髪を切り、ココロも整う「atelier sachi」のこと
東京・表参道の駅から、にぎやかな通りを抜けて7分ほど歩いたところ。
静かなマンションの一室に、美容室「atelier sachi(アトリエサチ)」はあります。
入り口のドアを開けると、小さな銀のリスと南天の実がお出迎え。
淡いグリーンの内装に、大きな木枠の鏡や木のイス、木のパーテーションなどが置かれたサロンには、ふんわり穏やかな空気が流れています。
小さい頃から髪にふれることが大好きだったというオーナーのサチさんは、美容に携わって30年。
吉祥寺の美容室「RENJISHI」では、長い間店長も務めていました。
その頃から通い続けているお客さんも多く、実は私もその一人です。
サチさんが自分のサロンを持ちたいと思ったとき、一番に考えたことは、
まずは自分が居心地のよい空間をつくること。
「自分が気持ちのよい場所で、楽しく仕事をしていなければ、
お客さんを幸せにすることはできないと思って」
そう語るサチさんは、いつも肩の力を抜いて、ラクに立っているように見えます。
最近の趣味は庭いじりで、特に庭木の剪定が楽しくて何時間も没頭してしまうそう。
「髪を切るのと庭木の剪定は、ちょっと似てるんですよ。人にも木にも個性があるでしょ。枝の伸ばし方とかクセがある。それぞれの個性を生かすように、カットして整えていくのが楽しいんですよね」
決まった型にあてはめず、はさみ一本でシャッシャッと、気持ちのよい流れをつくっていく。
サチさんが一人で営むこのサロンでは、お客さまもひとりずつ。
他に誰もいない静かな空間で、そんな風にカットをしてもらっていると、
こちらもふーっと力が抜けていきます。
そしていつのまにか、自分のことをあれこれ、話してしまいます。
本当はこんな仕事をやってみたいとか、また子どもに怒ってしまったとか。
気がつけば1時間くらい、話し続けていることも……。
「そういう方、けっこう多いです。ここへ来て、ひたすらしゃべってスッキリしたー!という風に。職場の悩みや、夫婦間のモヤモヤ、体のこととか、特に女性はいろいろありますよね。美容を通じて元気になってもらうことが私の天職だと思っているので、髪も気持ちもスッキリして帰ってもらえたらすごくうれしいです。もちろん、ただぼんやりとリラックスしてもらってもいいんですよ」
アトリエサチのヘアケアは、シンプルでナチュラル。
パーマ液などの薬剤で自身がひどい肌荒れを経験したことから、体にふれるものは極力自然なものがよいと考えたそうです。
メニューはカットのほか、オーガニックのヘナを使ったケアと、ヘッドスパのみを行っています。
特にこだわっているシャンプーは、オリジナルで製造している「Sisin」ブランドのもの。髪の毛はもちろん、全身、顔まで洗えるというやさしさ!
カットやヘアケアをしながら、どんな話も淡々と聞いてくれるサチさん。
「お客さまの悩みに、ちょっと気のきいた言葉をかけられたらいいなと思って」始めた気学の勉強は年々深まり、現在は風水師としても活動されています。
サロンの内装や、置かれている小物にも、風水の知識を取り入れているとのこと。
ここに来ると気持ちが落ち着くのは、風水のおかげもあるのかもしれません。
心地よい時間を過ごし、カットが終わる頃には、
髪も気分もすっかりリフレッシュしてしまう。
アトリエサチは、訪れる人を元気にしてくれる秘密基地のような場所です。