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英詞で読み解く藤井風の世界 VOL.8

第八回目は「 死ぬのがいいわ」です。

魑魅魍魎が跋扈(ちみもうりょうがばっこ)しているような何とも不思議な音の世界にきらめくピアノの音の粒がこぼれていくようなイントロで始まるこの曲。

藤井風さんの曲にはよくあることですが、なぜこの美しいメロディに、こんなにも衝撃的な題名を付けたのでしょうか。

何とも挑発的で魅力的なこの曲の歌詞の世界に、Kazenglishの視点から迫ってみたいと思います。

【I'd rather die.】
まずは題名からです。
"I'd rather die." は「 死んだ方がまし」という意味なのですが"rather"を使うことで、日本語よりもその理由が強調されるような気がします。
元の歌詞から見ると「死んだ方がまし 」な理由は、「 あなたとこのままおサラバするより」ですね。
ところが、英語訳では"I'd rather die"の理由の部分が
"I had to keep being separated from you like this."
「あなたと離ればなれになっているこの状態がずっと続くのであれば 」
となっているのです。
日本語ではたった一言「このまま 」と言っているけど、英語詞からはもっと詳しい状況が伝わってきます。

【英語でしかわからないこの部分】
「 そんなダサいこと もうしたないのよ」さて、この部分は、英語ではどうなっているのでしょう。
“I’m sick and tired of repeating that same old cliché.”
「 古くさい決まり文句を繰り返すのにうんざりしている」
ここで!!
"same old cliché.”
を使うKazenglishのセンスの良さよ!
(小机 "tiny desk"をバン!)
ハッ!
メガネ落ちた!

"cliché”とは「常套句」という意味のフランス語で
「ありきたりな文句や言い回し」のことを指します。
「 ダサいこと」とは「 古くさい決まり文句」を繰り返すことなんだ、って英語で説明してくれているのです。
そして、人というものは「 そんなダサいこと」を何度も何度も繰り返してしまうものなんだ、っていう真理にもつながっていくのではないでしょうか。

【魑魅魍魎が跋扈する】
「魑魅(ちみ)」は山にいる化け物や山の神さまを「魍魎(もうりょう)」は川や沼にいる化け物や水の神さまを意味する言葉だそうです。

簡単に言うと(最初から言え)つまり、
「 自分の欲を満たすために獣どもが飛び跳ねてる」ってことです。
私は、この曲のイントロにある鳥や獣の鳴き声のような音からこの言葉を連想してしまいます。
「 自分の私利私欲だけに走る獣のような叫び声」を、人間のどうにもならない醜さと、何度も何度も間違いを繰り返してしまうさまに、なぞらえているのではないかと。
そしてこれが後に
「 野ざらしにされた場所で、ただ漂う獣」
「 同じことが何度もただ繰り返されるだろうと安い夢を生きてきた」
「 何度も何度も墓まで行って」
などに繋がっていくのではないかと思うのです。
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【ただのラブソングであるはずがない】
以前、友人のリコちゃんのInstagramのポストで、もしかしたらこの曲は、特定の恋人に向けてのものではなく、自分の中にいる「 神さまみたいなもの」に捧げる曲ではないのか?という考察がありました。

この世で一番変わることのない愛をくれるのは誰?と、鏡を覗けば、そこに映っているのは自分。

No need to ask cause it's my darling
聞くまでもなく私のダーリンよ、
ってそれはハイヤーセルフのこと?
3度の飯よりあんたがええ、って言うのが宗教上のラマダン(断食)みたいなものを指すのだとしたら?

そしてその思想が、
Michael Jacksonの"Man in the mirror"に繋がるようなものだとしたら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
本当のところはどうなの??
と、藤井風さんの両肩を揺すぶって聞いても、多分こうおっしゃるでしょう。
「 わからん。ドンキの帰りにフレーズが降りてきた。」
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人に運命があるとすれば
楽曲にも運命というものがあるのでしょうか。
この曲が藤井風さんの元を離れてアジアに、世界に、自由に踊るように羽ばたいて行ったのは曲そのものが持つ運命だったのでしょうか。

そして、もしも藤井風さんの音楽が存在しない世界があるとするならば
私たちにとってそれは文字通り
「 死ぬのがいいわ」

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