ぼっち・ざ・ろっく!がまぶしすぎてそんなに光るなよ
何だよこれ・・・
小さなライブハウス、あるいは音楽スタジオ特有のモワッとした空気が突風のように突き刺さる。曲から強く感じるのは各キャラクターの個性よりもバンドのまぶしさを異常なまでに優先するという姿勢だ。
武骨・荒削りのロックバンドの迫力に、3分前まで鼻で笑っていた自分が恥ずかしくて仕方がなくなった。後藤ひとりの「バンドを終わらせたくない」というセリフの後、踏み込んだ足とギターのゲインぶっ壊れデカデカ音がその言葉の重みを強く強くするという描写。ベースとドラムがギターを一瞥し、顔を見合う・・・ここにあるのはアニメキャラ特有のかわいらしいふるまいでは無く、ただバンドがしたいという熱いハートを曲とアニメーションの両面で映し出すことだろう。
まんがタイムきらら系作品、いわゆる「きらら枠」において一線を画す、ストーリー原作から全マシ青春濃いめという胃もたれしそうなトッピングをペロリと平らげることを可能とするのは一体何がそうさせるのだろうか。
そもそもぼっち・ざ・ろっく!はどんな話かというと、
主人公の後藤ひとり(ギター)が、バンド活動や文化祭ライブに憧れつつも、バンドを組むどころか友達すらいないド陰キャ。
そんなある日の帰り、バンドのギタリストを探していた伊地知虹夏(ドラム兼バンマス)に、「ギターを背負っている」という理由で強引にギタリストとしてバンドメンバーに加わった。後藤は動画共有サイトで「ギターヒーロー」という名称で活動しそこそこウマいのだが、インターネットでイキっているやつってのは人前で実力を発揮できないんだなこれが。それでベースの山田リョウ、一度逃走したギターボーカル喜多郁代と4人で「結束バンド」を組み・・・
って話なんですけど確実に成長していってんのよ主人公が。そして5話のスタ練するシーンとか各々が個人で練習してるシーンとかさぁ・・・・
こんなの見せつけられたら「高校生の時にバンドやってるやつをバカにしていた自分」が恥ずかしくてしゃあないわけ。ギターを背負っていた高校生たちのまぶしさからそっぽを向いていたツケがアニメになって返ってきた。
そしてきらら枠で「友情・努力・勝利」を見せつけられるとは思わなかった。この結晶が
これであり
なわけ。わからねえならアニメを観ろ。
そんで5話の曲中歌は
あ~すっげ この曲聞くと俺の心臓もうっせえんだわ
駆け抜けるようなスピードの曲、感情を抑えるかのようなハイハットの鳴りと空間を裏で支配するベース、陽キャかつかわいらしい感じかと思いきやカッコよさと愚直さが同居するボーカル、そしてこち亀の本田速人よろしくネックを握ると性格変わっちゃうんか?という表情豊かでオラつくギター。ギタボとベースコーラス以外歌ってないのに完全にキャラクターが視える恐ろしい曲だ・・・
歌い出しの「突然降る夕立 あぁ傘もないや嫌 空のご機嫌・・・」
「ないや」→「嫌(いや)」→「ご機嫌」というイヤ三段活用なに何ナニ!?!?!?!?!?!?
「殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ」
「なんかになりたい なりたい 何者かでいい」
あーもうこんなもの真正面から受け止めたらライフがゼロになってしまう。ドラえもんの寝床みたいなとこから抜け出して、完全にぼっちから卒業した。この先の未来が輝かしいことに涙が止まらない。
高校生の頃の「バンドやりてー」という気持ちと「ギタームズ杉ワロタ」という思い出がフラッシュバックした。何物でもないからこそ何かになりたかったあの頃のことを・・・
ありがとうぼっち・ざ・ろっく。バンドをやってみようという気持ちがわいたよ。まだ私は何者かになれるのかもしれない。今期ダークホースアニメに背中を押されるとは思わなかった。明日、6弦ベースを買いに行こう。