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【日常短編集5月号】001:壱村肇『食べごろ』

「ただいまー」
「おかえりなさい」

聞こえた声に返事をして、ぱたぱたとスリッパの音を鳴らしながら玄関に向かう。今日は私は美容院に行く予定があったので、肇さんは一人でお買い物に行ってくれていたのだ。

ゴールデンウイーク中はBarもお休みだ。それでいいのかと思うけれど、彼のお店だし、彼が決めることだ。問題ないんだろうし、私は彼と過ごせるのが嬉しい。非常にのんびりと過ごしている。

時間もあるし旅行に行くか、という案も出たのだけれど、どこの観光地も混雑しているのを思うとあまり旅行というのも気が進まず、結果、2人で海外長編ドラマの一気見沼にどっぷりと浸かっていたりする。これはこれで贅沢な時間の使い方かなとは思っているものの、若干以上の時間の浪費感に妙な虚脱感と罪悪感も覚えている。

そんな訳でさすがに連休の折り返しを過ぎた今日は、しっかり動こうという事になって、私は美容院へ、肇さんは散歩へ行く事になったのだ。彼は何か美味しいものを作ると言っていたので、夕飯が楽しみで仕方がなかった。

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