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ハラスメント解説(カスハラ5)〜カスハラ独特の行為とは〜
特にカスハラで特徴的な「土下座」、「拘束的な行動」と「従業員個人への攻撃」について具体的に見ていきたいと思います
1. 土下座の強要は犯罪行為
ドラマなどで「土下座して謝れ」と迫るシーンを見たことがある人も多いでしょう。特に、ドラマ『半沢直樹』では、香川照之さん演じる大和田常務が、堺雅人さん演じる半沢直樹に執拗に土下座を要求する場面が話題となりました。
土下座は日本の武家社会において、そのまま斬首されても依存は無いという最大限のお詫びの意思表示だったとのことです。韓国にも類似の文化があると言われています。個人的には土下座されてもかえって困ってしまいます。また、土下座要求する方は何を実現したいのか理解不能です・・・・。価値観はそれぞれですが、土下座を求める側の心理としては、相手を屈服させたいという支配欲や優位性を誇示したいという意図があると考えられます。しかし、謝罪を強要しても根本的な問題解決にはなりません。いずれにせよ土下座を求める行為は、強要罪(刑法第223条)に該当する可能性があります。
2. 拘束的な行動の危険性
拘束的な行動とは、以下のような行為を指します。
店舗や窓口に長時間居座る
訪問した事業者を長時間拘束する
電話を切らせない
法律上、「長時間」の明確な基準はありませんが、多くの企業では「1時間以上座り続けた場合は退去を求め、それでも応じない場合は警察に通報する」といった対応をマニュアル化している企業もあります。
拘束的な行動は、不退去罪(刑法第130条)、監禁罪(刑法第220条)、威力業務妨害罪(刑法第234条)に該当する可能性があります。
例えば、2021年には、ある携帯ショップで顧客がクレーム対応を理由に数時間窓口に居座り、業務の正常な運営を阻害した事例がありました。このケースでは、店員の退去要請を拒否したため、不退去罪が適用されました。
企業側が毅然とした対応を取ることが重要ですが、一方で従業員個人としては、毅然とした対応を取ることは、お客様をより怒らせてしまったり、そのことで会社全体に風評被害が及ぼしてしまうのではないかと躊躇してしまいます。従業員個人にその判断を委ねるのは酷な状況です。そのため、会社として明確な対応方針を策定し、ガイドラインやマニュアルを整備することが求められます。これがない会社は、個人に非常に酷な判断を強いている状況と変わりありません。
3. SNSを利用した従業員個人への攻撃
SNSの普及により、従業員を標的とした誹謗中傷が増加しています。具体的な事例としては、
店員を名指しで中傷する投稿
従業員の顔写真を無断でSNSに公開
対応の様子を無断で録画・録音し、拡散
過去には、ある衣料品店で女性客が商品の不備を理由に店員に土下座を強要し、その様子を撮影してSNSに投稿した結果、強要の疑いで逮捕された事例がありました。
こうした攻撃から従業員を守るため、企業の対応策として以下のような取り組みが進んでいます。
ネームプレートにフルネームを記載しない:個人情報の保護
仮名を使用:外部から特定されにくくする
SNS監視ツールの導入(楽天): ネガティブな投稿を発見し、削除依頼や法的措置を実施
カウンセリング窓口の設置(ソフトバンク):従業員がSNS上で嫌がらせを受けた際の対応策
従業員への誹謗中傷や無断撮影・投稿は、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性があります。また、刑法上の犯罪ではなくとも、肖像権の侵害として不法行為に該当するケースもあります。
まとめ
企業としては、従業員が迷惑行為によって人格や尊厳を侵害されることがないよう、適切な防止策を講じる必要があります。従業員個人に過度な負担をかけるのではなく、組織として一貫した対応を取ることが、カスハラ対策において重要なポイントです。。
出典:
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
000915233.pdf
厚生労働省「職場におけるハラスメント 対策パンフレット」
001338359.pd
厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシャルハラスメント対策は事業主の義務です!!」
0000137179.pdf
あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-