もう一度歌おう、と決めた理由
思い返せば幼い頃からいつも音楽が傍にあって、キラキラとしたステージの上で表現する彼らに憧れを抱き、その世界を目指すようになったのは私にとってごく自然な流れ。だけど自分に特別な才能があるなんて全く思っていなかったし、確実にその世界へ行ける保証なんてどこにもない。持っていたのは "好き" という気持ちだけ。中学時代はほとんど学校へ行かずに、歌やダンスのレッスンに没頭していました。
そんな私が運良くオーディションに合格し、右も左もわからないままメジャーデビューをして憧れの世界に飛び込んだのが16歳のとき。
最初は全てが夢のようで、憧れていた景色が私の日常になっていくことになかなか慣れずむずむずしていたけど、与えてもらった場所で仕事として全うすべきことに全力を注いでいるうちに、この世界って決して特別なものではないのかも?と思うようになってきたのです。もちろん、日本武道館も東京ドームも紅白歌合戦もMステも、誰もが立てるステージじゃないことはわかっている。だけどそうした場所に実際に立ってみて感じたのは「大事なのは場所ではなく、目の前の人に "何" を伝えたいかなんじゃないか?」ということ。どんな場所であろうと、どんな仕事であろうと、伝えたい "何" かがブレずにあって初めてその場所に意味や価値が生まれるのではないかと感じました。
もちろん10代の私なりに伝えたい想いはたくさんあったけど、20代、30代の自分を想像した時に「未来の私は何が伝えられるだろう?」「今私に必要なのは場所ではなく伝えたいものを自分の心の奥から見つけ出してあげることなのでは?」と感じ、19歳でグループを卒業。
音楽で表現することから一旦離れ、心のままにやりたいことをチャレンジしてきたこの7年間。無知で無謀で見切り発車が特技な私はたくさんの壁にぶつかってきたけど、その中で私にしか経験できないことや私にしか感じられないものを自分なりにたくさん蓄えてきたと思います。そうしていくうちに心の動きをちゃんとキャッチしてどんどんそれに従って行動できるようになったし、他者ではなく自分の物差しで物事に疑問が持てるようになり、私が伝えたい想いもたくさん積み重なってきました。
2020年11月、担当していたラジオ番組の中で立ち上がったサウンドデザインプロジェクトで久しぶりに歌う機会をいただきました。ドキドキしながら挑んだレコーディング。マイクの前に立ってみると「やっぱり音楽で自分を表現するって楽しい!」と感じ、ここから何かが動き出しました。
見えない敵がこれまでの日常を奪い、それによって生まれた膨大な時間をただただ埋めるように曲を作り始めた2021年の春。今までの人生で感じてきたことや日々ぐるぐると考えていることを言葉にして歌に乗せてみると、自分でも「あぁ、私ってこんなことを感じていて、こういうことを伝えたいんだなぁ」と改めて気付いた部分もたくさん。色んな角度からありのままに自分を表現した作品たちが出来上がりました。
楽曲制作に関してテクニカルなことを全く学んできていない私は「作詞作曲なんて私には無理だ」とずっと思い込んでいました。なのでこうして曲が作れたということはもちろん凄く嬉しいけど、何よりも嬉しいのは私の心にあった " 伝えたいこと " がちゃんとカタチにできたこと。この経験が一歩踏み出す勇気に繋がったような気がします。
その一歩というのが、今実施中のクラウドファンディング。
完成した9曲の私の分身のような曲たちをひとつのアルバムにまとめたアナログレコードを作るべく、昨年12月にこのクラウドファンディングを立ち上げました。早いもので期間は残すところあと8日。
プロジェクトやクラファンへの想いはこちらの動画でも語ってます。
私にとってレコードはとても身近なものだけど同世代の友人たちと話しているとレコードに触れたことがない人、触れるきっかけがなかったという人がほとんど。私の作品を通じて同世代の人たちにアナログの魅力や楽しさを知ってもらえたらいいなという想いもあり、今回アナログレコードで発信することを決めました。
上の世代の皆さんにとっては「懐かしいなぁ」と青春を思い出すような体験にもなると嬉しいです。もちろん、自宅でアナログレコードを聴く環境がない方もいると思うので、スマホやPCなどで聴いてもらえるようにダウンロードカードを同封したり、色んな方に楽曲が届けられるよう試行錯誤してます。でもやっぱりレコードプレーヤーで聴いてほしい。
今回色んな方にご協力いただいて、クラファンのリターン品もめちゃくちゃ考えました。私が大尊敬している写真家・立木義浩先生に撮り下ろしていただいた写真と私の楽曲解説をぎゅっと1冊にまとめたPHOTO BOOKや、アナログの魅力をもっと伝えようという想いで製作しているカセットテープとカセットプレーヤー。レコードを聴く時間がさらに楽しくなるような小諸のお土産セット。あとは私がどんな想いで曲を作ったのか1曲ずつ解説しながら2時間 ZOOMで一緒にお酒を飲むオンライン飲み会とか。他にも色々用意しました。
クラウドファンディングは作品の制作費用を集めることも一つの目的だけど、こうした色んなリターンを通してコミュニケーションを取ったり、カタチになるまでの過程を見てもらいながら一緒に道のりを楽しんでもらえたら嬉しいという想いが強いです。
正直、これまで私の心の中には多くの不安や葛藤が入り混じっていたけど、色んな経験や感情との出会いを重ねていくうちに、その不安に勝るくらいのワクワクが生まれました。ワクワクという感情はいつも私にとてつもないパワーをくれるのです。そして私だけじゃなく、色んな人のワクワクが重なるときっとそれはもっと大きなパワーになると思っています。
ここまでいっぱい色んな気持ちを書き記したけど、そんな物語と想いが詰まったアナログレコードを購入できるクラウドファンディングは2月1日(火)まで。アナログレコードが買えるのはここだけです。
皆さま、最後までどうぞ宜しくお願いします。
武藤千春