【旅】川村記念美術館
東京駅から高速バスで1時間。
千葉県佐倉市の田園が広がる静かな町に、この素敵な美術館は建っている。
以前はこのバスの存在を知らなくて、訪れる時はJRか京成線の佐倉駅まで電車に乗り、そこから送迎バスを利用していた。どちらの行き方にもそれぞれメリットがあるが、今は専ら高速バスを使っている。楽しみにしているのは、窓から見えるビル群の向こうのスカイツリーや、佐倉市に入る頃に眼前に広がる田園風景だ。そんな窓からの眺めを、気に入りのCDをポータブルプレイヤーで持ち込み、イヤホンで聴きながらのんびりと味わっていると、案外あっという間に目的地に着く。
この美術館は、知る人ぞ知る憩いの場所、という感じだろうか。緑なす木立をバスが抜けた先には発着所やチケット売り場のある小さな広場があり、右手から小さな森のなかを縫うスロープを歩いてゆくと、目の前に大きな池がきらきらと輝く、美術館前の庭園に出る。展示品こそ都内の開催のものと比べると少ないが、モネ、ルノアール、レンブラント、シャガールなどの巨匠の手による有名な逸品の数々が揃い、マーク・ロスコ、オリツキー、フランク・ステラ、エルズワース・ケリーなどの珠玉の現代アートまで広く作品を所蔵している。
わたしが愛してやまないのは、なんといってもヘンリ・ムーアの像が立つ芝生の広場だ。
池を右手に、緑茂る丘を左手に散歩道を下っていくとその広場が不意に前方に広がる。季節によって、八重桜が咲き乱れていたり、ポピーがたくさん風に揺れていたり、冬枯れのしんとした空間になっていたりと、その時々の魅力に浸ることができる。広場を大事に見守るようにそれらの木々が立ち並ぶ中、広いダンスホールのように芝生一色の空間に、一つ立つヘンリ・ムーアの像。金色のカラダを広場と調和させてそこに存在し続けるその像に、わたしはとても惹かれている。
高速バスを降りて、レストランで丁寧に供される美味しい食事をいただき、美術館を眺め、広場の像に挨拶に行き、美術館のなかにある隠れ家のような茶室で抹茶をいただき、ミュージアムショップで友人に送る絵葉書や、時には美術品を買って、またバスを待ち東京へ帰る。わたしの至福の休日の過ごし方だ。
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