英詞で読み解く藤井風の世界 VOL.6
【英詞で読み解く藤井風の世界】
第六回目は「 調子のっちゃって」です。
「 この美しいピアノの旋律で始まるこの曲に、なぜこの題名?!」
と思ってしまうような、何とも不思議な魅力があふれる歌詞の世界に、Kazenglishの視点から迫ってみましょう。
【Oops I pushed My luck】
まずは題名からです。
「調子のっちゃって」を英語にすると、普通には
"You got carried away."
となると思います。
相手に「調子に乗らないで」と言うならば
"Don't push your luck."
などと言う表現が使われることもあります。
しかし、この曲では
"Oops
おっと
I pushed my luck
私が自分の幸運を押し出しちゃった"
と言うフレーズが題名の英訳になっています。
この英訳から
「 調子のっちゃって」るのは「 あなた」でも「他人」でもなく
「 自分」だと言うことがわかりますね。
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【着色の言葉 無味無臭の心】
これはいったい、どう言う意味なのでしょうか。
意味がよくわからない時は、そう、英語訳の方に何かヒントがないかどうか見てみましょう。
"Suger coating praise,
Suger free apathy"
この英文は
prise (賞賛) と
apathy (無関心)の二つを対比しています。
それぞれを説明する言葉は
「 お砂糖でコーティングされた」
「 甘味抜きの」
つまり
着色の言葉=表面だけ砂糖衣をかけた賞賛
無味無臭の心=甘さのない無関心
と英訳しているのです。
日本語の歌詞では色と香りで投げかけておいて、最後に英語訳で味覚を使って落とし込む、と言う、この技!
初めて見た時、舌を巻きました。
何と言う洒落た言い回しなのか!
やるな!おぬし!(だから誰?)
【当たり前なんてない】
There is nothing I can take for granted
(※ take for granted =当然だと思う)
そう。
例えば、病気にかかって初めて、健康のありがたさや、周りの人々の深い愛情に気づいて
「 当たり前なんてないんだな」と心から感じた時、この英語が心の中をピッタリと表現してくれるのだと思います。
【はみ出したったモノを隠す場所もない】
はい、これは何を意味しているのでしょうか。
まさか!
でも・・・ライブなどでもそんな感じの振り付けで歌っているような??
では、英語訳の方を見てみましょう。
No place to hide that sticking-out 'thing' of mine
No place to hide
隠すための場所はない
that
それを(なにを?)
sticking-out
飛び出た
'thing' of mine
私の「もの 」
うーん!
しかし、もちろん、これは、ギリギリのところを狙った比喩なのだと思います。
「 私はすごい!私が!私が!」という自我の本能を「 私のモノ」に例えて比喩しているのではないか。
そんな尖った心を隠すこともできない。
なぜなら
「 調子に乗っているから」
しかも、かっこいいと思っている服は実は透明で中身は丸見え。
だからこそ「 はみ出した自我」をも隠すところがないのではないか!
感服です。
ふっ。
君の勝ちだよ、
藤井風さん。
(いや、元から戦ってないから)
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ああ!
これがシングルカットもされていないアルバムの中の一曲だなんて!(またか!)
藤井風というアーティストは、私たちが思っている以上に、恐ろしいほどの才能を持つ人だということは間違いありません。
はい、もう、分かってますけどね!