戦争はしません
良いこともあるが、なかなかズーンと来ることも多かった金曜日。
職場で鞄の整理をした時に、机の上に読みかけの本を読んだら少し食いつかれた。本は北丸雄二の「愛と差別と友情とLGBTQ +」。食い付かれるのは良いのだが、食い付き方がなんとも居心地が悪い。「難しそうな本ですね。Tってなんでしたっけ?トランスジェンダー?あれ、でもこれって全部の総称じゃなかったでしたっけ?」そう言われてわたしも何故だかパニックになってしまい慌てて検索してから、身体的な性別と性自認が違う人のことだと説明する。すると「それってレズビアンとゲイですよね?」と言われて、違うよ!!と返す。周りに他のスタッフもいるし、彼等の性的嗜好だって知らないし、この話この方向で広げるの気まずいな〜と思いながらテンションを下げていく。すると更に「わたし大学の時に同姓愛の研究をして、アンケートを取ったりしたんですよ」と重ねてきた。いや研究していたのかよ、と思いながら歯切れの悪い返しをしていたら「同姓愛はありか、なしかってテーマで」と言われて、へ……?となる。「ありかなしかって、どういうこと…?」と聞くと、なんともよくわからないモニョモニョとした返事が返って来て、微妙な雰囲気のまま会話が終わった。ものすごく、気持ち悪いモヤモヤしものが残り、この後何度もこの会話を思い出してしまう。
仕事の後は夜、夫と映画を観に行く予定だったので、その前に映画館と同じ中央線沿いにあるギャラリーに行く予定だった。今までで2回、小さな鳥のオブジェを買っていた作家さんの個展が開催されているからだ。しかし、ちょうど乗り換える直前、数駅隣で人身事故があり中央線が運転見合わせとなってしまう。ほー、どうしようかと思い、定期券内のその駅で降りて今っぽい感じのオシャレで大きい本屋をふらふらしていると、アイヌに関する書籍のコーナーに辿り着く。あれ、これ気になってた本じゃなかったっけと一冊手に取りパラパラと捲ると、これは買うしかないと即決。漫画とコラムが交互になっていて読みやすく、アイヌだけではなくあらゆるマイノリティーに纏わることに触れられているようだ。漫画部分を軽く読むと「この学校にLGBTQ +なんていないよね〜」と言っている同級生を目の前に、アイヌもそうやってネット上でいないことにされている問題に動揺する主人公が描かれていた。
1時間経っても電車は動きそうにないので、ギャラリーへ行くのは諦め、本屋の隣にある中国茶のお店に入った。以前から気になっていたお店、ジャスミン烏龍茶がとても美味しかった。こんな時間の過ごし方も良い。今回の展示には縁が無かったと言うことで、また次回。
そこから映画館へ向かい、併設のカフェで夕飯を食べた。夫は帰りのバスがなかなか進まず映画の時間に間に合わないということで断念。残念だがひとりで観ることになった。
ドキュメンタリー映画「ひめゆり」。言わずと知れたひめゆり学徒隊の映画だ。ひめゆりの女学生たちの生存者の証言を纏めている。亡くなった女学生の写真が何枚も映し出され、ひとつひとつに、どんな人柄だったか何部だったのか、口癖などが添えられていた。あまりにも美しく若い少女たちが……一体どういうことなんだ、と打ちひしがれ冒頭から涙が止まらなかった。生存者の回想は想像を絶する恐ろしい出来事が淡々と語られ、そのことから、彼女たちが感情を奪われていたことがわかり、戦場の恐ろしさを実感した。映画はものすごく長く感じた。この映画は2006年公開だが、そこから18年間毎年6月にポレポレ東中野は上映を続けているらしい。素晴らしい。映画後は映画監督の公私共にパートナーでもある女性の登壇があり、戦後のひめゆり生存者の苦しみを語ってくれた。辛かったけれど、行ってよかった。
わたしは戦争しません。
金曜日はそんな感じです。