詩集『イギ』刊行から1年にあたって
短歌から離れていた時期、ぐちゃぐちゃの僕の精神を支えてくれていたのが、詩を書くという行為だった。「ユリイカの新人」も受賞し、生きる目的を取り戻すきっかけとなった。やはり書くことが神さまからの使命であり、呪いであると思えた。その結果として編まれた詩集が『イギ』だ。詩には感謝しかない。
剣道では、相手の喉に切先を向けた「中段の構え」が、攻防のバランスの観点から一般的だ。一方、切先を天に向けた攻撃特化の「上段の構え」もあり、一度は試すべしと上級者に薦める人もいる。その理由は、上段を試して中段と比較することで、中段の構えへの理解が深まるから、というものだという。
僕にとって詩を書くことはそれと似た部分もある。詩を書くという行為を通じて、短歌にしかできないこと/詩にしかできないこと、短歌にはできないこと/詩にはできないこと、そのあたりの境界が鮮明になった。
『イギ』では、短歌で表現できなかったことを表現できた。僕が生きた証であり、苦しんだ証であり、そして研究・実験の結果である『イギ』を御笑覧頂けたなら、大いに書き手冥利に尽きる。
最後に、『千夜曳獏』に続き、様々な我儘に応えて下さった青磁社の永田代表・吉川様、驚きの潜む装幀に練り上げて頂いた濱崎実幸様、特殊な製本に応えて下さった印刷所の皆様、販売に携わって下さっている全ての方々、そして読者のあなたに厚くお礼申し上げる。これからも書いていく。
(現在の特殊装丁は初版限定につきお早めに。青磁社からの直接購入も可です。)
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