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大学生自転車日本一周旅六日目:仙台駅から盛岡駅へ

本編

 この日の目標は盛岡駅までの約180㎞を漕ぎ切ること。ただし、前日までの疲労も考慮して、花巻市まで行けば終わってもいいことにした。これまでの最大移動距離は二日目と三日目の約160㎞だったので、そこからさらに20㎞も進むわけだ。ただし、これまでとは違って、地図を見る感じでは山登りも無いようだったし、標高の高い地域を通過するわけでもなさそうだったので、案外これまでよりは楽なんじゃないかと踏んでいた。昨日の予想外の疲労が足を引っ張らなければ、という前提付きだけど。とにかく行けば何とかなる、と漕ぎだした。

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 まずは、岩手県の南に位置する一関市を目指すことにした。ここが盛岡駅までのおよそ半分の距離だったし、県境には山がありそうだったから、それを越え切っての休憩がいいと思ったからだ。まずは90㎞。ゴールのことも考えると、一関市にどのくらいの時刻にどのくらいの疲労度で到着できるのかが、一つの重要な指標となる。

 仙台から出ると、どんどん田舎に入っていった。景色としてもあまり面白いものはなかった。栗原市に入るまでに工業地帯みたいなところがあって、そこで少し登ったりしたし、暑さもあった。だが、それもいつものことであったから、もう慣れてきていたし、問題なく進めていた。

 そして、県境が近づき、山道とまでは言わないまでも、大型車の通行量が多く歩道も片方しかない、国道ではあるが危険な道に入った。それと同時に強烈な雨が急に降り出した。完全なゲリラ豪雨ってやつ。雨脚はこれまで受けたことがないほどに一気に強まった。1分前には何もなかった道に大きな水たまりができる。

 しかもその時、進行方向右側にしか歩道がなかった。しぶしぶそこまで渡ったはいいものの、その水たまりを通った大型車からの水撥ねがえげつない。当たり前のように大量の水を直撃させてきた。普段だったらむかつくけど、正直これは車側からしても不可避すぎる。避けて中央線に寄るのも視界の悪い雨の中では危ないから、水撥ねが起きるのは必然ではあった。むしろ、こんなところを歩いている俺のほうが迷惑ってわけ。

 だから、どうぞ水をかけてください、と謎に悟りを開いたかのような心境にたどり着いていた。雨脚が弱まりそうな気配は一向にしなかった。歩道はあるとはいえ、山道は非常に危ない。歩道もいつ終わってしまうかは分からない。なんとか山道を越え、近くのコンビニへ流れ込んだ。屋根の下を陣取ることはできなかったけど、走っているときよりは雨から逃れられたから、何を買うでもなく待機していた。びしょびしょになった服にも、できるだけ乾けと念を送っていた。

 結果的には10~15分後に雨はやんでくれた。典型的なゲリラ豪雨だった。ビショビショにはなってしまったけど、長時間待たされることもなく、無事再出発を切ることができた。ただし、そのコンビニは宮城県のコンビニだったから、予想外の休憩になってしまっていた。だから急いで一関市を目指す。お昼ご飯も食べないといけないし。

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 そこからは天気が荒れることはなかった。一関市までたどり着いたら、平泉町の近くのマックで侍マックを食べた(あれ初めて食べてみたけど、くそうまいな)。時間やや押し、疲労度100分の70ほど。なかなかに厳しいかも。ここから切り替えて急ぐしかない。あらかた乾いてくれたレインコートもバックにしまって、さあ盛岡へ一直線。

 平泉の中尊寺金色堂に寄って見るという選択肢も元もとはあったけど、想定外の雨もあったし、また登りそうだったから諦めた。所々、川や線路を超えるために橋を登らなければならず、それがこの満身創痍の体にこたえたものの、それ以外は田舎道を突き進むだけで平地を爆走していた。ひたすら歌を歌ったり様々なことを考えたりしながら漕ぎ続けてた。

 途中、どうしても疲れて力が出ない場面があった。それはこの日に限らずあったけど、特に移動距離が長いということもあって顕著に表れていた。だけど、少しづつ、そういう時はあえて頑張らない方がいいということに気付き始めた。しんどい時に無理に動こうとすると、ペースはあまり上がらないのに精神的には追い詰められてしまって、心が折られかねない。無理な時はあきらめて無理なりのペースを維持する。そして、きたる元気百倍アンパンマン状態の時に一気にペースを上げるほうが効率がいい。苦しい時は必死に耐えてゆっくりでも自転車を漕いだ。

 ついに日が落ちてきた。あたりはどんどん暗くなる。すると、なぜかは知らないが、ペースが徐々に上がったきた。暗くて危ないっていうのに。涼しいからか、ランナーズハイ的なやつか、はたまたそれ以外か。気持もどんどん乗ってきて、広い道路が多かったことも幸いし、一気に盛岡市へ。日は完全に落ちていたから花巻市で終わってもよかったけど、このテンションの中止まってしまうのはもったいない気がして、そのまま走り去っていった。

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 結局予定通りの所要時間で盛岡市に到着することが出来た。朝8時ごろに出発し、到着は21時を少し過ぎた。計13時間ほどの長い道のりではあったが、走破。

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 180㎞と聞くと非常に長く感じる。だから、それを自転車で移動するのは無理でしょって思ってしまうし、そう言われたりもした。だけど、諦めなければ、自分には行けると信じれば全然できないことはないんだと強く実感できた一日であった。

 明日からは、一日で青森に生きたかったけど距離の関係で行けそうにはなかったから、八戸市までにしようと思っていた。今日よりも5時間分ぐらい所要時間が違う。明日こそは休みだ!と希望を抱きながらこの日は眠りについた。

ルート

 仙台駅から盛岡駅までは基本的に国道4号線を走った。一本で行けるので楽。

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