もし、神様がいるとするのなら
そこは、音楽が消えた世界___
2023年10月23日、6ヶ月ぶりにカムバックしたSEVENTEEN。11枚目のミニアルバム“SEVENTEENTH HEAVEN”は「この上ない幸せな状態」を意味する「SEVENTH HEAVEN」をもとにつくられた造語。つまりは、とんでもない幸せをSEVENTEENが届けてくれるってわけ。祭りだ 祭りだぁぁあああああ!
カムバのプロモーションは音楽フェスへの入場リストバンドを連想させる映像から始まり、プロモーションのスケジュール表はまるでフェスのタイムテーブル。そして、今回のタイトル曲は '음악의 신' 、'God of MUSIC' だよ?音楽の神!!!絶対に楽しい予感に満ちていて、HAPPYが確約されています。
なのに!……いざMVの世界に入場したら冒頭に書いた通り音楽がない世界に連れて行かれる。何が起こったのか、何が始まるのか___
「BUTTERFLY SOUND」と書かれたカセットテープを聴いているジョシュア。蝶はギリシャ神話とかキリスト教の聖書とか……仏教にも関係あったかな?(薄知識) 中国の故事にも出てくるようだけれど、「輪廻転生」とか「死と生」「復活」の象徴とされてきたらしい。ということは、「BUTTERFLY SOUND」は音楽の復活を意味するのか……?
「この世に音楽の神様がいるのなら ありがとうと抱きしめたい」
ジョシュアの歌声で音が、歌が、音楽が再び世界に戻ってくる。ピュアでまっすぐなフェイクは、本当に世界の新しいはじまりを告げる音みたい。ジョシュアから始まるサビ始まりの曲というだけでもう名曲確定なのに、このワンフレーズでこの歌の言いたいことを全部言ってしまっていませんか?まるで数学の証明問題のよう(学生時代一度も解けたことがない)。答えはもうわかってる。でも、わたしたちはこの歌の意味を探しにいかなきゃ!行きましょう!
ドギョムパートの「世界共通のLanguage 子音と母音が異なっても関係ないのがMusic」
ホシくんパートの「言葉が通じなくても音楽があれば 僕らは今からは大の親友さ」
音楽の本質が語られる歌詞。そうだよね、だってわたしはいまだに韓国語の単語を拾うことしかできないのに、こんなにSEVENTEENの音楽が大好きなのだから。
今回、脚の怪我のために、ブダペストでのMV撮影に参加できなかったクプスのパートは、まさに病院にいる設定で撮影されているけれど、そのシーンが「どこにいたって、どんな状況であっても、人にはその瞬間を楽しむ力がきっとある。そして、音楽がそれを助けてくれる」というメッセージになっているように思う。クプスの怪我はこの曲ができたときには予想できなかった事態だろうから、結果的にこの歌の持つ意味をより強くさせているのもなんだか運命みたい。
'손오공' で鎖骨骨折の療養中だったハオさんが左腕をかばいながらパフォーマンスしたことで、より覇王感が演出できたように、いつでもピンチをチャンスに変えるSEVENTEEN。さすが強い運を感じます。
サビ直後のキャッチなフレーズが、言葉としては大きな意味を持たない語感優先の「クン チ パッ チ クン クン チ パッ チ イェ」という擬音であることの大胆さ。「DARUMDARIMDA」もさぞかし驚いたことでしょう。そして、日本語訳でもこの部分をあえて「ズンドコ カッカ」(?)とかに訳さないところに、前述した通り音楽の本質を語る「世界共通のLanguage 子音と母音が異なっても関係ないのがMusic」「言葉が通じなくても音楽があれば 僕らは今からは大の親友さ」という歌詞の答えがある。これでもう「クンチパッチ」は世界共通言語です。
「難しく考えるな 踊ろう 歌おう」
「幸せはまさに今この瞬間だ」
'今 -明日 世界が終わっても-' に引き続き、SEVENTEENからの「今」を大切にしようというメッセージ。何事もそうだけど、「今」に目を向けると、いつか「終わり」がくるとわかっているから「今」が大切なんだよな……と思ってちょっと切なくなってしまうんだけど……まぁ、今は踊りましょう、歌いましょう!
'음악의 신' も '今' のMVと同じ制作チームだけれど、このチームはメンバーのリラックスした表情を撮るのがすごく上手だなぁ。かつ、希望のなかにある切なさとか儚さの表現が巧み。色味のせいかなぁ?こんなに楽しい作品なのに、ところどころに感じるエモさの正体は一体なんなのでしょうか……?ふと泣きそうになるときがある。
あと、宇宙に本当にマイク飛ばしちゃったりするのも好き。そういう意味わからないお金の掛け方(費用は知らないけど)をする熱量高いクリエイターが好きだから。
そういえば、このMVを見たときに、コロナ禍に見たBTSの 'Permission to Dance' をふと思い出した。いろんなアーティストのCD発売が延期になり、コンサートが中止になり、世界からエンターテインメントが消えそうだったあのときに見た 'Permission to Dance' のMVが本当に美しくて、音楽の役割を全部あのMVがやってくれてるように感じて、感動したんだよなぁ。そして今、SEVENTEENの '음악의 신' は、またエンターテインメントが蘇った世界をもっともっと楽しいところまで連れて行ってくれる希望に満ちた作品のように感じる。
最後、ウジくんが振り返るシーンは、この歌が終わってしまうさみしさと、またここから何かが始まることを期待させてくれて、どこかへ向かって跳ねながら歩いていくみんなの背中を眺めながら、またSEVENTEENの永遠を願ってしまう。
ウジくんが振り返るときに曲名が出てくるのがまたいいよね。「どうも、わたくしがGod Of Musicです」みたいな。もうこの場面が名刺。
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「SEVENTEENTH HEAVEN」はコンセプトフォトもアルバムのジャケットも、そしてタイトル曲のMVにも、すべてに一貫性がある。かつジャケットにはAM5:26 → PM2:14 → PM10:23 という時間軸に物語もあって、美しいクリエイティブだと思う。
楽曲の振り幅もバランスもすばらしくて、これだけの色を持ってるのに、これらが1つのグループの中で生まれる曲だなんて……と、毎度のことながら感心してしまう。もしバンドだったら、絶対「音楽性の違い」を理由に解散してるよ。これがアイドルグループのよさなんだよ〜。
今回、特にボカチ‘하품(あくび)’が印象的だった。ウジくんが曲を作った翌日にスングァンに送ったというエピソード(‘SEVENTEENTH HEAVEN’ Comeback Talk Show参照)からも、何を起因にこの歌詞が書かれたかは想像できるんだけど、この歌のすごさは、無理に励ましたり、ポジティブな方向に促そうとしたりせず、静かに思いっきり悲しみと向き合わせてくれるところだと思う。ウジくんからの愛。
人が大きな悲しみに触れたとき、明るさで誤魔化したり、平気なふりをしても結局は大丈夫にはならないんだよね。だけど、スングァンはきっとそれができてしまう人だから、休養を選んだとき少しホッとした。
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しみじみ思ったんだけど、やっぱりウジくんはSEVENTEENによって書かされてるんだよね……書かされてるというとちょっと違うか……メンバーといることで曲が生まれてしまうというか。'Circles' がきっとウォヌの人生を通して(それだけではないと思うけど)できた曲であるように、'하품(あくび)' はスングァンの人生によって生まれた曲なんだろう。
SEVENTEENは13人で1つだけど、13人にはそれぞれの人生があって、13人分の人生がウジくんにインスピレーションを与えているんだろうな。でも、ウジくんの歌詞のすごさは明らかに誰かのために書いた曲がその人のためだけじゃなく、たくさんの人の共感を生むことなんだよね。
以前、ウジくんが「僕の原動力はメンバーとCARAT、ただそれだけ」と言っていた言葉を改めて実感した。
そして、それをさらに実感した曲が 'Headliner'。歌詞を見たときにこれってわたしの気持ちと一緒じゃん!と思って驚いた。だけど、この曲はCARATをHeadlinerに見立てて書かれたファンソング。あぁ……ファンがアイドルを想う気持ちとまったく同じ気持ちでアイドルがファンを想ってくれてるなんて、最高じゃん……と、何度も歌詞を追ってしまう。
もっと書きたいことはたくさんあるけど、もう収集がつかなくなりそうだから、とりあえずここまでにしておこう。
いつもそばにいるし、味方でいると言ってくれる、音楽の神様たち。神様なのに、すぐ隣にいるような気持ちにさせてもらえて、本当にしあわせです。
もし、本当に神様がいるとするのなら…………SEVENTEENのみんながこれから見る景色も美しくありますように、綺麗な言葉だけが届きますように、メンバーがずっとしあわせでいられますように。