顔から火がでそうなあの恋

記憶は小学3年生の頃までさかのぼる

わたしは可愛い女の子とは言いがたく

見かけ云々というよりも
行動が女の子ではなかったとゆうか

男の子とゆうか

好きな女の子にいけずしてその子に嫌われる
そんなことがしたいんじゃないのにー!

てタイプの男子

好きな男の子にいけずする女子

悪口を本人にいってしまう

なんて不器用なやつ

わたしの好きな男の子は
顎がしゅっとした形をしてたので
逆おにぎりのような可愛い顔の形をしていた

もちろん好きな相手だからそれさえかっこよく思ってた

でもわたしの口から出るのは
「おにぎり~~!」と呼ぶことだった

(死んでるコミュニケーション)

小学生のことなので
クラスの半分以上の女子はそのかっこいいおにぎりくんのことが好きだった

もちろんおにぎりくんは足が速くて
リレーでみんなが歓声をあげていた

まぁそんなアイドルを
「おにぎり~」と呼ぶわたしは
浮いていた

クラスで彼を「おにぎり」呼ばわりする女子は
わたし一人だった


もちろんそんなあほな愛情表現を
彼は喜ぶわけなく
悪口みたいなあだ名を言い返すために
「おむすび」とわたしを呼んだ

不器用すぎるわたしは
「おむすび!!可愛いじゃないか!」と思っていた
(なんだか不憫!)

「なによ!おにぎり!」とラリーを続けていたけど

わたしにとって
「おにぎり」
「おむすび」
と呼び合うことはひとつのコミュニケーションだった

自分たちだけのあだ名みたいで
おにぎりとおむすびなんてペアみたい!と
少し喜んでさえいた

妙にポジティブでこわい

こじらせていたわたしは
そんなコミュニケーションしかとれなかった

そんなとき事件は起きた

いつものように
彼を「おにぎり~」と呼んでいたら

「おにぃちゃんをいじめるな!!!」
と立ちはだかる少年がいた

おにぎりブラザーだった

小学1年生の赤い名札をつけた
彼の小さい弟は

2つも上のわたしに向かって
彼をかばってみせた

彼は弟に困ったみたいに笑っていた

「、、!!」
いじめてないのに!

「いじめてないし!うるさい!」

小学3年が小学1年にむきになって、だ

もはや書いていて怖いが

優しい彼は
さすがに怒って

めっちゃ喧嘩になった、、、!

とにかく取っ組み合いのけんかになって
ついには好きな男の子にひっかいたりした

帰ってからのわたしは死んでいた

なんでこんな事しか言えないのか
なんでこんなに怒らせるのか
嫌われてしまうショック

自分で巻いた種だけに
なんで上手く出来ないの?と

さすがに嫌われたと思ったし
学校でももう口も聞けないと思っていた

次の日彼は教室でわたしの机の横に立った

「ちょっと廊下に出てよ」

わたしは廊下で殴られるんだ
とか
廊下で暴言を吐かれるのかも

頑なに「いきたくない」
と答えた

何度かその問答を繰り返した後

「ごめん!」

と一言投げるようにおにぎりくんは言って机を離れていった

驚きすぎて唖然としていた

要するに彼は昨日の取っ組み合いを謝ってきたらしかった
女の子に手を出したことは喧嘩でもよくないのだとお母さんに怒られたのだそうだった

そして素直に謝ってきたとゆうのだ

やられたからやり返す

言われたから言い返す

気を引きたいからきつい言葉を話す

そんなわたしは謝られた後

素直に廊下に出れなかったこと
わたしもごめんと言えなかったこと
素直に謝られたあとのなんとも言えない気持ちを味わったこと

様々な気持ちでいっぱいで
うつむいて座ったままだった

後のことは覚えていないけど
クラスもバラバラになって
「おにぎり」とも「おむすび」とも言わなくなって
足の速い人をかっこいいと思わない年になって
大人になって 
結婚もして

素直に謝ることなんて

いまでもめっちゃ難しいと思う

けど悪いと思うとき
気恥ずかしさや

なんだか敗けを認めたようなおかしな敗北感を感じながら
でも素直に悪かったと思えることは

悪くない!
と主張を続けることよりずっと大人だと知っている

むちゃくちゃだったわたしを
わたしはいまも少し可哀想にも思うけど

でもこうして大人なった

あの恋は今思い出したって
むちゃくちゃで不器用で
居たたまれない気持ちになる
(なぜならもっとおにぎりエピソード意外にもいろいろあったから)


あの頃のわたしに会いに行けるなら
「これマジやめとけ!後悔するぞ!」
とか
「こうした方が絶対いいって!」 
とか
優しく教えてあげるけど

でもやっぱり不器用だったから
自分ではっと気づいたことや
他人との人それぞれの違いを考えるようになって
生きた気もする

もちろん幼くっても
悪口でコミュニケーションをとることは
間違えてたんだけど

体当たりで学んだこともあったな
とも思う

あの恋は
そのひとつだったのだと思う

窓際のちっち

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