アトリエの色と形。素材からイメージを広げて「紙」 2 米光智恵 Chie Yonemitsu 2021年4月30日 07:16 月に一度のアトリエ講師です。この春から始動した新しいアトリエのカタチ。先生とぼくわたしだけのアートの時間。クラス名をプライベートレッスンではなく、アート+(プラス)と呼ぶことにしました。指導するのではなく、引き出す。その子の中にあるイメージを色や形に表出するお手伝いができたらと思っています。先ずはお子様と親御様への事前アセスメントをとり、オリジナルのプログラムを組み立てました。自分の世界を自由に探索し、表現するため、あえてテーマを決めずに毎回主な「素材」を提示します。第1回目の今日は「紙」でした。元気いっぱいの9歳のA君との出会い。秩序と無秩序のバランスを考えながらAくんの表してみたい色や形を一緒に探っていきました。●抽象的な題材を好むA君のアートワーク。 目と手の連動運動の記録机の上に置かれた真っ白な画用紙。 「先生、今日は何を描くの?」「今日はね…グシャグシャア!」紙をグシャグシャと小さく丸めてみました。「さぁ、どこまで小さくなったかな? もう一回広げてみる? 次はねじってみようかな?」丸めて、捻って、踏んで…広げてみると不思議な形が出現しました。土台となるマーメイド紙にホッチキスで数カ所とめてみると、山の様になりました。想い想いに、お気に入りの色で塗っていきます。霧吹きで絵の具をにじませてみました。紙の上で水と絵の具が泳いでがっちゃんこ!「いい感じ!」「いい感じだね!」その後も霧吹きミストが心地よくて、天高く沢山吹きつけてくれたA君でした。ここで少し休憩をはさむことにしました。「先生、色画用紙使ってもいい? 紙飛行機作りたい!」「いいよ。どこまでとぶかな? スローモーション動画で撮影だ!」たっぷりと遊んだ後、先程の画用紙を観察しに戻ってきてくれました。A君がアトリエの隅に置かれたスプレー缶に気づきました。「先生これ…」「使ってみたい?お外いこうか!」次は活動の場所を外に変えてみました。温かな部屋から一歩外に出ると、夕方の冷たい風が肌に当たり、A君の大きな瞳がいっそう大きく開きました。「これ、大好き!やったことあるもん! 先生の服にもかける!」「わぁ!助けてぇ!あっ、先生のジーンズが可愛くなった!」いたずら心は距離が縮まった証です。部屋に戻り、再び作品を観察しました。何とも幻想的な色合いのユニークな紙のオブジェができました。「人、置いてみちゃう?」「わぁ!なんだこれ〜!」タッパに入った大量のミニチュア人形に大興奮のAくんは紙のオブジェにホットボンドで人形を接着しながら、ストーリーを構築していきました。「この人形、先生のおでこにつけていい?」「それはダメだなぁ。」「えいっ!」「あ痛たたたぁ!」「ごめんなさぁい。」接触も心の距離が縮まった証です。遊びながら、ホットボンドでひたすら人を埋めていくA君でした。「これは氷山やねん。みんな怪我してるねん。ほら、見て!この人埋まっちゃた!この人は血が出てるねん!」「雪崩れが起きたのか。みんな死んじゃったのかな。この人たちは埋まった人を助けてあげてるみたいだね。」「この人はまだ生きてる!大丈夫やねん。それで、雪に埋まった人を助けてあげてる。ほら、見て!」「助けてあげてるんだ。がんばって!」「ほら!先生みて!この人、雪に埋まってるけど透けてみえてる!」「あ、それ見て思い出した。先生はアイスマンの話を聞いたことがある。5500年前だったかな。氷の中に落ちちゃった人が居てね。」「生きてたの?」「生きてなかったけど、そのまんま、お洋服も身体も残っていたんだって。」「すごい!」「すごく壮大なストーリーになってきたねぇ!」A君の紡ぎ出す言葉。〝遊び〟を通して得る〝気づき〟。一つひとつの行為の連続の中で生まれたA君の世界を、大切に大切に温めていきたい。そう心から感じることのできた日でした。米光智恵●アトリエ詳細 Atelier happiness bird KOBEhttps://g.co/kgs/3CxhjH#@happinesskidsart#atelier#artworks#paper#素材#造形遊び#アトリエ#子どもの表現#田中達也さん風#紙のオブジェ#自然発生的#鑑賞#行為#子どもの遊び#ミニチュア人形#アセスメント いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #happinesskidsart 2