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0歳9ヶ月の赤ちゃんと挑んだ国立遠征 ~すべては勝ち取るため~

あなたは「あの日」の出来事を上手に消化できましたか?
そう、2024年11月2日、ルヴァンカップ決勝戦。

私はこの日から3週間経った今も、ハイライトや観戦vlogを見るたびにうっすら泣きそうになるほど引きずっている。

アルビレックス新潟に関わるすべての皆さまが30年以上待ち望んだ、初タイトルの大大大チャンス。

準決勝で川崎フロンターレを下してから、皆さんご存知のとおり新潟県内はお祭り騒ぎ。

上越新幹線は即完売&2度にわたる増便。サッカー以上に激しいチケット争奪戦。県内ニュースに流れる国立競技場の天気(普段は絶対に流れない)。

決勝に出るってこんなにワクワクするんだ!!!なんで今まで教えてくれなかったんだよズルいぞ!!!

さすがに、決勝の舞台は絶対に生で見たい。私は準決勝の川崎戦1stレグが終わった時点で、新幹線のチケットを確保していた。

しかし・・・・・・わが家には0歳9ヶ月の赤ちゃんがいる。

サポ歴9ヶ月!生まれたときからサポーター!

私は最初、「東京にいる親戚か友人に預けるか・・・」と考えていた。
しかし、夫は言った。

「絶対に、わが子を国立へ連れて行く」


普段は温厚で、私の言うことを全部聞いてくれるやさしい夫。でも、ここだけは譲らなかった。

私「連れて行くの!?新幹線で離乳食あげないとだよ?」
夫「大丈夫、オレがやる。」
私「試合中にグズって途中で席立つのイヤなんだけど・・・」
夫「大丈夫、オレがやる。」
私「何ならウォーミングアップから見逃したくないんだけど・・・」
夫「大丈夫、オレがやる。」

ドラクエの村人かのように、同じセリフを繰り返す夫。もしかして夫は、この日のために育休をがっつり取って鍛錬してきたのか・・・?

「たとえ自分は全然試合を見れなくてもいい。その場にわが子がいたことに意味がある。わが子は覚えてなくても、大きくなったら『ここに君もいたんだよ』と伝えたい」

夫がこんなに主張してくるのは、結婚してから初めてだった。確かにアルビがタイトルを賭けた舞台に立ち会えるチャンスが、次にいつ来るかなんてわからない(もちろんすぐ来てほしいけど涙)。

よし、、わが子も国立に連れて行こう!

そして怒涛の情報収集&シミュレーションが始まった。


遠征withベビーは情報収集が9割

赤ちゃんを連れて行くにあたって一番心配だったのは「長距離移動」と「スタジアムでの過ごし方」である

(1)長距離移動

まず長距離移動。新潟⇔東京間は上越新幹線を使っていくのだが、わが子は絶賛ハイハイ&つかまり歩き期。2時間以上じっとしていられるだろうか(反語)。

そして時間帯的に、新幹線の中で離乳食を食べないといけない。授乳もしないといけない。。

赤ちゃん連れの旅は、どこの座席でもOKというわけではない。座席選びから勝負が始まっている。

調べてみると、新幹線には「多目的室」があると分かった。

引用元:https://media.jreast.co.jp/articles/796

予約で埋まっているとき以外は、車掌さんに声をかけると授乳などの際に使えるらしい。自分の席で授乳するのはスペース的に難しそうなので、多目的室が近い席を探した。

そしてもうひとつ。ベビーカーを持ち込む必要がある。折りたためるとはいえ座席に置くと邪魔なので、荷物置き場に近い座席を選んだ。

さらには、離乳食問題。わが子はこのとき2回食。新幹線の中で一人がひざの上に子を乗せて、もう一人が食べさせるしかなさそう。

いざ当日になって全く離乳食を食べないのも困るので、持ち運べるベビーフードを事前にいくつか試して、比較的食べやすそうなものを持っていった。

事前に試す際、常温で食べさせていた。試合当日は電子レンジで温められないので、わが子には(少し申し訳ないけど)冷たくてもある程度食べ進められるように慣れてもらった。

ほかにも、ベビーフードが進まない場合に備えてお気に入りのおやつも持参することにした。

(2)スタジアムでの過ごし方

国立遠征におけるもうひとつの大きな問題。スタジアムでは快適に過ごせるのだろうか?

調べると、ベビーケアルームやキッズルームなるものがあるらしい。どのくらい混雑するんだろう・・・

XやらインスタやらGoogleやら、いろいろ調べてみたけど「赤ちゃん連れの国立競技場遠征」について、リアルな情報はかなり少ない(というかほとんどない)。

あと、座席はどこにしようか。先行販売の場合、座席指定はできない。ベビーカーでの移動&座席の広さを考慮すると、どうやら1層目がイイらしい。

ということで、メイン1層目で希望を出した。そしたら、見事に当たった・・・!

もうひとつ大事なのは、試合の雰囲気に慣れること。わが子は胎児のころから母()が歌うチャントを聴いているので大丈夫なはずだが、試合前はしばしばYouTubeでチャント集を流していた。


いざタイトルへ。決勝当日

わが子、人生初の新幹線

事前準備を経て、いよいよ決勝当日。子はバッチリ睡眠をとり準備万端。

一方母(私)は、「アルビ勝てるかな・・・いや勝ちたい!勝つ!」「わが子は新幹線やスタジアムで無事に過ごせるんだろうか・・・」みたいなことが延々と頭をかけめぐり、一睡もできないまま国立へ向かうことになった。

事前にタクシーを配車予約し、いざ新潟駅へ(あとから知ったのだがこの日は配車も激混みだったらしい)。

私たちが乗る新幹線は、たまたま新潟駅に長く停車してくれるタイプ(=出発時間の30分前くらいから乗り込める)だった。早めに乗って離乳食をあげる。

普段と様子が違うからか、なかなか食べ進まない・・・涙 けど機嫌はいい!根気強く離乳食をあげた。

いざ出発。新幹線は満席。座れず立ったままの方もいた。みんなオレンジ色のユニフォームを着てワクワクした雰囲気の車内。帰りの新幹線はもっと幸せな空間になってるといいな。

離乳食をなんとか食べ終わり、授乳の時間。車掌さんに確認し、多目的室を使うことにした。

多目的室に行ってはじめて気づいたのだが、なんとイスをフルフラットにできる・・・!

久しぶりにごろんとできて喜ぶわが子

ひざの上で座りっぱなしだと親子ともにキツかったので、少しでも動けるスペースがあってよかった・・・

子のハイハイ欲を満たし、オムツ替え&授乳。すると子が寝落ちしてしまったので、照明を消して少しだけ寝かせることに(もちろん他に使いたい方がいないことを確認しながら)。新幹線の車内は結構明るいので、照明を落とせるのはよかった。この空間があって本当に助かった。。

そうこうしているうちに、10時ごろ東京駅に到着。東京駅からは、タクシーで国立競技場へ向かう。丸の内中央口あたりから乗車して、だいたい3,000円くらいでいけた。

金銭的には在来線で向かう方がいい。けど新潟県民と愛知県民が数万人単位で同じ方向に向かっていることを考えると、少し課金してでも快適に移動することを最優先した。

ちなみに道中、国会議事堂や国会図書館を通った。思いがけず観光気分を味わえて楽しかった!


赤ちゃんフレンドリーな国立競技場

そして、ホープ軒のあたりで降車。東京駅から20-30分くらいで到着した。
おおお!ここが国立か!タイトルを獲りに!!私が!!!来た!!!

す、すごい・・・(語彙力のなさ)

雨も降っていたので、スタジアム外のお店やイベントブースは見れないままいざ入場。

1層目の後ろ側だったのもあって、雨はほとんど当たらない席だった。よかった。

新潟県民にとってはこのくらいの悪天候、朝メシ前である

11時過ぎに到着し、ウォーミングアップ開始までは1時間。お昼ごはんの購入は一緒に観戦するサポ仲間にお願いし、わが子をキッズルーム(1階Dゲート付近)で遊ばせることにした。

アルビキッズがたくさんいて楽しかった

キッズルームに関しては特に事前情報が少なくて不安だった。しかし、その不安は杞憂におわった。

キッズルームにはベビーカーのまま入れた。ハイハイできるマットのようなスペースが3畳分くらいある。つかまり立ちできるようなヒツジやウマのおもちゃもあった。2-3家族がいたらほぼ埋まってしまうくらいの空間。

相当数の観客がいるので激混みを覚悟していたが、待つこともなくすんなり利用できた。むしろ他のパパママサポーターとも会話できて楽しかった。

キッズルームの隣にはベビーケアルームもあり、授乳やオムツ替えができた。ただ、Dゲート付近のベビールームはあまり広くなかったので、少し移動してB・Cゲートの間にある大きめのベビールームを利用した。

GKのアップが始まる前に、子のお世話がおおかた完了した。よかった。

阿部ちゃんのチャントが響く様子を見て、私はすでに少しうるうるしていた。

わが子よ、これが「決勝」の舞台だ

普段からチャントを聴きなれているからか、子はほとんど泣かずに大人しく座っていた。わが子よ、これが決勝の舞台だぞ。

ウォーミングアップが終わり、選手紹介。モリゲさんの声がいつもよりだいぶ小さめ?に調整されていて笑った。そして名古屋は決勝バージョンのムービーを仕込んできた。さすがお金のあるクラブは違うな(僻み)。

いよいよ選手入場の時が近づく。アルビ側のコレオ、ものすごい迫力だったな・・・

よし、私たちもCan't Help Falling In Love 歌うよ!と横を見たら・・・

わが子、ね、寝てるーーーーーーーーー!!!!!!!!
こんな大合唱が響き渡ってる中、寝てるーーーーーーーーーーー!!!!

これは将来大物になるわ・・・と感心してたら、あっというまにキックオフ。がんばれアルビ。絶対つかみとるんだ。


運命のキックオフ

前半、アルビのお家芸であるGKからの華麗なビルドアップを間近で見てワクワク。これはアルビの流れだ、いけるぞ!!!
・・・・と思っていたのもつかの間。一瞬の隙を突かれて失点。永井、こっちに向かってゴールパフォーマンスするのやめて??

まずは追いつけ!!!と思いながら懸命に応援してたけど、またも失点で0-2。永井、こっちに向かってゴールパフォーマンスするのやめて??マジでやめて????(2回目)

そのままスコアは動かず前半終了。前半30分くらいで子は起きた。少し寝たのもあって機嫌はよさそう。

ハーフタイム中には、フジテレビの「ぽかぽか」の番組企画でPK対決が行われた。大好きなハライチの岩井さんが来ているというのに、私は意気消沈。なんなら、帰りの新幹線を早めようとえきねっとを開いていた。

「でも、1点でも返せれば、流れは変わるかもしれない・・・」
と寸手のところでえきねっとを閉じた。

後半のキックオフである。始まってすぐ、子がグズりだした。「全部オレがやる」の約束とおり席を離れ、オムツ替えの対応をしてくれる夫。プライスレス。。

国立は座席の列数が多く、真ん中あたりに座ると出るのに一苦労だった。幸い今回はそこまで大変ではなかったけど、もう少し子どもが大きかったら結構つらかったと思う。

0-2のまま刻々と進んでいく時間。ああ、もうダメなのか・・・?寝不足だし体力的にも辛くなってきたぞ・・・?
と諦めかけていた後半26分。ダニーロの高速クロスに谷口が飛び込み、ゴールに吸い込まれた。

この瞬間、私は一瞬で目が覚めた。と同時に、ゴールした喜びよりも「子、周りの大声で泣き出さないかな!?」の心配が勝ってしまった。案の定、突然の歓声に号泣するわが子。

ごめんね~大丈夫だよ~と子どもをあやしながら、ピッチに向かって「もう1点!!!!!!いけるぞ!!!!!!!!!!」と叫んでいた。「親」な自分と「サポーター」な自分のバランスが取れず、ぐらんぐらんゆれている。

しかし時計は刻一刻と進み・・・

もう何でもいい、どんな形でもいいからアルビにゴールを・・・とアルビサポの誰もが祈っていたのを神様は見ていたのだろうか?後半アディショナルタイム、なんとコミちゃんがPKを獲得した。

PKが決まった瞬間は「よっしゃああああああ!!!」と思いつつ「え、誰が蹴るの?おのゆいないよ?コージさんもいないじゃん??どする??」と混乱していた。

そうこうしているうちに、ピッチではコミちゃんがPKの準備をしている。

「え、"あの”PKをこんな場面でやるのか・・・!?ウソだろ・・・!?!?」

もう混乱と興奮で情緒がおかしくなっていた。心の防衛反応だろうか、「これで外してもアルビはよく頑張ったよ・・・ ランゲラックがPKを止めて名古屋を救ってタイトル獲得。もし脚本が存在するなら、こんな流れになるだろうな・・・」と、外れたときの想像ばっかりしていた。そうしないと、外したときにメンタルが耐えられなさそうだったから。

いざPK。笛が鳴ってからコミちゃんが蹴るまでの間、あの一瞬が永遠のように感じた。

そして、ボールはランゲラックが飛んだ方向とは逆側へ綺麗に吸い込まれた。

地鳴りのような歓声が沸く南側スタンド。メインスタンドのサポーターも、全員立ち上がって叫んでいた。わが子はこの歓声に慣れたのか、もう泣きはしなかった。一方私はというと、号泣していた。

「日本文理の夏はまだ終わらない!!!!」2009年甲子園決勝での名実況が頭を駆け巡る。そういえばその時も、相手は中京大中京。愛知県勢はなぜ新潟の優勝に立ちはだかってくるのだろう?

そして試合は延長戦へ。新幹線を早めなくて本当によかった・・・

延長前半、名古屋の得意な形でさっくりと点を決められてしまう。一度つかみかけたタイトルが、また遠のく。。

でも、ここまで来たからにはどんな形でもいい、追いつけ、追い越せ。アルビサポの、いや新潟県民の30年越しの夢がかかってるんだよ。

延長後半が始まる前に、子にミルクをあげる。1層目は比較的スペースが広いらしく、座席であげられたからよかった。

絶対いける。そう信じて懸命に応援していた延長後半6分。長倉の「もうここしかない!」という華麗なスルーパスからコミちゃんが得点。もうこの辺は泣きすぎてあまり覚えていない。SNSでバッシングしてた人たち、見てましたか?コミちゃん、あんたが今日のヒーローだ。

3-3のまま延長戦終了。勝負はPK戦へ。

もうここまで来たら、これが「作品」だとするならば、さすがにアルビの勝ちでよくない??何でもいいから掴み取ってくれ!!

・・・・・・・・・・結果は、皆さんご存知のとおり。山岸のPKが決まった瞬間、時間が止まったかのように静まり返る南側スタンド。頭が真っ白になり、ショックとか悲しいとかの感情が湧き出るまでに時間がかかった。

感情が追いついたのは、優勝した喜びを爆発させる名古屋の選手たちを見たときだ。というより、それを近くで見つめていたアルビ戦士を見たときだ。泣き崩れる長倉。励ますモトキとおのゆ。名古屋の選手を呆然と見つめる選手たち。

この光景、一生忘れないかもしれん

ああ、あの場所に自分たちがいたかもしれないのに。せっかく、掴みかけたのに。

そう思うと、また涙が止まらなくなってしまった。この悔しさは、決勝の舞台まで来ないと感じられなかったと思う。これが、タイトルを賭けた試合なのか。

一通りのセレモニーが終わり、アルビ戦士たちが観客のもとへ。「ありがとう!!!!!!」「次は絶対タイトルとるぞ!!!!!」泣きながら選手に声援を届ける。一番悔しいのは選手たちだ。

いつまでも余韻に浸っていたいが、混雑も心配なので東京駅に向かう。配車アプリで呼んだら、タクシーはすぐに来てくれた。

東京駅に着いたのが17時過ぎ。新幹線は18時ごろ出発。1時間くらい余裕があった。

行きの新幹線で離乳食に苦戦したので、今回は東京駅の中にあるベビールームで離乳食をあげることにした。

東京駅改札内・グランスタ地下1階にあるベビールームがとても広くて快適だった。わが子をベビーカーに乗せてご飯をあげる。おなかが空いていたのか、パクパク食べてくれた。

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※余談
ベビールームでベガルタサポにお声がけいただいた。2022年10月8日(ビッグスワンがあの歓喜に満ちた日)に仙台側で応援していたらしい。「来年はJ1でよろしくお願いします!」と言われた。タイトルをかけてあんなアツい試合をしてたのに、まだ残留が決まっていないことに軽く絶望した笑
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帰りの上越新幹線も、オレンジブルーのサポーターで激混み。ああ、本当なら今ごろ勝利の喜びに満ちていたはずなのに・・・

帰路も多目的室を借りて授乳。いや本当に助かった。

20時すぎに新潟駅に到着。普段の就寝時間よりかなり遅くなってしまったが、0歳9ヶ月のわが子と行く国立遠征は無事に終了した。


後日談:やっぱり応援せずにはいられない

決勝翌日。疲れはまだ残っていたものの、わが家はみんなでサンクスフェスタへ向かった。昨日の今日で全然気持ちが切り替わっていなかったが、元気そうな選手たちをみてこちらが元気をもらえた。

ちなみにわが子は決勝以降、テレビに長倉が写ると熱心に画面をたたくようになった。

「決勝に連れていってくれてありがとう!」なわが子

タイトルにはあと一歩届かなかったけど、来シーズンは監督や選手の顔ぶれが変わってしまうかもしれないけど、あんな胸をアツくしてくれるアルビレックス新潟というチームをこれからも応援していこうと思った。

あの日は大変だったけどすごかったね。と、これからも何度でも夫と語りあいたい。あなたもこの試合を見てたんだよ。と大きくなったわが子に話したい。そのころにはもうアルビがタイトルを取っていて「あの試合があったから今があるね」なんて、家族で笑いあえたらいいなぁ。

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