随する疾病」も深刻化しています。
ワンオペシフトや、安全管理が困難な少人数シフトの現場、
さらに、安全、人命よりもコストが重視される現場がますます増えています。
働きながら疲弊して死んでしまう人がひとりでも減ってゆきますように――。