目立ってきた白髪をどうするか問題【2023.12.19の日記より】

 昼間、シャワーを浴びるついでにしらがを染める。ドラッグストアで安売りしていた、市販のしらが染め用ヘアカラーを使って自分で染める。前回、同じようにして染めたのは半年くらい前だ。わたしはしらががそこまで多いわけではないし、生えていても気にしないタイプなので、染めるのはせいぜい半年に一度くらい。ここ数年はずっとそんな感じだ。

 染めながら、もう今回で染めるのは終わりにしよう、と毎回のように思う。自然に生えてくる数本のしらがを、いちいち黒く染めて隠す行為に違和感がある。別に自然なままの髪の毛で堂々としていればいいじゃないか、と思う。なのに結局、時間が経ってしらがが目立ってくると、また染め直してしまう。自分でも矛盾しているなと思う。

 自然なままでいればいいと思っているのに、わたしはどうして、こうやってしらがを染めているんだろう。自分でもよくわからない。若く見られたいから? あまりそうは思わない。むしろ子どものころから、歳をとったらきれいな白髪のおばあさんになるんだ、と憧れていた。20代のころ、ヘアサロンで担当の美容師さんにその夢を語っていたら、美容師さんから「お客さまの髪質ですと、歳をとっても真っ白なヘアにはなりにくいと思います……」と言われて衝撃を受けた。いまならわかる、歳をとれば誰でも美しい白髪になれるわけではない。多くの人は黒髪と白髪の混じる、グレーのグラデーションになる。美しいホワイトヘアになれるかどうかは髪質による。そして、いまのわたしの年齢と、現在のしらがの量を考えると、わたしの髪質ではおそらく歳をとってもグレーヘアになるだけで、真っ白にはならない。美容師さんの言った通りだ。

 そう、若さに執着しているわけではない。ではなぜわたしはしらがを染めるのだろう。染めるべきだ、と刷り込まれているから? お化粧しないで社会に出るのと同様に、しらがの混じった頭はマナー違反、清潔感がない、だから染めるべきだと思っている? いや、あまりピンとこないな。ナチュラルなしらが頭で働く男性はいくらでもいるのだから、お化粧と同様に女性だけがしらがを染めるのを強制されるのはおかしいはず。それがマナーだというのなら、自分たちの世代から変えていけばいい。あと「清潔感」という言葉は疑ってかかったほうがいい。人が他人の見た目に対して清潔感という言葉を使うとき、それが意味しているのは往々にして、「うまく言葉にできないけれど自分が好感をもつルックスである」というだけのことだ。

 別にしらがを染めたい人は染めていいと思う、それは本当にそう。気持ちが若返って自分に自信がもてるなら、ぜひそうすべきだと思う。わたしの場合は、いちいちしらがを染めて隠すことに違和感があるのに、なぜか染め続けているというのが問題なのだ。

 これが、着る服やメイクアップの話だったら、もっと強い意志をもてるのに。たとえば「○歳でミニスカートをはくのはイタい」みたいな意見はいくらでも目にするけれど、個人的には「なんだこいつ?笑」くらいにしか思わない。ミニスカートにしろ何にしろ、何歳であっても着たければ着ていいに決まっている。それがたとえイタかったとしても、他人の着てる服をジャッジできると思っている誰かさんよりイタいものはないから気にしなくていいと思う。

 自分がしたい格好をするということへの、このやたらと強い意志が、しらがの話になると急にどこかへ行ってしまう。しらがを生やしっぱなしだと、だらしないと思われる? なんだか不幸せそうに見える? 自分へのお手入れが行き届いていない女だと思われる? そういうの全部、いっさい気にしていないつもりでいるけれど、実は心の奥底でわたしもそう思ってしまっているのかもしれない。

 実際、しらがを染め終わるとホッとする。これでまたしばらくは、しらがのことで頭を悩ませなくてよくなるから。結局、しらがと向き合うこと(その裏には確実に、自分の老いと向き合うことがある)をひとまず回避するための、いちばん手っ取り早い手段として、しらがを染めているのかもしれない。思考停止機能としてのしらが染め。ああ、面倒くさい。いっそお菓子みたいなピンク色に髪を染めてしまおうか。坊主頭のようなベリーショートカットにして、しらがを目立たなくするというのもアリかもしれない。ベリーショートは中学生のときにしていた。髪が耳にかからない、男子と比べても短めのヘアスタイル。気に入っていたけれど、冬になると寒すぎて耳がちぎれそうになるからやめた。髪全体を明るい茶色に染める、というのも現実的な解決策としてアリだけれど、いま全然、茶髪にしたい気分じゃないんだよね〜。

 と、ここまで考えて、おとなしくプロに相談してみようかなという気になった。今度ヘアサロンに行ったら、担当の美容師さんに相談してみよう、そうしよう。

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