セミファイナルで演奏する「邦人新曲課題」と作曲者の片山柊さんを紹介します♪
こんにちは♪
ピティナ2023特級公式レポーターの山本です。
来たる8月18日(金)、ピティナ特級のセミファイナルがいよいよ開催されます。演奏者は山田 ありあさん、小野田 有紗さん、三井 柚乃さん、嘉屋 翔太さん、鈴木 愛美さん、小野寺 拓真さん、神原 雅治さんの7名のセミファイナリスト。演奏されるのはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのピアノソナタや邦人新曲課題を含む45 分以上55 分以内のプログラムです。
実は私、公式レポーターになった当初からセミファイナルで演奏される邦人新曲課題がずっと気になっていました…。ピティナ・ピアノコンペティションの参加要項を開くと、この課題について「セミファイナルより前に公開の場で演奏することを禁ずる。」と書かれています。秘密の曲!?
そんな邦人新曲課題の情報がようやく8月10日に解禁されたので、今回はこちらの課題について紹介したいと思います♪
邦人新曲課題とは
ピティナ特級のセミファイナルでは、プログラムの中で邦人新曲課題が課されます。今年も三次予選結果発表が終わった8月1日の夜、新曲の楽譜がセミファイナリストへ渡されました。公式サイトによると、邦人新曲課題では「短い期間で、作品の大枠をつかみ、一定以上のクオリティで再現する能力」が問われるのだそうです。
実際にセミファイナリストたちは楽譜を渡されて約2週間で譜読みや練習をし、発表まで持っていく必要があります。もちろんほかの曲の準備も行いながらです。なんというハードスケジュール!!
昨年から開催されている新しい試みなのだそうですが、セミファイナルまでの間には新曲作曲者への質問会も開催されます。こちらの様子も記事の後半で詳しくお伝えしますね。皆さん疑問に思ったことなどを作曲された片山柊さんに積極的に質問しておられました。
今年の課題は「内なる眼 -ピアノのための- Innervisions for Piano」
今年セミファイナルで演奏されるのは「内なる眼 -ピアノのための- Innervisions for Piano」です。作曲をされた片山さんは、実は2017年にピティナ特級でグランプリを受賞された方でもあります。以下、片山さんによる作品解説文を引用いたします。
片山柊さんとは
片山柊さんは北海道出身の音楽家。2017年に第41回ピティナ・ピアノコンペティション特級でグランプリを受賞し、あわせて聴衆賞、文部科学大臣賞、スタインウェイ賞受賞も受賞されました。
東京音楽大学(ピアノ演奏家コース・エクセレンス)を首席で卒業後に同大学院修士課程を修了し、現在は東京音楽大学演奏研究員、桐朋学園大学作曲科に在学されています。また、後進の指導にも携わっておられ、演奏家、作曲家、指導者として幅広いジャンルで音楽とかかわりながらご自身の「音楽」を追求していらっしゃいます。
なんと片山さん「カタヤマシュウ」名義でこんな活動もされています!片山さんの違った一面が垣間見えるおしゃれなユニット「東京◯X問題」。気になる方は動画の概要欄をチェックしてみてくださいね♪
新曲作曲家(片山 柊さん)への質問会
先日作曲家の片山さんを囲んでの質問会が、コンテスタント向けにクローズドで開催されました。公式レポーターとして特別に取材させていただいたので、ここからはその様子をお伝えいたします。
質問会の前半では、片山さんから「内なる眼 -ピアノのための- Innervisions for Piano」に込めた思いをお話ししてくださいました。後半はセミファイナリストの皆さんから片山さんへの質問タイムです。
片山さんの解説より《作品の聴きどころ》
前半は片山さんがこの作品を作るにあたって気にかけていたことや、演奏のポイントについて説明してくださいました。片山さんのおっしゃっていたことをもとに、私なりに作品の聴きどころをピックアップしてみました♪
①ソステヌートペダルの扱い方
20世紀以降の作品ではソステヌートペダル(真ん中のペダル)が使われている作品が多いのだそう。この曲ではソステヌートペダルを効果的に取り入れていることから、片山さんはこの課題をきっかけに挑戦して親しんでほしいとおっしゃっていました。
※ソステヌートペダル……グランドピアノの真ん中のペダル。右側のダンパーペダルがすべての音を持続させるのと違い、ソステヌートペダルは踏んだときに出していた音だけを持続させる
②高い音と低い音が合わさった響き
この曲では非常に幅広い音域が使われているのだそう。冒頭は非常に高い音で始まって、次が最低音に近い低い音域、次第にそれらが組み合わさり高い音と低い音が同時に存在するところがあらわれるのだそうです。高い音と低い音が重なり合い、一体どんな響きが生まれるのでしょうか?片山さんもここが表現の一つのポイントとおっしゃっていました。
③クラスターの扱い方
今回、片山さんのお話で初めて「クラスター」という言葉を知りました。調べてみたところ、クラスターとは極端に密集した和音のことをいうようです。片山さんはここについて、はみだしてもいいので思いっきり演奏してほしいとおっしゃっていました。場合によっては手のひらや肘を使ってもよいのだそう!?皆さんそれぞれどのように弾きこなすのでしょうか、早く聴いてみたいです。
セミファイナリストから片山さんへの質問
後半はセミファイナリストから片山さんへの質問タイム。皆さん熱心に質問をして、片山さんからの言葉を聞き取ってはそれを咀嚼しておられるように感じられました。
特に印象に残ったのが、作品のタイトルとスティーヴィー・ワンダーの「INNERVISIONS」というアルバムの関係についての質問です。片山さんによると、特級に出ていたころによく聞いていたのがスティーヴィー・ワンダーの「INNERVISIONS」なのだそう。特にその中の「Higher Ground」という曲の歌詞の一部は、今回の作品の前書きに引用されているのだそうですよ。
引用されているのは「一番の高みに到達するまで誰も僕をとめられない。一番の高みに到達するまで誰にも邪魔させるんじゃない」という言葉……。なんともグッとくるメッセージに胸が熱くなります!(このことは【ピティナ特級スペシャル番組】クライマックス直前!セミファイナリスト7名が登場 2023特級セミファイナル・ファイナルの見所大紹介 でも取り上げられていました。ご興味のある方はぜひご視聴くださいね♪)
他にもペダルや特定の音の取り扱い方などの質問が続き、皆さんが作品と真摯に向き合っておられる様子がひしひしと伝わってきました。
最後に
当然ですが、モーツァルトやベートーヴェンから曲について直接解説してもらうことはできません。そこに込められた思いは彼らが残した手紙などからうかがい知ることができますが、今の私たちにできるのは一方向的に情報を受け取ることのみです。
作家の解説を実際に聞いたり自ら質問したり、双方向的なやり取りを行いながらその内容を演奏に取り入れることができるのは、今回のような現存の作家の曲だからこそ。今回そのやり取りを聞かせていただいて、非常に貴重で贅沢な時間を過ごさせていただいたように感じました。
さて、セミファイナルで演奏される「内なる眼 -ピアノのための- Innervisions for Piano」、一体どんな曲なのでしょうか?そして7名のセミファイナリストは各々どのようにこの曲を弾きこなされるのでしょうか?早く聴きたい!!8月18日(金)のセミファイナルが今から待ち遠しいです♪
(写真提供:ピティナ)
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