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地エネたいむ 「ポストコロナ探し」≪サンプル≫
≪2020年9月14日発行≫
新型コロナ禍で遅れていた2020年度の「地エネと環境の地域デザイン協議会」がようやくスタートしました。オンラインによる基調講演で、自然エネルギー財団副理事長の末吉竹二郎さんは、パリ協定、SDGsの次に現れた「ポストコロナ探し」という第3の軸の力でダイナミック動き始めた世界の状況を伝えてくれました。会員のみなさんはどう感じられたでしょう。
高温、干ばつ、豪雨などの気候危機と経済の関係に向き合ってきた欧米の企業、国や地域は、新型コロナ危機を歴史的転換点ととらえ、化石燃料廃止と自然エネルギーの拡大に向け、経済、金融、法制度の根本的な改革を加速しています。
2030年までに製品のサプライチェーンを自然エネルギーに転換すると宣言した米アップルは象徴的でしょう。IT関連商品の部品や素材供給で技術立国の地位を保ってきた日本にとって、もはや模様ながめは許されません。
末吉さんが取り上げたEUやダノン、アマゾンなどが打ち出した計画やビジョンには、持続可能な社会づくりのために二つの線を引く覚悟が感じられます。
一つは「地球の限界を超えない」ための一線。
もう一つは「コロナ以前には戻らず、新しい社会をつくる」ためのスタートラインです。
ポストコロナ探しから生まれる新しい基準で、あらゆる分野において自然エネルギーを基礎インフラに転換していく新たな競争の時代が始まったと末吉さんは指摘します。
人やカネの流出による経済の縮小や停滞に悩んできた地域は、チャンスが巡ってきたことへの自覚を強めねばなりません。
なぜなら、自然エネルギーは、石油のように特定の場所に集中するものではなく、どの地域にも存在する資源であるからです。太陽光は都市でも農村でも利用できる。バイオガスは「食べる」という人の営みがあれば、必ず発生している有機物のゴミが原料です。
末吉さんの話を聞いた後、私たちの立ち位置を考えていた時、ふとある言葉を思い出しました。
「天地人」。戦国武将の上杉謙信が孟子の教えを引用したとされる言葉です。
まず、「天」は「天の時」。コロナ危機で、いよいよ地球の気候危機に本気で取り組まねばならない状況にあると考えます。
「地」は「地の利」を生かす時が来たこと。コロナ不況は、東京など大都市への集中とグローバル化による無秩序な開発・移動が構造的な要因となっています。経済社会は「過密」「拡散」から「分散」「循環」へ基軸を転換しなければなりませんが、その舞台の中心となるのはもちろん「地域」です。
「人」は「人の和」。自然エネルギーを生かした新しい地域デザインは、森林やゴミ、太陽、水といった資源につながる人が、これまでと異なる発想で結びつくことで見えてくると思います。
ポストコロナ探しのための心と頭の栄養となる地域の情報を供給していきたいと思いますので、本年度もよろしくお願いします。
(神戸新聞編集委員 辻本一好)