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原田の思い出

あ、と気づいたらもう2021年の7月も終わろうとしていて

多分、それは今世界中の人たちが感じていることかもしれないけど

2020年の3月以降って、いったい何だったの、という思い。

20歳の愛猫、原田が死んでしまったのは、

2020年の6月だった。

いつかいなくなってしまうことなんて想像できないほど

原田は病気もしないで、健康に長生きしていた。

だけど、20歳になってから足腰が弱ってきて、

ある日階段から転げ落ちて、

その頃から急速に衰えて、

腹水が溜まっているようにおなかが腫れてきた。

でも病院に連れて行けば、おそらく手術か安楽死。

しかもパンデミック中だったので、

私たちは原田に付き添うこともできない。

いきなり知らない場所に置き去りにされたら

原田はいったいどうなるのか。

それに原田の医者嫌いは尋常ではなかったので

病院に連れて行くだけでストレスマックスだろうと想像できた。

だから、私たちは家でそっと介護した。

食欲がある限り、原田は生きたいのだと信じていたし、

痛みにのたうち回ることもなかったし、

ゆっくりと老衰してゆく原田を

私たちは静かに見守った。

最期の数日は、原田のためにソファで眠った。

「ああ、もう動けないみたい。今夜がお別れかも」と

覚悟を決めて眠りにつくと、

朝、自分で立ち上がってどこかに移動していて

「まだ動けるんかーい!」と私たちを驚愕させたり、

気がつくとおむつをつけたまま動き回っていたり、

最後の最後までたくましい生命力を見せつけてくれた原田。

お別れの朝には、ちゃんと私たちを起こしてくれて

私の腕に抱かれたまま、息を引き取った原田。

猫が苦手だった私にも、彼にも、

猫の魅力を思い知らせてくれた原田。

ロックダウン中だったおかげで

家族みんながずっと家にいられたことは

原田にとっても私たちにとってもラッキーだった。

20年間、ありがとうね、原田。

あなたは本当に良い猫だったよ。

私はあなたにとって、良い人間だったかな。


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