美術の歌(その1)
李禹煥(リー・ウーファン)は、「もの派」を牽引したアーティスト。もの派とは「石や木、紙、綿、鉄板といった素材をほぼ未加工のまま提示し、ものの存在自体、あるいはものと周囲との関係に意識を向ける」日本美術の動向(筧菜奈子『めくるめく現代アート』2016年、p110)。
普通、短歌でそんな存在感を持つ作家を引用すれば、一首の雰囲気がその作家に飲まれてしまう、つまりその作家の作品や雰囲気をただ散文化に劣化コピーしただけになってしまう。
しかし、大辻の上掲の歌は、「細い」より細い印象を与える「繊(ほそ)い」の表記、雪の白と結びつく「一月」の叙情、「一」という漢字の字面の細さなど、歌の後半に巧さを詰め込んであり、前半の李禹煥(リー・ウーファン)に負けない強さを持っている。
(↓ハートの「スキ」を押すとアラビア語一言表現がポップアップします。ミニ・アラビア語講座です。)