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ムードに、呑まれない

今日(日付的には昨日ですが)の14:46は、区役所で、ひよこの3歳児健診を受けていました。保育園で毎月測ってるはずの身長計と体重計を前に、イヤイヤ音頭を踊るひよこを、眺めてたんです。音頭が治まるのを待ちながら。日常の穏やかさをしみじみと噛みしめながら。

5年前の、2011年3月11日も、金曜日でしたよね。翌日からの土日で、香住町(兵庫県の日本海側)にカニ旅行に行ったので、よく覚えています。地震そのものは感じなかったけれど、災いがもたらした不安と混沌は関西にもどすんと伝播してて、わたしは、旅行とか行っとう場合ちゃうわ、と動揺しました。が、わたしの後ろ向きな「明日どうする?」に、夫は一言「え、行くよ」。

夫は、ブレないひとです。ブレなさすぎて、9割方は面倒くさいけど、たまに、たまーに、肝心なところを救われます。そうだ、なに付和雷同してんだ、わたし。わたしの、わたしによる、わたしのための自粛なんて、して何になる。

夫の確固とした「え、行くよ」と、民宿の扉を開けたときの、奥さんの「来ていただけてよかった」と胸をなでおろされたような笑顔は、一生覚えておきたい、あの日与えられたものたちです。

まわりの雑音や攻撃に流され、山田桐子の人生を失ってはいけない。山田王求の母親の人生を生きなくてはいけない。母親に代打は送れない。そう考えると自然、落ち着くことができた。

伊坂幸太郎「あるキング」

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