【006:六箱 紫苑】2章『コッペリアの葛藤』25話♡
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2章25話
甘苦しい諸々が渋滞していた。
口付けで息苦しくて。
イったクリトリスを刺激され続ける快感が苦しくて。
潮を吹きそうなのを必死で我慢するのが苦しくて。
「んぅふっふぐっぅううぅう゛ッ♡」
口づけられたまま、無力に呻くしかない。もう私の意見を聞く気がないらしい紫苑くんは、私が悶えるのを完全に無視している。頭を振ろうにも、彼の両手で包み込むように抑え込まれて動かせなくされてしまった。
さっきまで繋いでいた手こそ自由になったけれど、私の頭を掴む彼の腕に軽く爪を立てて縋りついているのが精いっぱいで、とてもじゃないが引き剥がせそうにない。
湿った音がテンポよく響き続けている。どんなにシーツを蹴り飛ばしても、対格差がありすぎて逃げ道がない。
そうして刺激を続けられれば、当然限界は訪れる。そもそも、最初から勝ち目などない戦いだった。いや、戦いですらなく、これは一方的な蹂躙に他ならない。
「っ!ぅっ!ぅん゛ッ♡―――――ッッ!!」
しょろろっ
どうしよう、どうしようっ出ちゃったっ我慢しようとしたのにっ!
熱い体液のあふれ出す感触に、眉根が寄る。溢れた体液が彼のモノを伝ってお腹を濡らし、お尻の下へと伝って行ってシーツを冷たく濡らした。
涙腺が緩んでいるせいか泣いてしまいそうだった。生理現象というべきなのか、反射というべきなのかは分からないけれど、それでもこの、動物的な行為を我慢しきれない自分が情けなくって、羞恥が襲ってくる。
残念ながら、その羞恥心は理性を削り、私の子宮をより疼かせるばかりで、何の役にも立ちはしない。
「あーあ、出ちゃった」
「はっ、ッ♡ぅ、あ゛ッ♡」
咥内から舌を引き抜いた彼が、それはそれは愉し気に私を揶揄する。どちらの物かもわからない唾液で濡れた唇同士はくっついたままで囁かれた声は、酷く湿っていて、その声だけで既にぐちゃぐちゃに濡れた私の中心が更に湿り気を増してしまう。
「我慢は無理だった?」
「ぁぅ゛ッあ゛ッ♡ゃっ゛!♡」
しょぽっ
しょろっ
彼の腰が揺れ、ぱつぱつに充血したクリトリスがやりたい放題に転がされる刺激が繰り返される。一度決壊してしまった尿道は、もうきちんと我慢もできない。
それでも必死で力を籠めているせいか、何度も襲う浅い絶頂の度、ちょっとずつ、ちょっとずつ、潮が溢れて、じわじわとシーツの濡れた部分を広げていく。
「やだっもぉ゛やだぁっあ゛ッ♡」
しょろろっ
「うん、やだねぇ」
押さえ込まれたままの頭を横に振る。実際に動くことはなくても、必死に動かそうとしているのは伝わっているはずだ。なのに、彼は全く反応を示さないまま、まるで理解ある教師みたいに穏やかに私の言葉を繰り返すのだ。
それでいて、動作は全く止めてくれないのだから、悪質極まりない。
彼のこの態度自体はいつもの事なのに、私の切羽詰まった状況だけがいつもと違っているのも、恐らく良くないのだ。まるで初めて彼と繋がった時のように、体も心も妙に緊張していて、そして間違いなく、あの時よりもこの後の快感を期待してしまっている。
「うふふっクリちゃんぱっつぱつに腫れてる。こんなのズリズリされたら気持ちよくって我慢なんて無理だよね」
「ひぁっあ゛ッ♡ふぐぅ、ッ、ぅ゛ーーーッ♡」
ぷしっ!
無駄な抵抗とどこかで理解しながら、それでもこれ以上ベッドを濡らしたくはないのも本音だった。下唇を噛んでどうにか耐えようとした途端、彼のむっちりとした先端部分が、クリトリスをこれでもかと圧し潰し、今までで一番勢いよく潮を吹いて果ててしまう。
ぐちゃりと歪んでいる私の顔を、陶酔した視線で覗き込む紫苑くんはこれ以上なく満足そうで、悔しくて恥ずかしくて気持ちよくて、ぼろぼろと涙が零れて落ちた。