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CDデビュー15周年を迎えて


おかげさまでギタリスト智詠のファーストアルバム『不思議な風』を発表してから今年で15年になりました。活動名を本名の「小林智詠」から「智詠」(Chiei)に変えてからも15年になります。

CDの発売日が2008年5月31日だったので、この記事を書いた日でちょうど丸15年、長いようであっという間だった気がします。というか2020年春~2023年春の3年間は気持ち「ワープ」してしまったような感覚になりますが…。


私はこれまで多くのアーティストの10周年・15周年・20周年・25周年・30周年の記念コンサートなどに参加する機会に恵まれてきました。「アルバムデビュー15周年」のイベントでは、例えばフラメンコギタリスト沖仁さんのアルバムデビュー15周年(2017年7月1日 東京オペラシティ)、ケーナ奏者Renさんの15周年記念シリーズ(2022~2023 栃木・岡山など)が記憶に新しいです。

まさに祝福に包まれた空間で、センターでスポットライトを浴びるその方を、お祝いにかけつけたファンの方々と一緒に祝い、ともに活動してきた尊敬するミュージシャン、スタッフの方々と一緒に過ごす時間は、どれも宝物のような時間でした。あらためて感謝とともに、いくつもの場に立ち会えたことを本当に幸せに思います。


それと比較するわけではないですが、私の「15周年」は、自分でもびっくりするくらい穏やかな気持ちで迎えました。ちなみにフラメンコ舞踊家伊須裕巳とのユニット「シージャ・イ・メサ」としては、フラメンコ舞踊を始めて25年&ギターを始めて30年の節目となるリサイタルを愛媛(2019年)と山口(2021年)で開催しているので、とりあえずこれで十分かも…というのもあります。


しかしそれ以上に私にとっては、「CDデビュー」そのものよりも『不思議な風』を発表したことをきっかけに、自分のギタリストとしての歩き方が決まっていった、ということが大きかったです。

これまでの記事でも少し触れていますが、

「自分の名前で勝負しなればならない」
「集客できるミュージシャンでなければならない」
「これが私の音楽です!と表現せねばならない」


多くのアーティストがCD(現在は音源や動画の配信を含む)を最初に発表したときに向き合う課題でもあります。私の場合はCDを出してからの約2年間は、この「ねばならない」に苛まれて、正直かなり苦しかったです。

別に逃げ出したかったわけではありませんが、コンサートやライブを成功させるためには、たとえ小規模であっても、こんなにも責任や重圧を背負うということなのか、というのをまず最初に学びました。


当時、自分でブッキングしたライブ、「ソロやってよ!」と依頼いただいたライブには実はけっこう恵まれていて、お客さんも入ってくださって主催の方も喜んでくださって…それはとてもありがたかったです。ただ自分の中では、どこか違和感というか、これは本当に自分がしたかったことなのか…と迷うことが多かったです。※1


ここで振り返ってみると、CD『不思議な風』は、自作曲がメインではありますが、ギタリストとして(特に大学卒業後の5年間で)お世話になってきたミュージシャンとの記録でもありました。ある意味最高のタイミングで録音できたと思っています。そして、あらためて音源を聴くと、自分のギターが目立つことより、むしろゲストの音が美しく響くことを意識して弾いていたことに気づきました。

このファーストアルバムを出した後、多くのミュージシャンから「共演者」としてのオファーをたくさんいただきました。もしかしたらこの時点で、その予兆があったのかもしれません。

自分が求められているのは、「主演=ソリスト」ではなく「助演=バイプレーヤー」なのではないか、それ以上に自分がいいパフォーマンスをすることで主演が輝き、その方のファンが喜んでくれたとき、私もうれしい、と思うようになっていました。「ソリストとしてデビュー」したことで、図らずも自分の立ち位置が明確になったというか、私は「ひとを助ける」ポジションがあっているのかもしれない、と少し後になって気づくことができました。


実際に、『不思議な風』は自分のソロライブよりもサポートメンバーとして出演したコンサートの方が売れる、という現象もしばしば発生しました。

そしてこの15年をもって、まもなく完売となる予定です。(配信でのダウンロード販売は続く予定です)


なお、その後に出たユニットのCD…
『とぽけろっちぇ』(2010)はケーナ・サンポーニャ奏者の山下TOPO洋平さんとヴァイオリニスト会田桃子さんという超ソリストのお2人と

『若者の舞踏』(2012)では当時16歳ながら比類ないポテンシャルで、今や八面六臂の活躍をしているギタリスト菅沼聖隆さんと

『アビエルト』(2018)はバンドネオン奏者早川純さんとピアニストの須藤信一郎さんという、ソロも客演もバイクも乗りこなすお2人に、たぶん私と同じ種族のパーカッション奏者熊本比呂志さんと

そして『ウタウアシブエトリオ 鳥の歌』(2021)ではもっとも共演回数が多いサンポーニャ・ケーナ奏者の岡田浩安さん&熊本比呂志さんと私のトリオ

さらに数々の客演での参加CDの数々。

作品ごとにメンバーも曲(ジャンル)も奏法も異なりますが、私のポジションはたぶん一貫して同じだと思います。


2019年に「ギターを始めて30年」の記録として発表した『トレス・オリヘネス~3つの始点』は、ほどなくコロナ禍に入ってしまったのでまだご紹介する機会は少ないですが、またご一緒できるようになったミュージシャンの方々と(収録曲を含めて)一緒に演奏できることが楽しくてしかたありません。

という感じで、CD15周年やギター30周年を「ひっそりと」迎える形にはなりましたが、ある意味「僕らしいなあ」とも思っています。マイペースではありますが、次の節目を迎えたとき自分にはどんな景色が見えているのか、とても楽しみにしています。


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