吉村泰典『間違いだらけの高齢出産』
生殖医療の黎明期から活躍している産婦人科医が書く、高齢出産の現場の話。
著者は、現代の女性の出産適齢期は25歳から35歳だという。生物としての適齢期は18歳から25歳くらいらしいが、それほど若くして出産するのは現代では難しい。35歳を過ぎると急激に生殖能力が下がるため、それまでに産むのがいいらしい。
私は34歳で出産したが、病院で開かれた母親教室では、担当の助産師から皆さん歳をとっているのだから無理はできないし、本当はもっと早く産んでほしい、と言われた。40歳くらいの人もいたが、若い人はまだ30歳くらいだったと思う。若くなるわけにもいかず、すでに出産を控えた妊婦たちにその発言はないだろうと思ったが、この本を読んでリスクについては納得した。
卵子の老化と染色体異常の話はよく知られているのでここでは書かないが、母体の体力低下は大きいらしい。子宮も、出産後なかなか元に戻りにくくて出血が多くなる。母体が妊娠という一大事に耐えられず、早産になりやすい。不妊や出産時の異常を引き起こす子宮筋腫や子宮内膜症の患者である可能性も高い。
著者は生殖医療を完全に否定するわけでも、高齢出産を否定するわけでもない。あまりに出産について知らない人が多過ぎるため、もっと知ってほしい、知った上で産みたい人は早く産んでほしい、との思いが伝わった。
体外受精を繰り返したあと、卵子提供で出産した野田聖子さんの話が何箇所かに出てくる。野田聖子さんが立派な人であることがわかった。誰もが、ここまで子供の人生を受け止めると断言できない。
図書館では、「出産」ではなく、「医療」の棚にあった。高齢出産の本が並ぶコーナーはポジティブな話ばかりだったが、これも並べるべきではないか。高齢出産で育児を楽しむ人の体験談は元気はもらえるけど、現実も知りたい。