小学校6年生キャリア教育の記録と授業展開の一案
【ごあいさつ】
2022年11月25日の5、6時間目。
西宮市立大社小学校にて6年生児童を対象としたキャリア教育が行われました。コミュニティスクールの企画として始まったこの取り組みは今年で2年目を迎えます。
ドローン操縦士でインストラクターの
竹内良介さん。
北京オリンピックに出場したマラソン選手の
中村友梨香さん。
整形外科医の満田基温さん。
料理人の仲川徹さん。
そして筆者(米光智恵)はこの度、〝絵描き〟と
〝美術教師〟の仕事についてお話をさせていただきました。
子ども達は関心のある職種を2つ選び、
講師が待つ、それぞれの教室に移動し交流します。
地域の方々と先生方による学校教育の創意工夫。
〝開かれた学校〟というビジョンに向かうための新たな一歩。今後も、キャリア教育が子ども達のビジョンの可視化に繋がるよう、学校と地域の連携を深め、先生方、保護者様、講師陣の皆様との出会いを育てていきたいと思います。
●コミュニティスクールとは?
●2023年1月公開記事
●米光の授業展開
【はじめまして】
みなさん
はじめまして。
わたしは米光智恵(よねみつちえ)といいます。
どうぞよろしくお願いします。
さて、今日は
①絵描きさんのお仕事
②美術の先生のお仕事
について紹介したいと思いますが…
はじめに、
①みんなもってる!ビューティフルネーム!
というテーマでお話しをしたいなと思っています。
ビューティフルネーム?
なんやろなぁ。
次はどんな展開だろう!
と先を見通す力。イメージする力。
実は、絵描きさんと美術の先生のお仕事にはとても必要なことなのです。
では、米光さんのビューティフルネームを紹介しますね。
こんな字を書きますよ。
米…八十八日かけてつくられたお米が
光…おいしそうに光ってる
智…ものごとの本質をしっかりと理解して
矢のようにまっすぐに皆に知らせたら、
恵…神様の恵みを受けますよ。
という意味が込められています。
みんなにもビューティフルネーム、
美しい名前がありますね。
自分の名前とにらめっこしてみると、
「なりたいな。」と思っている自分の姿や
向かっていきたい夢へのヒントがたくさん
隠されています。
〝へぇ〜そうなんやなぁ。〟
そんな考え方もあるのだなぁ。
と、うなずきながら、
②番と③番のお話を聞いていただけると幸せです。
2、絵描きさんのお仕事
まず絵描きさんのお仕事についてです。
絵描きさんといっても
いろんなタイプがありますね。
みんなのイメージはどれに近いかな?
…子どもたちの指さすものや、具体的なイメージを持っている子には聞いてみる。…
画家、イラストレーター、
漫画家、塗り絵師、グラフィックデザイナー
建築家、ファッションデザイナーもイメージ画を描きますね。
米光さんの絵のお仕事はイラストという分野になります。
イラストには〝文字情報を補助する〟という意味があります。文章だけではイメージしづらい内容を
イラストを通して補足するのが挿絵の役割です。
イラストがあることで、文章を読む人たちがより
その世界を味わうことができる。
それがイラストの魅力です。
西宮市人権平和課という場所で、沢山の先生方、職員さんが関わり、こんな冊子を作っていますよ。
学校や幼稚園、保育園といった教育の現場で読まれる冊子、絵本づくりに携わっています。
小さな子どもさんから大人まで、どんな世代の人が手にとっても伝わるようなものを描く。ということを大切にしています。
今からお見せする動画は冊子が出来るまでの流れです。
さて、今日はお仕事について学ぶがテーマなのですが、米光さんはみんなにあらためて聞きたいことがあるのです。
「みんなは、何のためにお仕事をするのだと思いますか?」
…子どもたちの考えをきいてみる…
※名前は仮名です。
ケンタさん: お金を稼ぐため!
こころさん: 生きていくため!食べていくため!
ようこさん: 好きなことをするため!
米光:そうだね。その通りだ!どれも正解だ!
そういや、最近こんなキャッチフレーズだって見かけるものね。
「好きなことで生きていく!」
好きなことでお金をもらい、これだけで食べていけたら幸せですね。最高です!
私は絵で食べていくとまではいかないのですが、
絵がお金に変わり、価値あるものとされた時、
達成感を感じます。
若き日の米光さんにはこんな気持ちが芽生えたのです。
一流になりたい!
食べていきたい!
有名な絵描きになりたい!
そうして、手が震えるまでがんばって描いた時期もありました。
でもね、とても疲れてしまって、
喜んで絵の仕事ができていない…
そんな自分に気がつきました。
何のためにお仕事をしているんだったかな。
もう一度自分に聞きました。
その時、今まで喜んで絵を受け取ってくれた人たちのことを思い出したのです。
「あの子、この子、あの人、この人の笑顔が見たいから。だから頑張っていたんや!」
って。
…ここで再び子どもたちに投げかけてみる…
米光:みんなはどうかな?ここに集まってくれたから、絵が好きかなぁ。絵が好きな人!
(当日は全員挙手してくれました。)
米光:ああ、うれしいなぁ。どんな絵をかくの?
サトシさん:リアルな人を描くのが好きです。
ネネさん:好きなyoutuberのキャラをうつしたりしています。
米光:毎日描いてるの?
サトシさん:毎日描いています!
ネネさん:私も毎日描いてる!
米光:描いてる時はどんな気持ち?
子どもたち:めちゃ楽しいです!
エルモさん:最近は黒板にも描いてますよ!ほら!
米光:いいなぁ!自由にお絵描きできるスペースがあるんだね!絵を描くことが好きでたまらない!
12歳の今の気持ち。大人になっても大切に持ち続けていてほしいな。
それから米光さんは、ひとつのイラストの仕事に取り組んでいる間、よくこんな風に思うのです。
「産みの苦しみ」
赤ちゃんが生まれるまでの痛み、苦しみを差す言葉です。自分の作品、自分のうけた仕事を、
まるで自分の子どものように思うのです。
子どもを産み出すまでは命がけです。
お母さんがこの時に思うことは…
しんどい。痛い。
しんどいを通り越して、
天に引き上げられるのではなかろうか。
それほどの苦しみを受けます。
みんなが生まれてくるまでの旅路は本当に山あり谷ありです。
そして、ええ仕事を成し遂げるまでの旅路も山あり谷ありだなぁと思います。
険しい山のてっぺんは例えるならば、
〝この命や仕事を守り抜くんだ!〟という志のようだなぁ。と私は考えています。
ひとつの仕事を完成させる瞬間は
命誕生の瞬間と同じくらい幸せなのです。
みんなにもそんな幸せな瞬間につながる仕事に出会って欲しいと願います。そして、今日せっかくみんなと出会えたのだから、願うだけじゃなくて、米光さんはみんなの背中を押します!応援しますよ!
最後に、これまでイラストのお仕事をしていて
1番嬉しかったことをお伝えして
絵描きさんのお仕事のお話は終わります。
これは肖像画という種類の絵になります。
この方は西宮市の中学校の先生でマツゲン先生といいます。陸上部の顧問の先生でした。
でも実はね、
癌で亡くなられました。
49歳でした。
生前、マツゲン先生学級では、
子どもたちが登校してくる前に毎日黒板にメッセージが綴られていたそうです。
死の直前まで、子どもたちへの応援メッセージは綴られました。メッセージを読んでみますね。
弱くなって 弱い人の気持ちが わかるようになったよ どんな どろんこ道だって 歩いてみないと わからないモノがあるんだ どんな道を行こうが
負けんな みんな マツゲン
何千人の生徒さん、親御さん、先生たちが
マツゲン先生の死を悼んで涙しました。
この報告を受けて、私はマツゲン先生の肖像画を描くことになりました。
先生の死の翌年、いよいよこの冊子が完成しました。マツゲン先生の笑顔が5000人の元に届いたのです。そして生前の先生をよく知る校長先生がこう言ってくれました。
「このマツゲンはまるで天国で笑ってるみたいやなぁ。写真やったら辛すぎてみれないから絵にしてくれてよかったわぁ。ほんまにありがとう。」
その時私は、
「絵は、悲しんでいる人によりそってくれるんだ。
そんな力があるんだなぁ。」
と気付きました。
同時に、絵はクッションのような役割もあると気づきました。悲しみの中にある人が現実と向き合えるようになるまで仲介し、手助けをし、心を癒すこともできるのだと。
〝絵を必要としてくれる誰かのために〟という志をもって描いたものはなくならない。
それがたとえ10年先、100年先、1000年先であったとしても残されていく。そう信じていつも筆をとるようにしています。
さて、次は美術の先生のお仕事について紹介しましょう。
3、美術の先生のお仕事
…再び子どもたちに美術の先生のイメージを聞いてみる…
米光:みんなはまだ中学校にいっていないから、
美術の先生を知らないかな?
図工の先生のイメージを聞いてみようかな?
関わる年齢が違うだけで美術の先生も図工の先生も志は変わらないよ♫
タケシさん:いろんな工作を知ってる。
ハナさん:絵が上手い人?
米光:なるほど。もっと聞いてみたいなぁ。
(子どもたちの笑い声)
米光:個性的な先生が多いかもなぁ。
(子どもたちの笑い声)
米光:米光さんなりにまとめてみると、こうなりました!
美術の先生(図工の先生も)は、
絵や工作の技術を教え込む人です!
(子どもたち、しばらく考えこむ。)
米光:というと、米光さんも何か違う感じがするのです。それよりも…
子どもたちのアイデアを引き出す事かなぁ。
自分でこのお仕事をしながら思います。
あるいは、〝何でも屋さん〟です。
この何でも屋さんの内容をご紹介しましょう。
ある時は〝材料屋さん〟
ある時は〝環境屋さん〟
ある時は〝相談屋さん〟
ある時は〝研究者〟です。
もう少し具体的なお仕事を紹介すると、
素材を選び、注文し、自分で道具を作ったり、集めたり、美術室を掃除し、刃物を磨き、子どもたちや先生たちの相談にのって、一緒に研究したり…
どう?結構忙しそうでしょう。
これら全てにアンテナを張りめぐらして
いつも心を動かしておく必要があります。
心を動かすために、先生自身も
いろんな人•モノ•コトに出会い、幼い子どものように毎日何かに感動することが大切です。
子どもたちに「これを作ってみよう!」と提案するならば、
「自分も実際に手を動かして、汗水ながして研究するぞ!」
という志が大切です。
そういうわけで、私にとっては絵描きさんのお仕事が美術の先生のお仕事とイコールになっています。
自分も絵を描くし、ものづくりをするから
子どもたちにアイデアを届けられる。
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子どもたちから、自分とはちがったアイデアをいただける。
届ける♪いただく♪
届ける♪いただく♪
こうして心が響きあうのです。
それも、色と形を通してね。
では、実際に中学校の生徒さん達の授業の様子を見てもらいたいと思います。どんなふうに色と形で心が響きあっているかな。
動画のあと、質問タイムにうつりますね。
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●以下は事前に担任の先生に聞き取りしていただいた質問です。子どもたちの「聞いてみたい!」に応えるスライドです。
この質問に対しては、「仕事を選ぶ厳しさ」について少し難しいお話になりました。
「金銭的に条件がよい仕事」と「多くの人の喜びに結びつく仕事」の見極めが必要である。
自分の欲を優先していては、絵が汚されてしまう感覚を覚える。それが私の感じている厳しさですが、人によって様々な見方、感じ方、考え方があるでしょう。金銭的な質問は中高生ならもっと直球で尋ねてくれることと思います。
私なりに調べたことをまとめています。
教育免許は必須だと言われますが、10年後、子どもたちが成人する頃にはもっと新しい働き方が増え、それにともなう条件も変わってくることでしょう。ミュージアムティーチャーや芸術士という職業もでてきています。学校だけが美術教師の活躍の場ではないことを子どもたちに伝えています。
小さな時からずっと絵が好きでした。
お店屋さんごっこや仮装。お母さんの口紅を借りて大人の真似っこ。遊びという経験値がイメージの世界と密接に関わっているのかもしれません。
お話の中で、幼い時に描いてきた絵も紹介しました。個人の心身の発達と線の発達も密接に関わっています。
題材の研究や道具、画材の整理をしていたらあっという間に時間が過ぎてしまいます。
18:00か19:00には退勤するようにしています。
実際に絵筆を子どもたちに手に取って見てもらいました。
フリーハンドだけが絵を描く方法ではないので、いろんな型に頼ってもいいことを伝えました。
◯だけではなく、□もですね。
やっぱり女の子の絵が得意です。
小さな時の絵と見比べると、描きたい対象はいつも綺麗な女の子。これはあまり変わっていませんね。
キャリア教育講師 米光智恵
2022年11月25日 実施
メディア・近況
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