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RESEARCH Camp in 遠賀

博多から電車で約1時間のところにある遠賀(おんが)町。一級河川の遠賀川が流れ、遠くに福智山を望み、眼下に田んぼが広がる町です。
「地域の遊休不動産の活用」をテーマに、使われなくなった漕艇場合宿所の活用アイディアを考えるリサーチキャンプに参加しました。
本稿はフィールドノーツと自身の振り返りも兼ねて、リサーチキャンプの様子を綴ります。

ちょっぴり不安? リサーチキャンプ前夜

会場のG's ACADEMY FUKUOKAの方が描いてくださった黒板

リサーチキャンプ前夜はRESEARCH Conference Pop-up in FUKUOKAに現地参加。YAMAP土岐さん、UPSIDER森さん、ヌーラボ橋本さんが、それぞれリサーチャー不在の組織の中で、どのようにユーザーに向き合い、プロダクトを開発しているかについて語ってくださいました。登壇者の方々の自社プロダクトへの強い愛情や、より良いプロダクトを追求する姿勢が、SIerの私にはとてもまぶしかった…

イベント後の懇親会では、翌日からのリサーチキャンプに向けて早速プレリサーチを実施。福岡市在住の方々に遠賀の印象を尋ねたところ、「遠い」「遠賀川以外のイメージがない」「行ったこと(行こうと思ったこと)がない」等々。あれ?思っていたのと違うぞ…ちょっぴり不安なリサーチキャンプ前夜となりました。

遠賀を知ろう リサーチキャンプ1日目

遠賀川駅のホーム

博多駅から鹿児島本線に乗って約1時間ほどで遠賀川駅に到着。途中、接続電車待ちの10分程度の停車が2〜3回ありました。電車で1時間はそんなに遠くないと思っていたけど、このもったり感が遠賀を遠く感じさせるのかしら…

あまねやさんのたい焼き。今川焼きにはないワクワクを感じる

今回のリサーチキャンプの拠点は、遠賀川駅前のたい焼きカフェ・あまねやさん。参加者が続々と集まり、リサーチキャンプのスタートです。自己紹介からの昼食に続き、デザートは看板メニューのたい焼き。薄皮で香ばしく、甘さ控えめで美味しい!

お腹も満たされたところで、午後はいよいよフィールドワーク。遠賀で50年続く蓮農家の娘さんが、私たちのチームを案内してくださいました。国内外での生活を経て、遠賀に戻ってきた彼女の目に映る遠賀の風景や遠賀への想いを伺いつつ、いざフィールドワークへ。

遠賀川漕艇場合宿所

遠賀川漕艇場合宿所の倉庫

最初に向かったのは、今回のテーマであり、遠賀町の遊休施設となっている漕艇場合宿所。かつては大学生が合宿所として利用していたそうですが、現在使われているのは倉庫のみ。広い食堂、大きな浴槽、密な二段ベットは状態が良く、かつての賑わいを彷彿とさせ、日に焼けた大学生が廊下を行き交う様子が目に浮かんできます。換気のために開かれた2階の窓から吹き込む風が心地よかったのですが、遠賀川が見えなかったのが少し残念…

駅の北側に集まる公共・民間施設

遠賀町立図書館の入口

続いて、メインストリートを通って遠賀町立図書館へ。この辺りには、遠賀町役場、中央公民館、農協の直売所、民間の商業施設が集まっています。週末は家族連れが多く、直売所と図書館をセットで訪れる人が多いとのこと。司書さんに遠賀の好きなところを尋ねたところ、「人が穏やかで優しいところ」とおっしゃっていました。

駅の南側に広がる田園風景

一面に広がる田んぼ

跨線橋を渡って駅の南側へ渡ると景色は一変し、青々とした田んぼが広がります。私たちのチームを案内してくださったお姉さんは南側の出身で、お姉さんの話によると、考え方や生活スタイル、関係性の築き方等にも、南北それぞれの特徴があるのだとか。

お姉さんが子どもの頃に「お地蔵さま籠り」をした祠

お姉さんが子どもの頃は、地区の子どもたちがお地蔵さんの祠でお弁当を食べる「お地蔵さま籠り」という行事があったそうです。少子化とコロナの影響で、今はやっていないとのことですが、祠は手入れが行き届いており、大切にされていることが伝わってきました。

木守地区の氏神さまを祀る井出神社

地区の氏神さまを祀る神社は小さいながらも作り込まれており、同じ敷地内には地区の公民館が併設されています。そういえば、あまねやさんも「たい焼きを売りたいのではなく、町の公民館を作りたい」と言ってたっけ。私自身が公民館と縁遠いこともあり、遠賀町の方々にとって公民館がどういう存在なのかが気になりました。

ベトナム語で「花が微笑んでいる」

最後はお姉さんのご実家の蓮畑へ。蓮の花は開いてしぼむを繰り返し、その過程で香りが甘く変化していくそうです。幸運なことに、私たちはその日の朝に咲いた蓮の花に出会うことができました。ベトナムでは、その日に咲いた花のことを「花が微笑んでる」と言うとのこと。微笑んでる花はちょっと青くさく、みずみずしい香りがしました。

アイディアを考えよう リサーチキャンプ2日目

フィールドノーツを共有

フィールドワークを通して分かったこと

リサーチキャンプ2日目は、各自のフィールドノーツをチーム内で共有するところから始まりました。同じチームで行動を共にしていても、どこに着目し、どう受け止め、それをどう表現するかは人それぞれ。その違いから新たな気づきを得つつ、フィールドワークを通して分かったことを整理していきました。

問題を定義する

How Might Weによる問題の定義

続いて、How Might We…のフレームワークを使って、私たちが向き合う問題を定義。前日に遠賀町を案内してくださったお姉さんから、あまねやさんに背中を押されて、蓮を使った新しい取り組みに挑戦している話を聴いた私たちは、それを拡張する形で問題を定義しました。

アイディアを発散する

How Might Weからのアイディア発散

問題を定義した後は、チーム入り乱れて、ワールドカフェ形式でのアイディア発散を2ラウンド実施。光るアイディアなんてそう簡単には出てこない…

アイディアを収束する

コンセプトシートの形でアイディア収束

発散したアイディアはコンセプトシートの形で収束させます。私たちはあまねやさんのネットワークと場づくりに着目し、人と場を見立ててつなぐサービスを検討。そして、サービスの拠点として、漕艇場合宿所を遠賀町で何かやってみたいと思っている人のトライアルの場として活用するアイディアをまとめました。

最後に各チームがアイディアを発表、あまねやさんに講評いただいて、2日間のリサーチキャンプは終了しました。

おまけ フィールドを再訪する

糸島の白山神社

リサーチキャンプ終了後は福岡に延泊し、翌日は糸島へ向かいました。
なぜか?それは、裏・糸島フィールドワークで訪れた白山神社の月次祭に参加するため。
フィールドワークでお話を伺ったおじさんが、月次祭に毎回参加しているとおっしゃっていたので、会えることを期待して訪れました。あいにく、時間が合わずに、会うことはできませんでしたが、今回は宮司さんにお話しを伺うことができました。
日々の草むしりで日焼けした宮司さん。5つの神社を掛け持ちしているそうです。本当は合祀してしまった方が合理的なのですが、合祀するということは、文化がなくなってしまうということ。それぞれの神社を存続させるために心を砕いていらっしゃる話が印象的でした。

フィールドワークは続くよ どこまでも

裏・糸島フィールドワークで糸島を訪れた際、自分がこんなに早く再訪することになるとは思いませんでした。私は新しい場所に行ってみたい気持ちが強く、同じ旅行先に繰り返し行くことが、これまでほとんどなかったためです。そのため、noteにすら「また行きたい」と気安く書くことができませんでした。
しかし、フィールドワークを通じて、新しい問いが生まれ、問いが深まると、フィールドに戻ってきたくなる感覚が自然と湧き上がっている自分に気づきました。
きっと遠賀もそういう場所になる。
あまねやさんは最後に「いつでも帰ってきてください」とおっしゃってくださいました。また行きますね。

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