あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(4)
「ごめん、そうだよね。
私、ひどいよね。」
嘉久は私と顔を合わせず、ソファーに座ってしまった。
私だって夕飯を食べていない。
理久にご飯を食べさせ、お風呂に入れて、歯みがきして、寝かしつけたら一緒に寝落ちしていた。
嘉久と夕飯を一緒に食べようと思っていたけど、疲れて寝てしまったんだ。
それって、そんなにダメなことなの?
ソファーに腰を下ろし、テレビをつけた嘉久の背中からピリピリとした空気が出ている。
私が悪いのか分からないけど、嘉久を怒らせたことは悲しい。
だから、私は乾いた喉から、どうにか声を振り絞って「ごめんね」と言った。
嘉久に聞こえるくらいの大きさの声が出せたけど、嘉久は聞こえないふりをしている。
壁の時計を見ると、12時を過ぎていた。
気持ちが夜の闇に沈んでいくみたいだ。
嘉久とのこういうやりとりが三カ月くらい続いているだろうか。
涙が出る。
今日はおしまいだ。
寝室に戻って、寝ている理久を起こさないようにそっと抱きしめる。
嘉久とはタイミングをみて、一度ゆっくり話し合わなければならないと思う。
理久のためにも。
(つづく)