エルデンリングにおけるルーンクエストの影響について

以前『ダークソウルにおけるルーンクエストの影響について』という記事を書いたところ多くの皆さまに閲覧していただいたので、今回はエルデンリングにおけるルーンクエストの影響について語っていきたいと思います。
なお、媒体をpixivからnoteに変更しました。エルデンリングに関する別の記事もnoteにアップする予定です。

ルーン

 「ダークソウルにおけるソウルの代わりになるものは?」ということで新たに選ばれた通貨単位が「ルーン」でした。ルーンクエストでは別に「ルーン」を通貨単位にすることは無いのですが、最初の解説として外しておくわけにもいかないので項目を立てました。
 ダークソウル系列におけるこの「ソウル」や「ルーン」は「通貨=経験値」というかなり独自のシステムです。システム的には「金銭でレベルを買う」ということなのですが、通貨単位の名称を「ソウル」や「ルーン」にすることでグッとイメージを変えてあります。
 ちなみにルーンクエスト側の基本通貨単位は「銀貨」です。

大ルーン

 「通貨単位としてのルーン」ではなく、プレイヤーたちの中間目標となるのがこちらの「大ルーン」です。この「大ルーン」のほうが「ルーンクエストにおけるルーン」に近い存在です。
 実は現行の「ルーンクエスト:グローランサ(RQG)」になるまで、ルーンクエストではあまり「ルーン」そのものはゲームシステム上で扱われていませんでした。むしろ、エルデンリングのほうがよっぽどルーンをクエストしています。

死のルーン

 エルデンリング発売当時にルーンクエスターたちの間で大きな話題になったのがこの「死のルーン」に関する話です。
 エルデンリング側のメインストーリーは「黄金のゴッドウィンが盗まれた『死のルーン』の欠片で暗殺された」というものです。
 対してルーンクエストのメイン神話は「嵐の神が兄弟である死の神から盗んだ死の力を使って太陽神を殺害する」となっています。
 「流れがまんま同じではないか!」と驚かれたわけです。
 このあたりの設定が、ジョージ・R・R・マーティン側の原案にあったのか、宮崎英高氏側の翻案にあるのかがわかりません。
 ただ、「エルデンリングが砕ける前まではマーティンの世界設定に沿っている」ようなので、少なくともベースはマーティン案にあったと思われます。

律の修復

 ルーンクエスト側では、「太陽神の殺害で世界が暗黒に包まれ、反省した嵐の神が地獄の底まで太陽神を探しに行く」という神話に繋がります。
 世界中に存在する「地獄くだり」の神話の一形態と言えるでしょう。
 ルーンクエストの世界グローランサではこれが成功し、1600年前に「時」が始まります。それより前が「神代(神々の時代)」です。
 言ってみれば、グローランサは1600年前に「律の修復」に成功したわけです。
 なお、エルデンリング側における「ゴッドウィンの殺害」と「エルデンリングの破砕」はイコールではなく、エルデンリングを破壊したのは女王マリカであって「ゴッドウィンの殺害」によって自動的にエルデンリングが壊れたわけではありません。このあたりのエルデンリング側のややこしい話は別の記事にしたいと思います。

黒き剣のマリケス

 女王マリカの影従。マリカから「死のルーン」の管理を任されたもの。
 ルーンクエストにおいて「死」のルーンを持つ神はフマクトです。彼は剣の神でもあります。フマクトはトリックスターの神が見出した「死」の力を彼から渡されたとき、それを用いて兄弟である嵐の神々との縁を切った高潔な神です。
 ただ、フマクトはマリケスと違って「剣」の要素はあっても「獣」の要素はありません。様々な媒体で指摘されていますが、マリケスの姿は漫画『ベルセルク』の「狂戦士の甲冑」獣化変形バージョンをベースにしていると思われます。
 「死」の力を奪われたフマクトですが、ルーンクエストにおいて「死」の力は様々な神々の間を回ったあと最終的にフマクトのもとに帰っています。これはエルデンリング側との大きな違いです。
 ただ「死」のルーンを持っているのはフマクトだけではなく、混沌の神々には「死」のルーンを持っているものが多くいます。
 これはルーンクエストの正式な設定ではないのですが、「該当ルーンを2つ持っている神がそのルーンの現在の正式な管理者である」という広く信じられている説があります。エルデンリングで言えば「大ルーン保持者」です。フマクトは「死」のルーンを2つ持っており、現在の「死」のルーンの管理者と目されています。

黄金樹

 ルーンクエストをご存じない方が知りたいのが、「ルーンクエスト側に黄金樹に似た神話はあるのか」ということだと思います。
 基本的にはありません。ルーンクエストにおいて樹木の神話はほぼ「エルフ」に独占されているからです。
 ルーンクエストのエルフは指輪物語やその影響を大きく受けたD&Dのエルフとは全く異なります。ルーンクエストのエルフは「知性ある植物」で、ダークソウルの「黒い森の庭」に出てくる「樹人」をより人間ぽい姿にしたものと思えばいいでしょう。
 彼ら「ルーンクエスト・エルフ」の神話は「世界樹」のような一本の巨大な樹木を中心とした教義ではなく、世界を覆う「広大な森林」を前提としています。もっと言うと「すべての植物」です。ですから「黄金樹」のような存在はありません。
 根本的な話をすると、マーティンの原案に「黄金樹」はなかったようです。つまり「エルデンリング」と「デミゴット」がマーティンの原案で、そこに宮崎英高氏が「黄金樹」の話を突っ込んだ。「エルデンリング」と「黄金樹」のすわりが悪いのは、その2つがパッチワークのようにツギハギされているからだと思われます。
 『エルデンリング』の神話におけるルーンクエストの影響は、前の項で解説していますが「死のルーン」まわりと言えるでしょう。

坩堝の諸相(aspect of the crucible)

 「諸相(aspect)」という新しいタイプの祈祷が来て「これは何だ?」と思われた方も多いと思われますが、これはルーンクエストの「混沌の諸相(Chaos Feature)」というシステム/呪文が由来だと思われます。
 ルーンクエストの混沌生物の多くは「混沌の諸相」と呼ばれる特殊能力を持ちます。対して特殊神聖呪文『混沌の諸相』は必ずしも良い結果を生むのではなく、半分の確率で「混沌の諸相」ではなく呪いを受けます。ただしエルデンリングの「諸相」祈祷はそこまで再現していません。
 「坩堝の諸相・喉袋」は「混沌の諸相」の「火を吐く」。「坩堝の諸相・尾」はLords of Terrorで追加された「尾が生える」を再現したものでしょう。
 祈祷ではありませんが、戦技の「坩堝の諸相・翼」は「混沌の諸相」の「驚異的な跳躍能力」が近いですね。
 DLCの「針」と「花」に関しては「混沌の諸相」に似たものは無いです。それぞれ「黄金カバ」と「ミランダフラワー」の再現を「坩堝の諸相」枠に入れたものと思われます。「坩堝の諸相・針」に関しては「その桁違いの弱さで呪いの『混沌の諸相』を表現している」という穿った意見もありますが……。

混種

 「坩堝」と関連する存在に「混種」がいます。これは様々な動物の要素が混ざり合った諸相を持つ種族で、ルーンクエストにおける混沌の種族「ブルー」をイメージさせる存在です。
 「混種」の解説文には時々「諸相」の単語が混じっており、「坩堝-諸相-混種」はセットになっていることが分かります。実際にゲーム内でも坩堝の騎士と混種の戦士は同時に出現することがありました。
 ダークソウル3には「グルー」という「ブルー」をベースにした種族がいました。ブルーはヤギベースが多いので「グルー」のような角付きの個体が多いのですが、本来はもっと多様な動物の特徴を持った存在です。ダークソウルよりも表現力の上がったエルデンリングでは、「混種」は「グルー」よりも様々な動物の特徴を採用しています。

朱い腐敗

 「毒と何が違うのか?」ということでいつも取り沙汰される謎の状態異常「朱い腐敗」ですが、これもルーンクエストの「混沌」を再現したかったのだと思われます。
 ルーンクエストにおける「混沌」は「悪いもの全部」といった感じで、膨大な量の設定が存在します。エルデンリング側にはそういった「単一の絶対悪」は存在しないので、ルーンクエストの「混沌」の要素が各勢力にバラバラに反映されています。
 マレニアとラダーンはエオニアで激突し、マレニアが「朱い腐敗」の根源「エオニアの花」を咲かせたことでケイリッドは腐敗に汚染されました。この設定はグローランサにおいてルナー帝国の「赤の皇帝」が宿敵であるペントの遊牧民に対する最後の切り札として混沌の力を戦場に呼び込み勝利した「恐怖の夜」を思い起こさせます。
 混沌を用いる洗練された帝国ルナーのイメージカラーは「赤」であり、ルーンクエストにおいて「混沌」と「赤」は密接な関係があります。「朱い腐敗」のイメージの源泉と言えるでしょう。
 朱い腐敗に汚染された「エオニアの沼」のように、グローランサには混沌に汚染された地域「ドラストール」が存在します。むしろルーンクエスター達は実際に「エオニアの沼」を見て「ドラストールってこんな所なんだろうな……」とイメージを逞しくしたようです。

宿将ガイウス

 ガイウスについては「なぜこいつはイノシシに乗っているのか?」と不思議に思われた方も多いと思いますが、実はこれもルーンクエスト由来の可能性が高くルーンクエストには「タスクライダー」と呼ばれるイノシシ乗りのグループが存在しています。
 ただし、ルーンクエストにおける「タスクライダー」はエルデンリングで言うところの「亜人」によく似た種族で、ガイウスのような騎士っぽい敵ではありません。

地形竜

 これはエルデンリングの正式な用語ではありませんが、エルデの地で多く見られる「地形と化した巨大竜」のことです。
 本編では「王都ローデイル」にある巨大竜の亡骸、DLCでは「竜餐の大祭壇」の近くにある巨大竜の亡骸を思い浮かべていただければよいでしょう。「竜餐の大祭壇」の巨大竜骸に至っては、地図上でその姿を確認できます。
 この「地形と化した竜」もルーンクエストの名物で、ルーンクエストでは「一つの山が竜の頭だった」こともあります。エルデンリングでは竜骸ですが、ルーンクエスト側ではこういった地形竜が生きていることもあり、起きると大惨事を引き起こします。

竜餐

 ダークソウルの「竜体化」がルーンクエストの「内的到達への道」を再現しようとしたものであることは以前の記事で指摘しました。エルデンリングでもDLCで「竜体化」が復活しています。
 「内的到達への道」にはブレスを吐く魔術《竜炎》が存在しますが、エルデンリングの「竜餐」ほど多種多様なブレスが存在するかと言うとありません。
 しかし、グローランサに全く存在しないかと言われると答えに詰まります。
 なぜならグローランサにはかつて「ワームの友邦帝国」という超強力な竜魔術の帝国が存在し、そこでは高度な竜の魔術が実践されていたからです。
 エルデンリングの竜餐は「竜の心臓を食らって竜の力を得る」という儀式です。対してワームの友邦帝国の竜魔術師たちは自らの舌を改造し「竜の言葉」を操って竜の魔術を用い、己の存在を竜に近づけていきました。
 面白いことに竜餐を行うエルデンリングの竜騎士たちは「生来言葉を発することがない」そうです。竜の言葉を喋れるように己の舌を改造したルーンクエストの竜魔術師たちとは真逆になります。
 強力な竜の魔術を使っていたワームの友邦帝国の人類側支配者層は最終的に竜に裏切られ皆殺しにされます。殺された彼らはおそらく様々な竜のブレスを吐く魔術を習得していたものと思われますが、現在のグローランサにその魔術は伝わっていないのです。
 なお、ルーンクエスターは「ワームの友邦帝国」のことをしばしばその略称である「EWF」と書きます。検索するときは「EWF」で調べたほうが良いでしょう。

熊餐

 これも「死のルーン」並にルーンクエスターたちの度肝を抜きました。
 DLCに出てくるNPC「赤熊」がルーンクエストのキャラクター「白熊のハレック」そのまんまだったからです。赤熊と白熊の違いはありますが。
 特に頭防具「ラルバの毛皮」と「赤熊の爪」が「ハレックなりきりセット」みたいな感じです。
 ただ、熊餐「ルガリアの咆哮」のような祈祷はルーンクエストにはありません。
 ハレックはルーンクエスト、というかその前身とも言えるボードゲーム『ドラゴン・パス』に出てくるヒーローで、その中でも強力なスーパーヒーローになります。
 ダークソウルには『ドラゴン・パス』からヒーロー枠のクラグスパイダー(クラーグ)と“罪深き”グンダが既に登場しており、ハレックと同じスーパーヒーローの“剃刀”ジャ・イールがボツキャラになっています。
 実はハレックの名前自体もダークソウル3のボツキャラ名にあるようで、以前から登場させる予定はあったようです。

アンドロギュウス

 この項目だけエルデンリングではなくルーンクエストの用語で立てました。以下の文章を読めば、エルデンリングをクリアした人ならばその理由がわかると思います。
 アンドロギュウスはハレックと同じく『ドラゴン・パス』に出てくるスーパーヒーローです。
 アンドロギュウスはグローランサでもトップクラスに謎めいた英雄で、男でもあり女でもあるのです。そして五人の子供の母となり、四人の子供の父となりました。

他にもルーンクエストの影響が見つかりしだいこの記事に追加していきたいと思いますので、追加要望等あればコメント欄にご記入ください。

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