『やめとけ!チキンマン』2nd Season第14話(最終回)「呪われた騎士伝説」
剣はチキンマンの喉すれすれで止まった!
「さらばだチキンマン!」
岸ノ里(きしのさと)からやって来たというその剣士は
自分を「里の騎士」と名乗った!
里の騎士は岸ノ里に中世から続く名門一族の一人だった!
彼は各地を旅して
その土地その土地の戦士に決闘を挑み
すべての相手を倒す事が宿命とされていた!
中崎町に現れた里の騎士はチキンマンに決闘を申し込んだ!
しかしチキンマンは
「悪い事をしていない奴とは闘えない!」
と言って決闘を断った!
そうでもない時もあったはずなのだが
この日はそんな風に言ってみたのだ。
そこで里の騎士は百合子を誘拐して
幽霊が飛び回る廃墟の病院に隠した!
割と怒ったチキンマンは里の騎士との決闘を受け入れた!
ところが剣の道を極めようとする里の騎士に対して
ハリセンで挑んだチキンマンにそもそも勝ち目などない!
「くそう!
YouTubeでチャンバラトリオの動画を4つも見たのに!」
いよいよチキンマンに最後の時が来たようだ!
「この私にそんな物で挑んだ勇気は讃えよう!
だが命はもらう!
それが私の一族が私に課した使命だ!
貴様が死んだ後で百合子は解放する!
だから貴様は安心して天国に行くがいい!
では!
さらばだチキンマン!」
里の騎士が大きく剣を振りかざした時にチキンマンが言った!
「最後に!」
剣が止まった!
「最後に一つだけお願いがある!」
「・・・聞こう!」
「その仮面を取って顔を見せてくれないか?」
「むむっ!」
「せめて自分を殺す相手の顔を知っておきたいんだ!
どうだ?里の騎士よ!
顔を見せてくれ!」
「そ!それはできん!」
「どうしてだ?」
「・・・長い話になる。」
「死ぬ人間は時間なんか気にしないぜ!
教えてくれ!」
里の騎士は剣を降ろして地面をじっと見た!
「・・・教えてくれ里の騎士!」
里の騎士は深くため息をついて話し始めた!
「私には3人の兄と3人の弟がいる!
7人兄弟みんなが剣士として育てられた!
私はその中でも一番優秀な剣士だ!
だが!
だが私は!
あまりにもみにくい顔でこの世に生まれてしまった!
私の一族は名門だ!
みにくい顔の息子がいる事を
岸ノ里の人々に知られてはならない!
だから親は私にこの仮面をかぶらせた!
決して脱いではならないこの仮面をな!」
「なんて事だ・・・。」
「どうだチキンマン!
それでも私の顔が見たいか?」
「・・・。」
「私のみにくい顔が貴様の見る最後の物になるぞ!
それでもいいのか!」
「・・・ああ!」
「ならば見せてやる!
幼い頃にはいじめられ!
ののしられ!
石を投げられた!
決して誰からも愛される事のなかった
このみにくい顔を!
さぁ見るがいいチキンマン!」
里の騎士は仮面を脱ぎ捨てた!
すると!
「・・・え?
・・・あれ?」
「どうだ!このみにくさに吐き気がするだろう?」
「いやいやいや!
え?
すごく!」
「すごく何だ?」
「すごくいい顔じゃないか!」
「な!なに?」
中崎町商店街の人達がその様子を見た!
「あ!なんか楽しそうな顔の人がいる!」
「愉快そうな奴だな!きっといい奴だ!
友達になろうぜ!」
里の騎士はとても驚いた!
「うちに遊びにおいでよ!」
「うちのお店でご飯を食べていきなよ!」
みんなが優しい言葉をかけながら里の騎士に寄って来た!
里の騎士はなんだか涙が出てきた!
「ファンになりました!一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「うちの娘と結婚しないか?」
「うちの会社のCMに出て下さいよ!」
「自伝を出版しましょうよ!」
あまりにみんなが優しいので
ついには大きな声を出して泣いてしまった!
すると小さな子どもが寄って来て言った!
「ねぇねぇ!泣かないでよ!
僕のチキンマン人形を貸してあげるから
もう泣かないで一緒に遊ぼうよ!」
里の騎士は涙をふいてチキンマンに言った!
「すまないチキンマン!
私は間違えた半生を歩んでしまったようだ!」
「みたいだな!」
「なぁチキンマン!」
「なんだ?」
「しばらく・・・しばらく中崎町で暮らしてもいいか?」
チキンマンが返事をする前に
中崎町商店街のみんなが歓声をあげた!
「中崎町の平和を守ってくれるのか?」
「この人達のためならば喜んで命を捧げよう!」
みんなは里の騎士にいっぱいいっぱい拍手をした!
里の騎士はいっぱいいっぱい笑顔になった!
これでいい!
そう!
これでいい!
なぜならチキンマンは
もうすぐ中崎町を離れなければいけないのだ!
(2020年4月8日)