Boom Boom Back MVの世界〜MV1000万回再生突破おめでとう〜
BE:FIRSTのBoom Boom BackのMVの再生回数が1000万回を突破しました!パフォーマンスと昔の渋谷を舞台にした物語の世界観が絶妙にマッチした最高にカッコいいMVです。最初に見た時の衝撃は忘れられません。
今回はそのMVの台本って、こんな設定かなと想像して書いた物語を投稿します。日高社長がアーキテクトの中で答えを発表してしまっているのですが、それよりずっと現実的で普通の設定のお話です。日高社長のコンセプトは、いつも想像の遥か上を行くので、その台本でドラマや映画をいつか作って欲しい!
答えが違ってるとわかってるのに、自分の拙い想像を文字に起こすのは恥ずかしいですが、こんな風に設定を想像しちゃうくらい素敵なMVだったので、記念に残したいと思っての投稿です。
あくまで、MVの世界の設定(台本)を想像したものであって、2次小説のつもりはありません。メンバーの名前を使うと誤解が生まれると考え、便宜上、登場人物には名前をつけてます。ご理解頂ける方だけ、読み進めて頂けますよう、最初にお願いいたします🙇
文章を書く事に目覚めたアラフィフBESTYのBBBチャレンジだと思って、あたたかい目で読んで頂けると嬉しいです!
プロローグ
時は1900年代
これは、東京の繁華街に近い下町を舞台にした若者達の物語
SHOTA:曽祖父の時代からの地元っ子。親がバーを経営していて、顔が広い。地元をこよなく愛し、何にでも口を突っ込む。ちょっと危ない場所もあるような町だが、大人に頼らず、自分達で町を守りたいと思ってる。町を巡回して変わった事がないか目を光らせるのが日課。運動神経がよく、ストリートダンスやバスケが好き。人の話をあまり聞かず、思い込みで先走りがちなため、周りからウザがられる傾向がある。SHUNとRYUSUKEを無理矢理引き込んでレンジャーを結成している。
SHUN:親がバイク屋を営んでいて、機械に強い。スケボーが趣味。SHOTA同様、運動神経がよく、何をやらせてもカッコ良くやりこなす。ダンス、ギターなども得意。熱くなりがちなSHOTAに比べてクールだが、結局SHOTAに付き合ってしまう。女性にモテるが、友情を優先して、まだ彼女を作る気は無い。
RYUSUKE:無口でオタクっぽい雰囲気だが、頭がよく、作戦を考えるのが得意。普段はあまり人とつるまないが、何故かSHOTAが何かやる時にはやってくる。生意気でわかりにくいが、恐らく、SHOTAに懐いている。実は空手をやっていて、ケンカが強いが、争い事はあまり好きではない。
LEON:SHOTAとは別の区画の地元っ子。背が高く、体も大きいので、かなりいかつい見た目だが、実は優しい。小さな町工場の次男。家の家業を継ぐのが嫌で、何か大きな事がしたいと思ってる。JUNとRIKUKIは幼馴染み。マイペースで厄介事に巻き込まれやすいJUNを助けたり、ケンカっ早いRIKUKIの尻拭いをしている。細かい事に気が回り、誰とでも仲良くなれる性質で商売上手な一面も。誰に対しても格差をつけたり、差別したりするのが大嫌い。ちょっと危ない筋の人でも、普通のサラリーマンでも、男でも女でも、大人でも子供でも、一人の同じ人間というのが信条。
JUN(J):金持ちの家の坊っちゃん。親が忙しくて、ほっとかれる事が多かったため、ちょっと寂しがり屋で天然マイペース。とてもモテるが、本人に自覚はない。そのせいで厄介事に巻き込まれる事も多いが、その度にLEONとRIKUKIが助けてる。綺麗な顔と声の持ち主でスカウトされる事もしばしばあるが、自由にLEON達とつるむのが好きで断ってる。
RIKUKI(RICKY):祖父がアメリカ人。父親が破天荒で自由人である影響から、ルールに縛られるのが大嫌い。興奮すると英語が出てしまったり、日本語だと噛んでしまったりする。ずっと日本に住んでるのに外人と言われた事にブチ切れて大乱闘を起こしてから、狂犬扱いされるようになる。幼馴染みのLEONと天然なJUNだけは普通に接してくれる。荒っぽい性格に思われるが、情には厚く、友達の事は絶対に裏切らない。日本には馴染みが薄いHIPHOPが好きで、ラップが得意。
MAKOTO:最近、町にやってきた素性がわからない青年。無口だが、音楽は好きらしく、いつもヘッドホンで音楽を聞いている。ハーフのような見た目で目を引くが、目立たないように前髪を長くしている節がある。それでいて、髪色が変わってるので、結局目立ってしまう。抜けてるところがある。
始まりの予感
SHOTAはいつものように町を巡回していた。まぁ、平和なもので、大概何も無いのだが、町の日常を見て回る事が好きなので、散歩のようなものだ。
しかし、今日はいつもと違った。
見かけないやつがいる。
ヘッドホンをして何かステップを踏んでいるつもりなのか、歩き方が変だ。この辺では見ないような髪色をしている。前髪が長くて、よく顔が見えないが、色白なのはわかった。
(何か変なやつだな)
気になって声をかけようとした時に、八百屋のオジサンに名前を呼ばれ、気を取られている内に、見失ってしまった。
最近、隣町でクレイジードッグズと名乗る3人組の噂を聞いていた。3人とも体が大きく、ケンカが強いとか、女をいっぱい連れてるとか、変な物を売ってるらしいとか。勢力を拡大してるらしく、気になっていた。さっきの奴は関係なさそうだが、奴らの仲間になる前に、いい奴だったらこっちの仲間にしたい。
(SHUNにも見かけたら声をかけるように言っておこう)
一方、夕方、RIKUKIが一人でいつもの広場に向かっていると、変な髪色の見かけない奴に出くわした。
「おい、お前!この辺じゃみかけねぇ面だな?どっから来た?」
RIKUKIが凄んで見せたが、聞こえてないのか、困った顔で首を傾げている。
(もしかして、ハーフなのか?)
男は色白で彫りの深い顔立ちをしていた。言葉が通じてないのか、聞こえてないのかわからなかった。
グイッと近付いて、ヘッドホンを外させた。
「Where are you from?」
ネイティブでないと聞き取りづらいような速さで言った。一瞬、ハッとした顔をRIKUKIは見逃さなかった。
でも、そいつは問には答えず、ニコっと笑うと走り出した。
「あ!おい!逃げんな!別に何もしねーって!」
RIKUKIは後を追いかけた。自分が過去に外人と言われて仲間外れにされた経験が蘇る。仲間になれるかもしれない、そんな気がした。
クレイジードッグズ
名前の由来は、RIKUKIにある。
気に入らない言動にはすぐに噛み付き、ケンカっ早い。ニヤっと笑うと犬歯が覗く見た目と相まって、いつの間にか狂犬と恐れられるようになった。
そんなRIKUKIと常に行動を共にしてるのがLEONとJUN。3人とも背が高く、並ぶと相当威圧的だ。見た目はイケメン揃いでモデルみたいなのに、やる事がイカれてるという事でついた仇名がクレイジードッグズ。
LEONの印象も、どちらかというと、大型犬に近い。普段は比較的温厚でのんびりしてそうに見えるが、いざとなると見た目より俊敏で頭が回る。優しい目を隠すために、いつもサングラスをかけている。RIKUKIがリーダーのように思われているが、その実、コントロールしているのはLEONだ。ただ、表に立ちたいという欲はなく、RIKUKIとJUNを助けたり、一緒に遊んでるだけで、いつの間にかチームとして周りに人が集まるようになってしまった。
JUNは女顔の優男。子供の頃、家が金持ちで抵抗しないJUNを上級生達がカツアゲしている現場をRIKUKIとLEONが目撃し、大乱闘になってからの付き合い。その後も、言い寄って来る女の子からの誘いを断らずに、彼氏を名乗るヤンキーに絡まれたりと何かと問題をおこしては、RIKUKIとLEONが割って入ってくる。本人に悪気はなく、ビビってる訳でもなく、ただ面倒なだけなのだが、そんな他人の面倒事に首を突っ込んでくるRIKUKIとLEONが面白くて一緒につるんでいる。JUNだけはドッグというよりパンサーのイメージで、クレイジードッグズという名前はダサいと思っている。
実は、JUNは歌うのが好きで、とても上手い。RIKUKIのボイパとラップを合わせて広場で遊び半分に歌ってたら、人が集まるようになった。どうせだからとLEONがお金を徴収してみたら、いい小遣い稼ぎになる事がわかり、すっかりイベントにしてしまってる。商売上手なLEONが色々と売りさばくようになって、その筋の人からも目をつけられるようになってしまっても、うまく立ち回ってなんとかやっている。誰からも好かれる人柄な上、根回しも上手いLEONは揉め事を収めるのが本当に得意だ。
そんなこんなで、いつの間にかクレイジードッグズの名前は近隣にも知られるようになっていた。
LEONは、名前が変に知られるようになってきたので、余計な揉め事を起こさないように、RIKUKIの行動には注意していた。
今日もいつもの広場に集まる予定だったが、胸騒ぎがして、早めにRIKUKIを迎えに出た。こういう時のLEONの勘は恐ろしく当たる。町外れの方に向かっていると、遠くから「おい!待てって!」と叫ぶ声が聞こえた。
LEONは、やれやれと溜息をつきつつ、声がする方へダッシュで向かった。
RIKUKIを見つけると、変わった髪色の奴を真ん中にして、やや背の低い垂れ目の男と対峙していた。
垂れ目の男は、風貌から隣町で噂をよく聞くSHOTAではないかと思われた。
(やっぱり、揉め事を起こしてる…)
「弱い者イジメしてんじゃねーよ」
SHOTAの言葉に早速、カチンときたRIKUKIが噛み付くように大声を上げる。
「はぁ?ただ、どっから来たか聞いただけだろーが!お前のとこの奴なら俺らの町でフラフラさせんなよ!」
「ここはお前らの町じゃなくて俺らの町だけどな!」
ちょうど、微妙に境界線になってるエリアをウロウロしてたらしい。
変わった髪色の奴はSHOTAも知らない奴みたいだ。事の成り行きをヘラっとしながら見ている。
(意外と度胸があるのか、変人なのか…)
「「お前、誰だ?!どこに行こうとしてたんだよ!!」」
2人に急に怒鳴られた当人は、一瞬ビクっとしたが、ヘラっと笑って
「・・・わかんなくて」
「何が?!」
「帰り道。迷子なんだ」
「「はぁーーー?!」」
SHOTAとRIKUKIの声がハモった。意外と波長が合うのかもしれない。
周りが勝手に騒ぐ中、迷子のそいつは、MAKOTOと名乗った。今日引っ越してきたばかりで、ワクワクして散歩してたら迷ったらしい。
RIKUKIはすっかり呆れ返っている。潮時だと察したLEONがRIKUKIの肩をグイッと引き寄せた。
「悪いな!後はそっちに任せた!俺達は先約があるから!」
RIKUKIは何か言いたそうだったが、大人しくLEONの言う事に従った。
「え!?おい!」SHOTAは不本意だったが、ただの誤解でいたずらに争いを起こすのもどうかと思い、踏みとどまった。
(あの体の大きい奴がNo.2のLEONか。切れやすいRIKUKIを黙らせて強引に連れて行くとか、すげー奴だな)
兎にも角にも、この迷子を保護するしかない。観念して、自分の町へ連れ帰った。
「おっせーよ!」
LEONとRIKUKIが広場に到着すると、JUNがむくれていた。本人曰く、早く来たお客の相手をして、したくない愛想を振りまいて?いたらしい。
(ただ、話かけられたら相槌を打って、聞いてるフリをしてただけのくせにww)
LEONは苦笑いをした。
「悪いな!ちょっとトラブルに巻き込まれてた!今から飛ばしてくぜ!」
RIKUKIの煽りで一気に客のボルテージが上がる。
(ホント、そういう才能はすごいなww)
LEONは感心しながら、客に飲み物や食べ物を売って回った。
イベントが終わってからRIKUKIに聞いてみる。
「何で、あのMAKOTOって奴に声かけたんだ?」
RIKUKIが大人しそうな相手に自ら絡みに行く事はあまりない。LEONには不思議だった。
「あ?いや、別に…ただ何となく、日本語が話せないのかと思って…」
(RIKUKIは尖っているように見えて、本当は優しいから、MAKOTOが一人で困ってないか気になったんだな)
LEONがフッと笑みを浮かべてると、後ろからJUNにヘッドロックされた。
「ジェイ?!」
「お前らだけ楽しそうにしやがって!`何があったか、ちゃんと俺にも教えろよ!」
「わ、わかったから、Give up〜!」
JUNは3人の中で一番背が高い。JUNの腕をバンバン叩きながら、その内MAKOTOも仲間になれないかなと思う。ヘッドホンで音楽を聞きながら町を歩いてる奴なんて珍しい。音楽が好きなら手伝ってくれるかもしれない。
(SHOTAが黙ってないかもしれないけどww)
3人でワチャワチャしながら、新しい何かが始まる予感を感じていた。
ドラゴンガーディアンズ
「お前ってさ、もしかして、アメリカから来たの?」
MAKOTOはぎょっとした顔をした。
迷子になっていたMAKOTOだったが、方向音痴なだけで、記憶力はよかった。SHOTAにはMAKOTOの話だけでどこに住んでるかが、すぐにわかった。この辺じゃ珍しい、最近できたばかりのマンションだ。親が金持ちか、いい会社に勤めてるのだろう。
持ち物や服装、醸し出す雰囲気、どれを取っても、日本人ぽくない。妙に無口な割に肝が座ってるのも、口を開くとボロが出るからではないかと感じられた。親が転勤でアメリカあたりの外国からやって来たんじゃないか?そう思ってカマをかけた。
アメリカはSHOTAが憧れている国だ。自由で様々な音楽やダンスが溢れている。もし、住んでたなら友達になって、色々聞いてみたい。MAKOTOは警戒してるのか、黙ったままなので、心を開かせる作戦を考えた。
「銭湯って行ったことある?」
MAKOTOのマンションは全室ユニットバスが付いてるが、この辺のアパートはまだ風呂が無いところも多い。銭湯はこの町の社交場だった。SHOTAの家は古いので、家に風呂はあったが、好きでたまに銭湯へ行っていた。案の定MAKOTOは銭湯を知らないらしい。
「銭湯?」
「大勢で一緒に入る風呂の事だよ!」
「プールとかジャグジーみたいな?」
「似てるけど、風呂だから裸だけどな」
「へー!面白そう!」
ワクワクした顔をするMAKOTOに、やっぱりこいつはちょっと変わり者だけど面白い奴だなと思った。
明日、連れて行く約束をして別れ、家に帰る途中でSHUNに会った。
「SHOTA!探してた奴見つかった?」
「あぁ!明日一緒に銭湯へ行く約束をした!」
「銭湯?何でまた…それより、今日も隣町でクレイジードッグズのイベントがあったらしい!こっちから出かけていく奴も増えてるみたいだ」
「あー、会ったよ。クレイジードッグズの狂犬RICKYと仲間のLEONに」
「え?!何で?よくケンカになんなかったな」
「そのイベントのせいで急いでたんだろ」
「Jには会わなかったの?」横から突然声がした。
「うわ!!RYUSUKE!いつの間に…驚かすなよ。Jはいなかったぜ」
「イベント会場に先に行ってたんだな。クレイジードッグズのイベントはRICKYがDJ、ボイパ、ラップ担当でJがボーカル。このJって奴がすごく女の子に人気がある。ファンクラブみたいなのもあって、複数の子と交際してるとかで揉め事も多いらしい。LEONが会場でグッズとか食品とか売って儲けてるみたいなんだけど、最近サプリみたいなのを売り出して流行ってるとか。詳しい事が秘密らしくて胡散臭い。」
RYUSUKEがどこで調べてきたのか、メモ帳を見ながら調べた結果をペラペラと報告した。チェキで撮った写真まである。確かに、Jはすごくスタイルが良くて足が長い。顔も女みたいに綺麗でモテそうだってわかる。
SHOTAはLEONが売ってるというサプリが気になった。怪しいものなら止めさせないとならない。そんな悪人には見えなかったが、人は見かけによらない。
「そのサプリって会場だけで売ってるもんなのか?」
「うん。その上、女じゃないと買えないらしい」
「何だそれ?ますます怪しいな…」
「RYUSUKEが女装して潜入すりゃいいんじゃね?」
SHUNがニヤニヤしながら言った。RYUSUKEには中性的な色気があるのだ。
「は?ケンカ売ってる?」
「仲間割れすんなって!俺達、下町レンジャーの力の見せ所だろ!」
「おいSHOTA、そのダセー名前なんとかなんねーの?」
SHUNが文句を言った。元々、仕方なくSHOTAに付き合ってるだけなのに、カッコ悪いチーム名をつけられたらたまったもんじゃない。
「ドラゴンガーディアンズがいい」
RYUSUKEがボソッと呟いた。
「は?」「お!カッコイイじゃん!」
「ガーディアンは守護者って意味だから、ぴったりだろ?」
「なんでドラゴンなんだよ!RYUSUKEだけだろ竜は!?」
「なんとなく、カッコ良かったから…」
結局、他にいい名前が思いつかず、SHOTAが折れた。クレイジードッグズに対抗できるカッコいいチーム名なら、何でもよかったのだ。
渋るRYUSUKEを説得して、女と偽って会場に入り、例のサプリを入手して証拠を押さえる作戦を立てた。
(明日、MAKOTOもチームに誘ってみよう)
SHOTAは何故かワクワクしてくるのを抑えられなかった。
誤解
出会った翌日、SHOTAはMAKOTOを銭湯に連れて行って、色々と聞き出した。
やはり、MAKOTOは、アメリカからやってきた帰国子女だった。ハーフのような彫の深い顔立ちだが、両親とも日本人だそうだ。日本語は喋れるが英語に慣れているので、一度頭の中で変換して日本語にしているらしい。そのため、無口になっていたのだ。
実は、音楽とダンスが好きな陽気な奴だとわかり、すっかり打ち解けて仲良くなった。
そこでSHOTAは、MAKOTOをドラゴンガーディアンズに誘った。MAKOTOは、何だかわからない様子だったが、面白そうだと思ったらしく、仲間になってくれた。
クレイジードッグズについては、危ないことをしている連中だから、近づかないように釘を刺した。今度一緒にイベントへ行って証拠を押さえる計画を話して、一緒に行く約束をしたが、MAKOTOは、イベントそのものに興味があるようだった。
イベント当日、RYUSUKEに軽く化粧を施して、別行動で潜入した。ちょっと軽くお白いをして、口紅を引いただけで、すっかり女っぽくなったRYUSUKEを見て、SHOTAとSHUNは感心してしまった。
イベント会場は人でごった返していたが、なんとかLEONを見つけた。RYUSUKEが近づいてLEONに話しかけた。SHOTA達は、少し遠くから見守っている。
「最近噂のサプリが欲しいんだけど、売ってくれる?」
LEONは、RYUSUKEを一瞥すると、ニヤッと笑った。
「どこで聞きつけて来たか知らないけど、これは、誰にでも売ってるんじゃないんだ」
「女にしか売らないって聞いたけど?」
「それはそうだけど、信頼できる人にしか売らないから、ファンクラブの会長さんを通してる。それに、君、女じゃないよね?」
ばれている…
「誤解してるかもしれないけど、たぶん、君が思ってるようなものじゃないし、必要でもないと思うよ」
LEONに子供を諭すように言われ、RYUSUKEは赤面した。退散しようとしたが、SHOTAが乗り込んできた。
「もうちょっと、詳しいこと聞かせて欲しいな」
「悪いけど、ここで騒ぎを起こしたくない」
押し問答をしていると、周りが野次を飛ばしてきて、騒ぎになってきた。その上、RYUSUKEを女だと勘違いしたJUNのファンクラブの女の子達がRYUSUKEに詰め寄ってきて、SHUNが割って入ったりと、騒ぎが飛び火している。
SHOTAがこの状況でMAKOTOの姿が見えないことに気が付き、心配になって探すと、いつの間にか、ステージの前に行ってしまってる。しまった!と思ったが、RIKUKIに見つかった。
「お前、この前の奴だな?今日は一人か?」
「いや、ドラゴンガーディアンズのみんなと一緒だけど」
「何だって?!何しに来やがった?!」
(や、やばいって!)
SHOTAが慌てて、MAKOTOを連れ戻そうと近づこうとしたが、人が多くて中々近寄れない。
怒号が飛び交い、誰が口火を切ったかわからないが、あちこちで乱闘が起きて、大騒ぎになってきた。RIKUKI達の町の人間とSHOTAの町の人間が入り乱れて騒ぎだして、収集がつかない。
遠くでパトカーのサイレンが聞こえて来た。
(まずい!)瞬時にLEONが動いた。
お客を無事に帰すため、乱闘をかいくぐって、ステージに上がり、マイクを使って、すぐに喧嘩を止めて解散するように怒鳴る。
RIKUKIとJUNに促して、お客を誘導していく。いつの間にか、SHOTA達も手伝ってくれていた。
とにかく、広場から全員を逃がして、裏路地まで走った。
「はぁー、ここまで来れば、大丈夫だろ。さっきは、手伝ってくれてサンキュー」
肩で息をしながら、LEONがSHOTAに礼を言った。
「ま、警察沙汰はお互いに面倒だからな」
SHOTAがゼエゼエと息を整えながら応えた。
「お前らが絡んで来なきゃ、こんな事にはなってねーだろーが!」
息を切らして真っ赤になったRIKUKIが怒鳴る。
「おめーらが俺らの町の人間にも、変な薬売ってるからだろーが!」
SHOTAがRIKUKIを睨みつけ、一発即発な雰囲気だ。
LEONが観念して、口を出す。
「その話だけど、完全な誤解なんだよ。中身はただのビタミン剤だから…」
「はぁ?じゃあ、何でコソコソ売ってんだよ?!」
「それは、こっちの事情があって…。実は、Jの愛用してるビタミン剤にブロマイドをつけて、ファンクラブ限定で売ってたものなんだよ。変に出回ると困るから、素性のわかっている人にだけ売ってたんだけど、人気が高い上に数量限定だから、プレミアがついちゃってさ。コッソリ売ってたら噂が変に広まって、尾ひれもついて話が大きくなっちゃったんだ」
「何だそりゃ・・・。何でそこまでコソコソする必要があったんだよ!」
「だって…」
「おい、何の話だ、聞いてないぞ?!」
JUNがカンカンになってLEONに詰め寄ってきた。
LEONはJUNには内緒でブロマイドを売っていたのだ。売った金はLEONのプライベートマネーではなく、イベントの活動資金にしており、チームのために始めたことだった。ファンクラブの女の子にせがまれたという理由もある。
それでも、絶対にJUNが怒ることがわかっていたので、JUNにばれないように、コソコソやっていたら、変なところで話が大きくなってしまい、どうしたものかとRIKUKIと困っていたところだったのだ。
SHOTAはすっかり拍子抜けして、JUNに平謝りしているLEONを呆然と眺めていた。SHUNは、そんなSHOTAがおかしくて、ニヤニヤが止まらなかった。RYUSUKEはしらーっとしている。
MAKOTOは、と言えば、いつの間にか、RIKUKIと音楽の話で盛り上がっていた。HIPHOP好きの2人はすっかり、意気投合してしまい、一緒にラップをしようと盛り上がっていた。
「よし、次のイベントは合同でやるぞ!!」
突然、RIKUKIがぶち上げた。
「は?何言ってんだ?」
SHOTAは呆れたが、SHUNは何やら乗り気だった。
「え!楽しそーじゃん!やろーぜ!」
「あ、俺はパス」
RYUSUKEは高みの見物を決め込むつもりらしい。
JUNの猛抗議からようやく解放されたLEONがRYUSUKEに話しかけた。
「お前ってさ、いつもカメラ持ってるよな?イベントの写真撮ってくれない?」
LEONは、懲りずに何やらまた考えているらしい。
こうして、思いがけなく誤解が解け、チーム合同でイベントをすることになったのだった。
祭りをぶちあげよう
思いがけず、2チーム合同でイベントをする事になり、最初こそ不本意だったSHOTAだが、元来の祭好きの血が騒ぐのを抑えられなかった。
2チーム合同となったら、もはや町をあげての祭となるに違いない。
なにせ、ドラゴンガーディアンズのSHOTAとSHUNは相当な人気者なのだ。SHOTAは地元で知らぬ者がいないくらい顔が広いし、SHUNは親衛隊がいるくらい女にも男にもモテる。
元々のクレイジードッグズのお客と合わせ、すごい人数が集まる事になる。
問題は、これだけの人数が集まって騒げる場所があるのか。SHOTAは頭を抱えてしまった。今までは、口コミで人を集め、広場で実施していたが、これだけの規模になると、事前に場所を確保しないとならない。場所によっては、警察にも目をつけられるだろうし、その筋の人にもミカジメ料を払わないとならないだろう。
しかし、LEONがどういうツテを使ったのか、町外れの大きな倉庫を借りてきた。入場料もちゃんと取って、中で飲食ができるように、届けも正規で出して、本当のイベントとして成立させてしまった。裏のツテを使って話を通した上で、正規のルートでやるので、上がりは持っていかれるが、後からぼったくられたり、警察沙汰になるより、よっぽどマシだ。
SHOTAはLEONの立ち回り力に舌を巻いた。後先考えずに行動するRICKYとマイペースで気分屋のJをまとめているだけの事はある。
LEONは見た目はイカツイが、実はすごく優しくて誠実な奴だ。真っ直ぐで自分の事より周りを優先し、謙虚で人の尊厳をとても大事にしている。そのため、実際に話をすると、誰からも好かれてしまう。揉め事を収めるのが異常に得意なのだ。
RICKYもケンカっ早いところはあるが、裏表がなく、真っ直ぐで情に厚い。SHOTAとは似たバイブスを持ち合わせていて、すぐに波長が合った。
Jはマイペースの不思議ちゃんだが、根が穏やかで話も面白い。不思議なα波が出てるみたいで、癒やされてしまう。RYUSUKEとSHUNも、いつの間にか懐いてしまった。
SHUNのバイク屋のガレージで音合わせした時、みんな、JUNとMAKOTOの歌の上手さに愕然とした。恐ろしく、相性がいい。その上、MAKOTOはラップもできた。RICKYとの掛け合いもバッチリだ。SHUNとSHOTAのダンスも加わって、すごい事になってきた。RYUSUKEは早速カメラで写真を撮りまくっていた。LEONは満足そうにみんなを眺めながら、チラシ作りや構成のアイデアを考えていた。
この前まで対抗していたとは思えないまとまり様だった。これもMAKOTOのおかげかもしれない、とSHOTAは内心思っていた。2つのチームを繋げてくれたMAKOTOに感謝した。
イベントを合同で開催するにあたり、合同のチーム名をSHOTAが考案した。
7☆ストリートボーイズ
実際に歌って踊るメンバーは5人だが、7人でチームという意味を込めた。
SHUNとJUNは不服そうな顔をしていたが、RYUSUKEが「悪くない」と言ったので、決定した。後はイベントを待つばかりだ。
伝説の誕生
イベント当日
ステージは会場の中央付近に作った。観客が踊れるように四方にスピーカーを設置している。ライブ専用の会場ではないので、音響が厳しいが、ノリでなんとかするしかない。
MCはRICKY、DJはRYUSUKEだ。
「みんな、待たせたな!準備はいいかぁ!!?」RICKYの声が会場中に響いた。
(これなら、いけそうだ)
RICKYの声は抜群にマイク乗りがいい。
LEONは会場の端で全体をチェックしていた。
「まずは、メンバーを紹介するぜ!ドラゴンガーディアンズから、DJ、RYUSUKE!」
わっと拍手が起きる。
「同じく、ダンサーのSHOTAとSHUN!」
ウォー!という男の声とキャーという黄色い女の声が上がった。SHOTAは男に、SHUNは女にモテる。
「クレイジードッグズからプロデューサーのLEONとラッパーの俺、RICKY!」
ワーっという大きな声と拍手が起きた。
「そして、ボーカル、J!」
キャー!!!とすごい歓声が沸き上がった。Jは女のファンが圧倒的に多い。
「もう1人、ボーカルの新しい仲間を紹介するぜ!」
MAKOTOが登場すると、途端に観客がざわつき始めた。RICKYは予想してた反応に不敵にニヤっと笑って、
「まずは自己紹介代わりに行くぜっ!」
RICKYの合図で鳴っていたバックサウンドが消え、アカペラで歌い上げるMAKOTOの声が響いた。
観客が息を呑んだのがわかる。一瞬の静寂。
次の瞬間、爆音と共に、MAKOTOの歌に合わせてSHOTAとSHUNが踊り、JとRICKYも歌い始めた。
ウワーっ!!!と観客の声援がどよめきとなって、会場が震えた。LEONはビシビシと肌に伝わる熱狂に確かな手応えを感じた。
1曲終わって、RICKYが再び観客に問いかける。
「どうだ?俺らの新しい仲間は?イケてるだろ?MACKだ!!よろしくな!」
観客が拳を突き上げて、ウオーっと声援で応える。
「え?」MAKOTOが思わずRICKYを振り返った。RICKYからMAKOTOという名前はコールしにくいと言われていたが、MACKと呼ぶとは聞いて無かった。
若干、不本意だったが、これだけの観客の前で紹介されては"聞いてない"とは言えない。
(適当だなー)
苦笑してしまうが、観客の掴みはバッチリだった。
(やってやるしかないな)
MAKOTOは腹を括った。
MAKOTOの声はマイク乗りがすごくいい。中音が特徴的だ。高音が得意なJとの相性はバッチリだった。その上、RICKYのラップと掛け合いもできて、ダンスもできる。鬼に金棒状態だ。SHOTAもテンションが上がってしまい、ダンスでぶちかまし過ぎて、周りを見てないとSHUNに小言を言われる始末だった。
7☆ストリートボーイズの初めてのライブは大成功で幕を閉じた。反響はすごくて、口コミで噂は瞬く間に広がった。DJの合間にRYUSUKEが撮った写真を雑誌社で取り上げてもらったり、作ったチラシもあっという間になくなった。早々に、次の公演も決まったが、既に場所が手狭になっていた。
2度目の公演も満員御礼の大好評で終わると、大手の音楽プロダクションから声がかかった。本格的なライブ会場での公演も成功し、あれよあれよという間に正式に契約する話になった。メジャーデビューできるというので、有り難い話ではあったが、LEONは些末な不安を感じていた。しかし、メンバーが乗り気だったので、横槍は入れず、サポートに努めた。
レコードのジャケットにはLEONとRYUSUKEの写真も入れてもらえた。初めてのレコードを手にした時、全員が感無量となって、7人で掴んだ夢が形となった事を喜んだ。
しかし、喜んでばかりもいられなかった。運営事務所は彼らをアイドルグループとして売出したいと考えていた。特にJUNとSHUNの人気の高さとMAKOTOの歌の上手さは注目が高く、偏った売出し方やしたくない仕事が増えていった。メンバーと運営事務所の間に入って嫌な仕事を受けずに済むようにかけあったり、不満を聞いたり、頭を下げたりする事が続いて、LEONが疲れきって病みかけた時、LEONを庇ってRIKUKIとSHOTAが切れた。
「俺達のやりたいようにできないなら、辞めてやる!!」と担架を切って、運営事務所と大喧嘩したのだ。LEONも2人の気持ちがわかっていたので、今回は口出しするのを諦めた。大騒ぎになって、違約金だの、訴訟だのという話になったが、JUNとRYUSUKEの親が優秀な弁護士を雇ってくれて、裁判沙汰になるのは回避できた。
とはいえ、日本の芸能業界からは追放同然になってしまった。
7☆ストリートボーイズは解散した。
一枚のレコードと伝説を残して…
夢の先の夢
7☆ストリートボーイズが解散してから数年がたった頃
SHUNは実家のバイク屋を継ぐべく、父親と一緒に仕事をしていた。付き合ってる彼女ともうすぐ結婚する予定だ。
「よし、ちょっと休憩するか」
父がガレージを出て行ってから、SHUNはさっき届いたSHOTAからのエアメールをポケットから取り出して、読み始めた。
「よお!SHUN!元気か?
俺達は相変わらず、元気にやってる。
アメリカに来たばかりの頃、言葉が全然通じなくて、困ってたけど、今じゃすっかり板についてきた。書く方は、まだてんでダメだけどな!
そこへいくと、LEONはすごい!あいつは、メールや契約関係で文書のやり取りがあるから、猛勉強して、ビジネス英語を習得した。話す方はカタコト混じりだけど、ちゃんと会話も成り立ってる。
JはLEONとRICKYに任せっきりな感じだったけど、やっぱ耳がいいから、いつの間にか喋れるようになってた。羨ましい奴だ。ゆるくて自然体のJがいると癒やされるな。
最近じゃ、ソロ活動や他のグループとのコラボも増えてきて、マネージャー兼プロデューサーのLEONは大忙しだ。Jは、俺たちに、もっと自分達でマネジメントしてLEONに負担をかけるなって怒ってる。LEONはJの専属になればいいと思ってるらしいww
確かに、LEON一人じゃ無理だから、最近は人を雇ってるけど、早くRYUSUKEに手伝いに来て欲しい!大学で映像技術やマネジメントについて学んだRYUSUKEがLEONをサポートしてくれれば、百人力だ。マジで待ってる!って伝えてくれよ。」
7☆ストリートボーイズ解散後、大学へ進学したRYUSUKEと日本で家業を継ぐ事を決断したSHUN以外の5人はアメリカへ渡っていた。
JUNはソロシンガー、SHOTA、RIKUKI、MAKOTOは、3人でボーイバンドを組んでいる。ラップ、歌、ダンスもできる最強タッグだ。お互いにフィーチャリングしたり、JUNのバックダンサーとして3人が踊る事もある。
LEONは4人のマネージャー兼プロデューサーだ。4人の活動の幅が広がって来たので、最近、小さいながらも、ちゃんとした音楽プロダクションを興したところだった。
「MAKOTOの歌はやっぱり凄い。英語が上手だからとかじゃなく、本当に楽曲の感情を歌に乗せる事ができるから、自然と音楽の世界に惹き込まれてしまう。あいつはきっと、これからもっとグローバルに活躍していく。
RICKYもこっちの空気が合うらしく、生き生きと音楽をやっている。爆発力があって、いつもインパクトのあるパフォーマンスをしてくれる。
Jもこっちに来て変わった。何があったのかわからないけど、覚悟を決めて腹を括ったみたいだ。歌声や表情にそれが表れている。ただでさえ、上手かったのに、最近じゃ天を切り裂く歌声とか、天国へ連れて行く歌声とか言われている。
俺も負けてられないなと思ってる。今はダンスだけじゃなくて、ラップと歌も頑張ってる!やっぱ、本場はいいな。刺激に溢れてるよ!
さて、SHUNの結婚式の時には、日本で凱旋コンサートができるように俺達も頑張るから、お前も怠けてないで、ちゃんと踊ったり、音楽聞いて、鍛えておけよ!一緒にステージに立てるのを楽しみにしてる。
俺も、自分のやれる事、やりたい事をやり切ったら、日本に戻って、親父のバーを継いで、のんびり昔話でも語りたいと思うけど、今は立ち止まらずに生きたいと思ってる。
親父達にも、よろしく言っておいてくれ!
また会う時まで、元気でな!!」
(みんな、頑張ってるな)
SHUNは日本に残る道を選んだが、夢を諦めたわけではない。音楽を職業に選ばなかっただけだ。今は回り道をしているが、諦めなければ、いつだって青春だと思ってる。
(ちゃんとダンスの練習して、あいつらと一緒にステージに立つ準備をしておかないとな…)
「SHUNくーん!お茶入ったよ!」
「今行くー!」
SHUNは、晴れやかな顔で、手紙をポケットに入れると彼女の待つ母屋と駆けていった。
END
引用元: BE:FIRST Boom Boom Back MV
https://youtu.be/b-IGI9yr4do