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音空間探訪記①~CAFE LA RUCHE編~

早速ですが私は音空間マニアです。

「その空間で音がどのように使用されているかに異常な関心を寄せる人」
今作りました。このBGMここの雰囲気に合うよねという話は全体の2割くらい(個人差があります)のウェイトでしかなく、むしろ本題は選曲以前にあります。

「その空間では音をどのように聴いてもらいたいのか?」
まずこれがあるべきだし、ここが明確であれば選曲だけじゃなく色んな部分に表れているはずです。

このnoteは、昔大学でそれをやろうとしたところあまりの同志の少なさに「こんなもん一生かけたって大した基礎研究にもならんじゃねーか!やーめた」と言って放り投げた私が細々と事例集めをしていくnoteです。
性癖に刺さった場所があれば記録していきます。

概要

1回目にご紹介するのはCAFE LA RUCHEさんです。

お店に許可をとっているわけでもないので写真等は載せませんが、出来る限りどんな点が素晴らしいのかお伝えしてみます。
スピーカー配置図がこちらです。

カフェ内のスピーカー配置図

客はレジカウンターで先に注文をして商品を受け取ってから、奥の客席・デッキ席に移動します。デッキ席は金鱗湖という観光地が一望できるようになっています。

なにがすごいのか

まずはスピーカーの数。BOSE 5発、それより小さいやつ(便宜的に緑とします)2発。決してバカでかい広さではないので単に音を届かせるだけならこんなに要りません。

単に音を全体に届かせるだけならこんなに要らないんです

これは重要です。なぜなら予算的にはできるだけ少ないスピーカーで事足りるのが正解だからです。ところが音空間的にはできるだけ多くのスピーカーで1発あたりのカバーエリアを小さくするのが正解です。音圧のムラが少なくなります。
なので、音空間マニア的にはまずスピーカーがどれだけ設置されているのかはチェックポイントになります。

そのうえで、配置図見てください。
レジ周りの層が厚いことにお気付きでしょう。
そもそもレジでのやり取り+人口密度の高いレジ列があるのでガヤガヤ感が高いエリアです。加えてレジの後ろには厨房がありBGMでない作業音が発生します。ここにいるお客さんにも聴いて欲しければ、配置はこうです

放音方向

単にスピーカーが多けりゃいいってものではなく、音が厚くなっているべきエリアが厚くなっていることも必要なわけです。

さらに個人的興奮ポイント。緑の使い方です。
あえてスピーカーの種類変えてきてますね~

「全部BOSEだと何がだめなの?」てことなんですが、仮に2発の緑がBOSEだったとすると、出入口入って左手にBOSEが1発あるので出入口付近が明らかに音圧過剰になります。レジ側に放音されてる方も、BOSEならたぶんパン選んでる人がうるさいでしょう(これは、パン選ぶ人に対してそこまで大きく聴かせないという配慮も含むかも)。
そういうわけで、上手くカバーしながら主張しすぎないためにスピーカーの種類を変える、いわゆる「添えスピ」をしとるわけです。

えっとじゃあデッキ席側の客席はどうなの?てことなんですけど
先ほど書いた通りデッキ席の外は湖なので、眺めながらのティータイムになるんですが運の良いことに私デッキ席に座ることができました。

デッキ席、BGM流れてる感ゼロです。

一切聞こえません。これはわざとでしょう。
湖は時間帯によってはけっこう神秘的な姿になります。

「その姿を音で味付けしない」意志もそこに見て取れます。かっこいい。
ですから、屋内客席側のスピーカーはBOSE 2発のみであることによってデッキ席には音が漏れないんですねー。粋すぎません?

気になるBGM内容

全く音の内容に触れずにここまで書きましたがやぱpり素晴らしいですね。書いててまた興奮してきました。
さてじゃあこの鼻血配置で何が流れてたのかというと、これまた素晴らしいことにピアノアンビエントなんですね。

ピアノアンビエントというのはこんなやつ

一口にピアノアンビエントと言っても色々ありますがCAFE LA RUCHEさんで流れてたのはこのハロルド・バッドみたいな音数の少ない純然たるピアノオンリーアンビエント。
カフェでこういう選曲もなかなかトリッキーです。こういう音楽的にも圧の少ない内容だからこそ、前述のスピ-カー論理が効いてくるわけです。

つまり、明らかに流す内容に即したスピーカー配置なんです!

残念ながら本当は何を流していたのかは分かりませんでしたが、店員さんにお聞きしたらオーナーはかなりこだわって選曲や店作りをしていたとのこと。ええ分かりますともそうでしょう。

満足

ここまで1,874文字書いてきたようなことを一切知らないとしても、いやむしろ知らないからこそ、ここを訪れる人は無意識に心地良い空間だと思うことができているんです。
私は音空間マニアとしてそのこだわりを見せて頂き大満足です。何の関係もない店員さんにお礼言いました。

そんなにポンポン見つかるかは分かりませんが、こういう事例をこれからも収集し続けていきたいという決意とともに初回を閉じさせて頂きます。
ありがとうございました。

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