中華料理屋でラーメンを食べる。
「夏の暑さがきびしい季節になってきました」
冬の風の冷たさから逃げるように入った中華料理屋でラーメンを食べ、憂さ晴らしに酒も飲んでしまおうかと壁の品書きを眺めていると、そんな季節はずれの書き出しではじまる新メニューのおしらせが貼られていた。
この店はまだ夏のままなのだろうか。カウンターの向こう側で麺を茹でる店主も、上着を脱いで汗をふきながらチャーハンをかきこむビジネスマンも、この秋に起きたことなんてひとつも知らないのかもしれない。
そう思うと酔いにまかせるのもなんだか馬鹿らしくなり、そのまま勘定を済ませて外へ。夏にすっかり暖められた身体に冬の風がきもちよく刺さる。
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