FM言ノ葉「第8回きっとあなたの1400字」投稿作品への感想
本記事は、VRChat内のラジオ「FM言ノ葉」において2023年9月に開催された企画「第8回きっとあなたの1400字」に投稿された全小説作品への、私の一言感想です。作者名は敬称略でご容赦ください。
お題は一律「言葉」でした。全ての作品は、2024年6月12日現在、VRChatのワールド「言ノ葉堂2号店」にて読むことができます。
作品がwebで公開されている場合には、各作品への感想の後にそのリンクを載せます。私の知る限りで載せていますので、公開しているのに載っていなかったり、リンクが誤っていたりする場合には何らかの方法で私までお伝えください。確認の上修正します。
今日は言ノ葉堂2号店で「第8回きっとあなたの1400字」の投稿作品を読んだ後、SIZE SHIBUYAに行きました。皆さんありがとうございました。 pic.twitter.com/jUonTRvgGU
— ソーサツ・チエカ (@chieka_quantizd) October 31, 2023
K(Unknown)『巡りゆく時の系譜~Echoes of sounds and words~』、タイトルと内容とお題がうまく嚙み合っていると思います。1400字は自分の経験を語るのにちょうどいい字数ですね。言葉のうち「不特定多数に伝える」側面について扱ったものだと私は読みます。
るいざ・しゃーろっと『伴狂者』、作者の意図したタイトルは「佯狂者」ではないかと思うのですが、「狂者に寄り添う者」と解釈すれば伴狂者もいいでしょう。内容とも合わせて、言葉のうち「意図しない形で受け取られる」側面の表れた作品だと私は読みます。
降谷椎『心外吐』、大規模言語モデルのAIに語りかけているものかもしれないと思いましたがそれは些細なことで、「自分の意志で言葉を紡がずにいる」という記述と最後のpythonコードが緊張関係にあります。言葉のうち「言葉を発しないことさえ言葉で記述できる」側面を指摘した作品だと私は読みます。そういうわけなので、個人的にはnoteに掲載されたバージョンよりも1400字のバージョンの方が好みです。
ソーサツ・チエカ『夕焼けを見る時の心で』、いつものやつです。私は魔術師ですが、魔術師とは言葉を最大の武器とすると同時に、言葉の力を最も信用していない者です。写真はYayoi Riverbedで撮りました。言葉のうち「その空白によって語り得ないものの存在を示す」側面を示そうとした作品です。
おるか『器』、ここで器というのは言葉を解釈する心のことだと私は読みましたが、一度「彼」を失った後に、それでも人に手を差し伸べようと再び立ち上がる様子は尊いと思います。言葉のうち「受け取り方の方が多様である」側面を描いた作品だと私は読みます。
津楽『川獺問答』、不確かな存在に名を与えることで制御するというのは実践オカルティズムの基本で、私もよくやります。言葉が持つそのような側面をそのまま描いた作品だと私は読みます。しかし、その脅威を不確かな存在の方から描いた最後の一文は、今までありそうであまりありませんでした。
北川梨之助『20年前の贖えない言葉』、状況の進展にリアリティがあり、また「だから誰かに見て欲しかった、誰も傷つけない言葉を教えて欲しかった」の部分が特に切実です。言葉のうち、「意図しない形で受け取られ、しかも勝手に拡散する」側面を描いた作品だと私は読みます。これがもっと字数の多いお題で、私が書くなら、つい手癖で「そうするべきだった、しかし――」と続けてしまうところですが、ここでは蛇足でしょう。
小鶴こづる『チラシの裏に妄言を』、言葉と自分が不可分であるというよくある達観を冷たくあしらっていて、また嘘についても言及しており、なかなか贅沢な作品だと思います。一言で言えば、言葉のうち「中身がなくても機械的に生成できる」側面について述べた作品だと私は読みます。
まめのすけ『銀河の果てまで』、これが最後に来るのはよい演出ですね。確かに、個人が世界の果てしなさと直結するためのただ二つの手段のうちの一つが、言葉なのでしょう(もう一つは言葉を捨てること)。言葉のうち「媒体に宿って時間と空間を超えられる」側面を詠い上げた作品だと私は読みます。
〈以上〉