博多織元岡野五代目。OKANOブランド主宰。 岡野博一さん
東洋と西洋の融合を起こすため、「和の文化を世界に広めたい」と、博多織の技術をベースに日本発の世界ブランド構築を目指している岡野博一さんにお話を伺いました。
岡野博一さんプロフィール
出身地:福岡県
活動地域:東京、京都、福岡
経歴:1971年福岡県筑紫郡那珂川町生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、人材コンサルティング会社設立。本家が122年の歴史を誇る博多織元で、博多織を皇室に献上した程、技術力が認められたにも関わらず、経営が傾き廃業寸前になったのを機に、26歳で家業を継ぐ決断をし代表取締役就任。13年間続いた赤字を黒字化することに成功。現在に至る。
現在の職業および活動:(株)岡野の代表取締役。「和の文化を世界に広めたい」と、博多織の技術をベースに日本発の世界ブランド構築を目指し、博多リバレイン、GINZA SIXに店舗を構える。作家・ 工房支援の(株)風土の代表取締役も務める。
座右の銘:未来を予測する最も良い方法は、未来を創り出すことである。 デニス・ガボール(ハンガリーの物理学者)
「西洋と東洋の融合を起こす」
Q1.岡野さんが思い描くこれからの夢・ビジョンを教えてください。
私が生きている間にやりたいことは、西洋と東洋の融合を起こすことです。それは言い換えれば文明と文化の融合とも言えます。
西洋は文明、科学、画一的なんですね。そして、「出来るか、出来ないか」で動く。それに対し、東洋は文化、心、多様性です。「やるか、やらないか」で動く。意志なんですね。例えば、「文明の利器」って言う言葉がありますけど、今の文明の力で一番すごいのは核兵器。「核兵器が出来ました。これで世界を滅ぼせますか?」って聞かれたら、「出来ます」ですよね?。でも、そこにSTOPをかけることができるのは文化なんです。「滅ぼせます。でも、やりません」。逆を言えば、文化は、「出来ないけど、やります」でもあります。例えば、「今は月には行けません。でもやります!」。これが大事なんです。文明の利器は単なるツールなんです。それを何のためにどう使うのか?っていうのは文化、心なんです。だから私達は心と脳みそのバランスを取らないといけない。どちらがいい悪いではなくバランスです。バランスの中にすべてがあります。
今の世の中は西洋的な価値観が支配的。それを否定はしないし、それも必要。でも、東洋的価値観もある。文明は800年周期で、中心を、西洋、東洋、どちらがとるのかが変化します。それがそろそろ終わって、西洋と東洋、陰と陽のバランスが取れる時期がこないと地球がもたない。これができたら人類が次の次元にいくと僕は思います。そろそろ人間の次の進化が必要。それには西洋の知恵と東洋の知恵が融合すること。それが出来たら更にすごいことができる。
日本は和という手法を開発した民族です。それは聖徳太子よりもっと前の縄文時代からで、縄文時代は12000年続きました。縄文人は環濠集落で輪になって生活していて、なんと一回も戦争した形跡がない。12000年ひとつの時代が続いたって地球上ないんです。
僕は、「イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、はい、それぞれわかりました。いいじゃないか、戦争しなくて。まぁまぁみんなで仲良く暮らそうよ。」というのが、今地球上で最も求められているプロセス、仕組みなんじゃないかと思うんです。そして、それを一番DNAの中に潜ませているのが日本人じゃないかと思います。
その日本人が世界の中で和というひとつの仕組み、方法論を実現化していくことが今必要であり、私がやりたいことです。
「多様性を認める構造を創る」
Q2.岡野さんは東洋と西洋を融合させるという夢を実現するために、どのような目標や計画を立てていますか?
今、世界ブランドを作ろうとしています。伝統工芸というのが、お互いを理解しあうツールにならないかな、と思っています。例えば民族衣装を一目見れば、「ああ、そういう文化なんだ」って一目でわかりますよね。伝統文化、伝統芸能、っていうのはその国の風土からうまれたものを凝縮したものなんです。その多様性をもう一回みんなが認識しないと調和、大和の世界にいけない。
最終ゴールは調和の世界を創りたいんですけど、そこにいくには、自立、寛容のプロセスが必要だと思っています。寛容というのは多様性を認めるということ、つまりお互いの文化を認め合えるということ。
今、世界ブランドは西洋からしか生まれていないんです。グッチ、プラダ、シャネル、ルイ・ヴィトン、ブルガリ、全部西洋です。そうじゃなくて、アフリカからも、アジアからも、中米からも、自国の文化風土に根ざした世界に通用するブランドが生まれていい。そうすると世界の人はそれに触れて、「このアフリカのコンゴはすごいなー!」とか思える機会ができますよね?
だから僕は日本のブランドを世界に発信したいし、それで終わりじゃなくて、世界のいろんな地域から、彼らが誇る文化伝統を世界ブランドとして発信して欲しい。そして、そういう文化ブランドが流通するような構造をつくりたい。それをイメージするとめちゃめちゃ楽しいし、その構造をつくることにより、多様性を認め合える世界がつくられると思います。
「ファーストペンギンになる」
Q3.岡野さんは多様性を認め合える構造を創る為に、どのような行動をされているのでしょうか?
まずはうちが成功することです。うちが世界に出て行って成功事例をみせれば、台湾の人や中国の人も「あのOKANOが出来るんだったら俺らも頑張ろう」ってなる。ファーストペンギンになりたいです。今は、「日本からエルメスとかルイ・ヴィトンみたいな世界ブランドを出す」と言うと、ほとんどの人に否定されます。でも、エルメスだって元は同じ伝統工芸。エルメスは世界中で売れているのに、かたや日本の伝統工芸は廃業に追い込まれている。この差は何?僕らが持っていないものは何?それを追求し、成立させるようにするのが僕の仕事だと思っています。
「自分がやりたい」ではなく、人から「あなたしか出来ないからやってよ」と言われることとは何か?
Q4.岡野さんが今のような夢を持って行動するようになったきっかけは何ですか?
僕は幼い時から、「自分じゃないと出来ないことをやるんだ」と思ってきました。それは孔子で言うなら「天命を知る」ということなんだと思います。「自分がやりたい」ではなく、人から「あなたしか出来ないからやってよ」と言われること。それが天命なのではないかなと思います。
もとは家業を継ぐつもりはなかったのですが、26歳の時に本家が13年連続で赤字で、本家から「この事業はビジネス軸でみた時には儲からない。だから廃業しよう」という話が出ました。うちは分家で、父は職人。文化伝統でみれば博多織は777年続いている日本の伝統工芸。たとえ儲からなくてもやるべきことがある、という立ち位置でした。本家は経済軸で、分家は文化軸。その両方が成り立たたなければやっていけない。それを誰かがやらなきゃいけない。当時僕は東京で自分で経営もやっていて、岡野家であるから彼らの悩みも一番聞ける。それで、両家から「お前しか出来ない」と言われ、自分でもそう思いました。「自分しか出来ないなら、やろう。経済性も文化性もなりたつ仕組みがないなら創るぞ」と。そして、やるなら本気でやります。
「神様は自分の心の中にいる。すべては自分自身で決まる」「死ぬ気になれば何でも出来る」
Q5.自分の天命を見つけ、本気でやろう、と思える人は多くないと思いますが、岡野さんがそう思うようになった背景には何があったのですか?
私が大きな影響を受けた2人に、祖父と母がいます。祖父は「神様は自分の心にいるんだ。外にいるものじゃない。自分自身が神。すべては自分自身で決まるんだよ。すべては自分の考え方だ」というのを徹底的に教えてくれました。母は「死ぬ気になれば何でもできる」といつも言っていました。ようは、「死ぬ気になる程本気でやったのか?」ということですよね。
文句が出るのは、本気でやらなかったからです。後悔するから文句が出る。すべては自分で決まるのに、本気になれず後悔する人生は僕は嫌だから、やるんだったら本気でやりますね。
Q6.死ぬ気でやってる状態とそうでない状態は何が違うのでしょうか?
死ぬ気でやってる状態は、命を懸けれている状態です。死ぬ気でやってない時は、頑張っちゃってる。「頑張る」というのは世の中から評価されたい、という想いと裏腹だと思うんです。人から認められたいというのがある状態。
例えば、子どもが夢中でゲームやってるのは頑張ってないですよね。ガリレオ・ガリレイやアインシュタインも、どうしても自然の摂理を知りたくてしょうがなかった。ゲームやってる子どもと一緒です。そこに「頑張る」という概念は存在しない。だから自分が頑張ってる時は、「やばい、俺頑張っちゃってる。それって命懸けられないよね。」って思いますね(笑)
仕事をやる上においても、「仕事だと思うな、人生そのものだと思え」ということを指針にしています。人生そのものだと思えるような仕事しかしたくないし、そういう仕事の仕方にしていく。そうじゃないと自分の命は使えないですね。今世界ブランドを目指しているのも、楽しいからやっているし、死ぬ気でやれることです。
記者:本日は貴重なお話をありがとうございました。
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HP:
【編集後記】インタビューの記者を担当した新原&波多江です。
取材をしながら、岡野さんの人間の可能性に対する確信と情熱、そして、人間とは何なのか?どう生きるべきなのかという深い追求を感じました。
また、既存の枠組みに囚われず、時代を広く深く洞察し、「今ここ」に自分のすべてを懸けて生きようとする姿勢は、まさに、これからの美しい時代を創っていく人間の姿だと思いました。
私たちにとの出会いにも本気さと情熱があり、本当に楽しい時間でした!
岡野さん、本当にありがとうざいました。今後の更なるご活躍を楽しみにしています!
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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
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