しまなみ音楽休暇村のテンプル・コンサート「遺言と祈り」へ行ってきました
「しまなみ音楽休暇村」は、しまなみ海道沿線で毎年おこなわれている音楽の祭典。今回は、全5回の演奏会(提携企画もあわせると6回)が開催されます。
私がお邪魔したのは、今年最後となる4回目の演奏会、テンプル・コンサート「遺言と祈り」。
尾道市の遊亀山浄泉寺で、オールシューベルトのプログラムを堪能してきたので、その様子をお伝えしたいと思います♪
期待に胸を膨らませながら会場へ
テンプル・コンサートへお邪魔するのは今回で2回目。前回ちょっと迷っちゃったのですが、今回はスムーズに到着することができました。
昨年いらっしゃったパントマイムの方を今年も見られて感激!
パントマイムを楽しんだあと本堂に入るとすでに満席近く、大いに焦りました(汗)係の方が追加の椅子を出そうとしてくださったのですが、ポツンと1席、真ん中の方にあいたところを発見!!
係の人に誘導していただき、後部の真ん中あたりに座ることができました。
ありがとうございました。
プログラムと演奏者は以下の通りです。
1曲目は「弓の会」のみなさんとコラボ
コンサートは、演奏家のみなさんと音楽教室「弓の会」の子どもたちとのコラボレーションでスタート。
しまなみ音楽休暇村の総合プロデューサーであり、ヴァイオリニストでもある小島燎さんが指揮をされました。
緊張した様子で出てきた子どもたち。
少しぎこちなかった体の動きが、曲が進むにつれてどんどん大きく滑らかになっていき……、最後はとても誇らしそうな顔で、のびのびと弾いていたのが印象的でした。
つい、自分の学生時代のことを思い出す私。
大学生のころ、ストリングオーケストラ部に所属していたのですが、そのときにプロの演奏家の方と一緒にステージに上がる機会がありました。
プロの演奏者の方がつくってくださる大きな音楽の流れに自分の身を任せていると、まるで自分まで上手になったかのように感じられるんですよね。
私一人では決して到達できない高み。
それを少しだけのぞかせていただいたように感じられたものです。
貴重な体験をした子どもたち、きっとこの日のことは一生の思い出になることでしょう。
演奏後、チェリストのラファエル・ジュアンさんが「フランスではこんな小さな子が上手に弾けるのは珍しい。未来の仲間とステージを共にできたことがうれしい」とおっしゃっていました。
「未来の仲間」なんて素敵な言葉でしょうか!
また、小島さんは「フランスには音楽を無料で学べる制度がある。日本でもそんな制度が充実していくよう願っている」ともおっしゃっていました。
日本とフランスの違いが興味深く感じられるとともに、日本でも才能ある子どもたちがしっかり学べるようなシステムが、これから充実していけばいいなと思いました。
2曲目は「弦楽三重奏曲」
次の曲はエヴァ・ザヴァロさん(ヴァイオリン)、東条慧さん(ヴィオラ)、笹沼樹さん(チェロ)の3人による弦楽三重奏曲第1番 変ロ長調。
プログラムによると、この曲は1816年に2楽章の途中で放棄された未完の作品なのだそうです。音楽中辞典によるとシューベルトが生まれたのが1797年なので、18~19歳ごろの作品のようですね。
この曲では、出だしの一音から美しいハーモニーにぐっと心を掴まれました。
ホールで聴くのと違って演奏者との距離が近いのも、この演奏会の魅力。お互いの音を全身で感じ取りながら演奏している様子が伝わってきました。
最後は待ちに待った「弦楽五重奏曲」
休憩を挟んで最後に演奏されたのは、弦楽五重奏曲 ハ長調。小島燎さん(ヴァイオリン)、エヴァ・ザヴァロさん(ヴァイオリン)、東条慧さん(ヴィオラ)、笹沼樹さん(チェロ)、ラファエル・ジュアン(チェロ)の5名全員で演奏されました。
この曲は、31歳の若さでこの世を去ったシューベルトが、亡くなる2か月前に完成させた遺作(死後に残された未発表の作品)です。
ちなみに、小島さんのお話によると、音楽家では短命の方が結構いらっしゃるのだそう。調べてみると、モーツァルトは35歳、ショパンは39歳で亡くなっていました。
そして、小島さんの現在の年齢も、31歳なのだそうです!(どうか元気に長生きして、素敵な曲をたくさん聴かせてください!)
さて、こちらの曲はどことなくアヴェ・マリアを思わせるような繊細な音色でスタート。第一楽章ではチェロのまろやかなピチカートに心を奪われました。
第二楽章は、朝もやの中を散歩しているかのような穏やかなハーモニーに包まれて始まりますが、そこに訪れる突然の転調。もだえるような不穏な旋律に、胸が苦しくなりました。
第三楽章で心に残ったのは皆さまの表情!勢いのある勇ましい調べに、演奏される方もとても気持ちよさそうでした。私の席からはヴィオラの東条さんのお顔がよく見えたのですが、この曲が始まったとき、とってもチャーミングににこっと笑っておられたのが印象に残りました。
チェロが2本という独特の編成のよるものなのでしょう。重厚感ある迫力たっぷりのハーモニーに魅せられました。
最後の第四楽章は、ステップを踏むような軽快なリズムでスタート。聴いているこちらも思わず左右に体を揺らしたくなるような軽やかな演奏です。
フィナーレに向かって激しく盛り上がっていく曲。そして手に汗握る観客席の私たち!もはやみんな、前のめりです。最後は弓のしなりがこちらまで伝わってくるような圧力の感じられるフォルテで締めくくられました。
アンコールは「シューベルトの子守唄」
アンコールに演奏されたのは、おなじみ「シューベルトの子守唄」です。「弦楽五重奏曲」の熱気が残る本堂で聴いた子守唄。両極にあるはずの生と死が一度に感じられ、何とも言えない厳かな気持ちになりました。
アンコールは撮影してもよいと言っていただいたので、私も動画を取らせてもらいました。よかったら聴いてみてください。
しまなみ音楽休暇村のテンプル・コンサート。こちらのコンサートは音響設備の整ったホールで聴くのとは違った趣があり、この環境自体が作品の一部のように感じられます。
「祈りの場」であるお寺で聴くからこそ、よりダイレクトに作品が心に語りかけてくるように思われるのです。
普段は仕事や子育てに追われてなかなか演奏会へ足を運べない私ですが、しまなみ音楽休暇村のこちらのコンサートだけは、来年も再来年も聴きに来たいと思っています。
しまなみ音楽休暇村のフィナーレは来年3月!
しまなみ音楽休暇村 vol.5 の最後のイベントは、来年3月30日(日)に、尾道市生口島の「ベル・カントホール」で開催されます。
ガチンコ勝負!?とっても楽しみです。
そして、なんと入場無料のよう。こんなことがあっていいのでしょうか!?
興味がある方は早めの予約がおすすめです。(私も近々予約します)
さて、演奏中は写真が取れないので文章ばかりになってしまいましたが、素晴らしかった演奏会の様子が少しでも伝わっていれば幸いです!
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
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◯昨年開催されたテンプル・コンサートの感想はこちら