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【006:六箱 紫苑】2章『コッペリアの葛藤』29話♡

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前の話

2章29話♡


「ちょっと座りなおそっか」
「あ、うん」

太腿に回す縄を締め終わったらしい紫苑くんは、私に声をかけながら背中へ手を回した。頷き、彼の手に促されるまま体を起こす。また浅く椅子に腰かけた形だ。

新しい縄を手に取った彼は、私の背後に回り、手を戒める縄に、その縄を絡めて縛っているようだった。見えないので気配でしか分からないけれど、なんとなく肌に触れる感触でそう察していた。

真剣に縄を扱っているところに話しかけるのもなんだかはばかられて、私は黙ったまま大人しく座っていた。さっきまであられもない恰好を強いられていたので、あらぬ場所が隠れているというだけで気持ちが少し落ち着いていたというのも大きい。

しばらくして、結び終わったのか、平衡に重ねた状態で縛られた手が上へと軽く引っ張られる。腕が変な方向へ行くほどの強さはなく、本当に軽く、縄の縛り具合の強度を確かめるためにやっているらしい。

「ちょっと待っててね」

言い置いて、紫苑くんは私から離れるた。そして部屋の壁に立てかけてあった3段ほどの低い脚立を持ってきて、椅子の隣へと置くと、「立てそう?」と私に声をかけて来た。

「うん」
「手ぇ縛っちゃってるし、ゆっくりね」

促されるままそっと立ち上がる。倒れないよう、縛り上げられた腕には手が添えられていて、歩きを覚え始めたばかりの子供を相手にするような過保護具合で、ちょっと面映ゆくて、でもここで笑うのもなんだか雰囲気をぶち壊してしまいそうで。私は唇をきゅっと歯と歯の間に挟み込んだ。

「・・・もうちゃんと立ってられそうだね。じゃあちょっとそのまま動かないでくれる?」
「わかった」

言われた通り、確かに既に膝の脱力感はなくなっていて、私は素直にうなずいて返した。紫苑くんはと言えば、腕に追加したであろう縄を持って、身軽に脚立を2段上り、そうして天井に設置された金属製の輪にその縄を通した。

くっと体が引き上げられる感覚がする。

「普通に立ててる?」
「うん」
「これくらい引っ張ったらどんな感じ?」
「あー、つま先立ちって感じ」
「最初だし、ちゃんと立てる様にしておこうか」
「うん」

腕を背中に回した状態で腕を真上に引かれていると、否が応にも背筋が伸びる。そのせいで、また体の中に緊張感が戻って来た。

縄で縛られるのは毎度のことだが、立ち上がった状態でそこから逃れるすべを塞がれる、というのは、いつもとはまた違う感じがしてしまうのだ。

緊張しているせいか、自然と返す言葉が単調になるけれど、紫苑くんは気にした風もなく「じゃあそうするね」と軽い調子で返して、金具に縄を結び付けていった。

「痛かったりはない?」
「ん、大丈夫」
「そう。よかった。じゃあ今度は脚ね」
「っ!」

脚立から下りた彼が、そのひんやりとした手を私の腰骨に当てた。思わずびくりと体が跳ねる。

「大丈夫だよ。片脚しか吊るさないから」
「っ、ぁっ、っっ」

彼の指が、降り士の輪郭をそうっと撫でおろしていく。それ以外の場所は触れそうで触れない。彼に寄りかかってしまえばもう少し気がまぎれそうなのに、天井へと続く縄が、私に一歩を踏み出すことすら許さない。

撫で下ろした指が太ももを撫で、縄を辿って内ももへと這って来る。ぞわぞわとした軽い快感と緊張感とが混ざり合って、私は早々に呼吸を乱し始めていた。

「っは、あっ、ふっ」
「こっち脚をさ、こうやって持ち上げて」
「あっ、あ、ぅあ」
「この体勢で動けなくなるんだよ。ね、ちゃんと協力してね?」
「~~~~っ」

耳元で囁く低い声に、脳が溶ける妄想をした。冷たいはずの彼の手を熱く感じる。太ももを持ち上げられた状態にされているので、彼の手は力強く、しっかりと私の柔らかい肉に食い込んでいる。その存在感に、ごくりと唾を飲んだ。

「ねぇ?お返事は?」
「は、ぃ、っ」

支配される。

縄を用いで身体を。

声を用いて精神を。

心臓がまた駆け出していた。

うふふっ、と耳元に笑い声を残して、彼は手を縄へと移動させた。脚を持ち上げた状態を維持するように縄を掴み、そのまま器用に脚立に上がって、さっきと同じように、天井の輪へとその縄を結ぶ。横目でちらりと彼を見上げる。

「っ」

私も裸なら、当然彼も裸のままなのだ。

さっきまでは硬さを大分失っていた彼のモノが、今は臨戦態勢になっている。そしてその状態を晒している事に、彼は欠片も恥ずかしさを覚えていないらしかった。

私は思いのほか至近距離にあった彼のモノから咄嗟に目を逸らし、バクバクと暴れる心臓に振り回されて、顔を熱く上気させていた。

今更彼のモノを見たから恥ずかしいだとか、そんな初心な事を言うつもりはない。ただ、こうして縛り上げられる私を見て、或いは縛り上げるというその行為自体に、彼も興奮しているのだと思うと、なんだかすごく、嬉しくなったのだ。

「できた。・・・ああ、本当に素敵。美しいね。完璧だ」

そうして私は立ったまま、片脚だけM字開脚にしたような形で吊るされたのだった。

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極楽ちどり
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