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暁山瑞希の話をしよう

※注意※
この記事では、「荊棘の道は何処へ」を含むユニットストーリー・イベントストーリーのネタバレを多分に含みます。ご注意ください
未読の方は今すぐブラウザバックの上、該当のイベントストーリーを読んでください!!お願いします!



 久しぶりにnoteを書いています。
 プロセカの最新イベント「荊棘の道は何処へ」を読了し、居ても立っても居られず執筆を始めました。今回のイベントで大きく一区切りを迎えた暁山瑞希の問題について、自分自身の考えを整理するためにもつらつらと書いてみようと思います。長いです。ニーゴに関連するストーリーは全て読んでいますが、見落とし等は当然あり得るのでおかしな点などありましたら教えてくださいませ。

今回の記事の目次はこちらです。


暁山瑞希の抱える悩みとは何か?

 今回は主に最新イベント(以下、『荊棘』)の感想を書いていこうと思うのですが、『荊棘』の話をする上で整理しておかなければならない問題があります。それは、暁山瑞希はいったい何に対して、なぜ悩んでいるのか?ということです。

瑞希の秘密

 プロセカのストーリーをある程度追っている方なら誰しもご存じだとは思いますが、瑞希の抱える秘密、もとい悩みの原因は性別(ジェンダー)にあります。

※念のため書いておきますが、私はジェンダー問題一般についてはまったくの素人で語る資格を持ちませんし、そういった話をする意図はありません。あくまで「暁山瑞希」という1キャラクターにかんする解釈だと認識いただきたいです。

 後述しますが、『荊棘』のストーリーでついに「暁山瑞希の身体的性別は男性である」ことが明言されました。ただ、『荊棘』以前のストーリーにおいても、間接的に瑞希が(戸籍上、身体的には)男性であることが示唆されてきました。中学時代の制服のブレザーはその最たる例かと思います。


 

瑞希はリボンやレースなどの可愛いものが大好きなのに、身体的性別が男であるが故にそれらを身にまとうことが「異常」とされてしまう。このことに、瑞希は幼いころからずっと悩んできました。

 瑞希の悩みについて、まず言っておきたいことがあります。それは、現在の瑞希は「自身の性別そのものについては悩んでいない」ということです。そこについて悩む段階は、瑞希はとうに乗り越えていることがうかがえます。

 そもそも、暁山瑞希のアイデンティティにおいて「性別」は重要ではない、性別そのものの区分にはこだわっていない、というのが適切でしょうか。瑞希は作中でもたびたび「ボクはボクでいたいだけ」という旨の発言をしますが、ここからも分かる通り瑞希はあくまで「大好きなカワイイものを身にまとって、自分らしく楽しく生きていきたい」と願っているにすぎません。好きなものを身に着けることに、性別による制限をかけられたくない。自分の体や心の性がどんな区分であろうと関係なく、自分の好きなことに忠実でいたい。瑞希の願いはここに集約されるように思います。だから私は暁山瑞希を「男の娘」と表現することには強い違和感、そして嫌悪感を感じます。暁山瑞希はあくまで「暁山瑞希」なのです。



 (作中で明確に描写されていないのでわかりませんが)瑞希は別に「自分が男であることが嫌だ、女の子になりたい」と思っているわけではないような気がします。

 ただ、瑞希もはじめからこの問題に悩んでいなかったわけではありません。『変わらぬあたたかさの隣で』で描かれていた通り、幼少期の瑞希は「自分がカワイイものを身に着けてはいけないのだろうか、(男の子なのに)カワイイものが好きな自分はおかしいのか」と悩んでいました。
 この問題については、瑞希の姉・優希の支えにより、カワイイものを好きな自分に正直でいていいのだ、と思えるまでに至っています。「私は瑞希のことが大好きだよ、瑞希の好きなように生きていいんだよ」と伝え続けてくれる優希は、瑞希にとって大切な理解者であり心の支えとなっています。

 ちなみに、暁山瑞希の性別をどう捉えるべきか?という問題については、素晴らしい記事が既にあるのでご紹介します。これを読めば暁山瑞希というキャラクターへの解像度がより高まると思います。

 

瑞希にとっての人間関係

 それでは、暁山瑞希が真に悩んでいることは何なのか。それは、周囲の人間との関係についてです。これは、暁山瑞希が幼い頃から現在までずっと悩み続けてきた問題です。
 カワイイ服装をすることによって自分自身の心を守ることはできても、それによって他者が瑞希をどう感じるのかはコントロールできません。「自分がカワイイものを着ていいのか」という問題をクリアする前も後も、他者から好奇の目で見られたり拒絶されることを瑞希は何度も経験してきたことがうかがえます。

 瑞希は中学の時点で既に、自分のことをはなから色眼鏡で馬鹿にしてくる人間、好奇の目で見てくる人間にあれこれ言われても受け流せるようになっていることがわかります。言われることの一つ一つに傷ついていては、瑞希の心は耐えられません。自分を理解しよう、尊重しようという意思が感じられない人間に対し心を閉ざすのは、自分の心を守るための防衛手段であると考えられます。

 一方、自分と対等に接してくれると思っていた人、「この人ならわかってくれるかも」と思った人から拒絶されたり理解されないことには、流石の瑞希も堪えます。メインストーリー内でも、仲のいいクラスメイトが自分のいない場で「瑞希は周りに合わせることができない」と話しているのを聞いてしまったときは、落胆する様子を見せていました。

 ただ、瑞希がそれでも他者との対等な関係形成を諦めずにいられるのは、瑞希の抱える問題を知っていても対等に接することができる友人に恵まれたからでもあります。その最たる例が、神代類と白石杏です。

 瑞希が半ば周囲との良好な関係を諦めていた中学時代に出会った類は、瑞希の特殊な事情を(いい意味で)気にかけず、一人の対等な友人として尊重してくれる存在です。実際、中学3年に上がったタイミングで類が卒業してしまったときは、「大切な人が離れることのつらさ」を瑞希は実感しています。

 また、高校で出会った杏も、瑞希にとって対等に接することのできる貴重な友人です。杏が瑞希の事情を知っているか否かは明確に描写されていないものの、クラスメイトに対して自身の性別を隠していないという発言があることからも、クラスの友人である杏がそのことを知っている可能性は非常に高いと思われます。『ボクのあしあと、キミのゆくさき』では、たまたま遭遇した絵名に学校での様子を聞かれた際、瑞希の触れてほしくない話題を避け、その場をうまく収める完璧な対応を見せていました。これについても、瑞希の事情を理解しているうえでの振る舞いと考えた方が自然なのではないかと思います。杏の対人スキルが凄すぎないか???本当に高校生??????

 家族や類、杏たちのように、瑞希は「自身の特殊な事情を知っていてもなお、対等な人間として尊重してくれる」人たちに恵まれています。現在の瑞希は、自分の性別や特殊な事情があっても他者と仲良くできるという成功体験を得られており、時には傷つきながらも他者との関係構築を放棄せずにいられるのだと思います。しかしながら、現在の瑞希には学校と性質を異にする環境があります。そう、ニーゴです。

ニーゴという環境の特殊性

 ニーゴは、メンバーが瑞希の性別に関する事情を知らないまま親しくなった、瑞希にとって初めてといえる環境です。『荊棘』を迎えるまで、絵名・奏・まふゆにとって瑞希は「普通の同性の友達」という認識だったといえます。

 これまで仲良くなってきた類や杏などは、学校という性差が明らかになる環境で出会い、瑞希が特殊な事情を抱えているという前提を知った上でできた友人でした。一方でニーゴの面々は年齢も性別も知らない状態で出会い、現実世界で会うようになってからも事情を隠した状態でここまで深い関係となった友人たちです。この性質は瑞希にとって大きな救いであり、かつ重大な悩みの種となっています。

言っても地獄、言わなくても地獄

 皆さんもご存じの通り、瑞希が直面している問題は「ニーゴの面々に自分の性別に関する事情を打ち明けるか否か」です。そして、秘密を打ち明けても、打ち明けなかったとしても、瑞希の心に負担がかかる結果が待ち受けているのです。

 『シークレット・ディスタンス』において、瑞希は自分の秘密を打ち明けていないことに対する罪悪感を自覚します。これまで何度も他者から拒絶されたり馬鹿にされてきた瑞希は、どこか一線を引いた浅い人付き合いをすることによって自分を守ってきました。しかしながら、ニーゴはいつしか瑞希にとって大切な居場所となり、「これから先もみんなと一緒にいたい」という感情が芽生えます。そんな大切な友人たちに隠し事をしているという状況に、瑞希は後ろめたさをずっと感じています。

 『ボクのあしあと、キミのゆくさき』で、絵名は「瑞希が話せるようになるまで待ち続ける」という結論を出しました。そして瑞希はカミングアウトを保留し、絵名の優しさに甘えるという選択をしました。後述しますが、秘密を打ち明けてしまえばニーゴという関係性は不可逆的に変化します。秘密を話さなければ、今の心地いい場所をずっと守れるかもしれない。そう思った瑞希は秘密を打ち明けないことを選びますが、一方で「話さないこと」による後ろめたさは残り、増幅していくことになります。

 さらに直近では、まふゆが親との膠着状態だった関係を打破したことが、瑞希の罪悪感に拍車をかけました。ニーゴの面々は着実に前に進んでいるのに、自分は逃げてばかりで何も進めていない。このこともあって、瑞希はカミングアウトに向き合わなければ、という気持ちを一段と強めます。

 そしてもう一つ、秘密を打ち明けないことによる弊害があります。それは、「いつかバレるかもしれない、バレたらどうしよう」という恐怖を常に抱えることになるという点です。
 実際、『ボクのあしあと、キミのゆくさき』では、ビビバスの面々に遭遇し秘密がバレる危険が高まったあと、瑞希の精神状態は著しく悪化していました。今後もカミングアウトを保留し続けるのであれば、自分の口から話す前に秘密がバレてしまう危険性と隣り合わせで生きていくこととなります。

 さらに言うならば、「秘密をきちんと自分の口から話したい」というのは、瑞希自身の願いでもあります。『ボクのあしあと、キミのゆくさき』で絵名が真摯に向き合ってくれたことをきっかけに、瑞希自身は「信じてちゃんと応えたい、前に進みたい」と思うようになりました。その後のイベントでも、そういった旨を独白する場面が何度も出てきます。

 しかし、それでも瑞希は話す決心を持てずにここまできてしまいました。それは先ほども軽く触れた通り、秘密を打ち明けることは「大切なニーゴという関係を不可逆的に変化させる」ことになるからです。

 まず、「秘密を受け入れてもらえなかったらどうしよう」という点は、カミングアウトにあたっての大きな懸念といえないのではないかと思っています。
 もちろん、「変なの」と言われてきたトラウマがフラッシュバックしている描写からもわかる通り、その恐怖がゼロであるわけではありません。しかし瑞希はニーゴの面々を信頼しており、たとえ自分が秘密を打ち明けたとしても関係が崩壊することはなく、変わらずにいてくれるだろうと考えています。私たち豆腐の視点から考えても、そうである可能性が高いことは明白でしょう。では、瑞希は何をそこまで恐れているのか。それは、ニーゴのみんなが変わらずに「いてくれる」ということです。「変わらない」では、ないのです。

  瑞希が何よりも恐れているのは、ニーゴのみんなとの関係が「配慮」という文脈に乗ってしまうことです。
 先述の通り、現在のニーゴの面々にとっての瑞希は「普通の同性の友達、特別配慮のいらない存在」です。それはこれまで特殊な存在として扱われてきた瑞希にとって稀有な関係性であり、ニーゴは自分らしくありのままでいられる貴重な場所です。しかしながら、ニーゴの面々が秘密を知ってしまった暁には、その性質は180度転換してしまいます。ニーゴの面々が自分に対し、「変わらないようにしないと」と気遣うようになってしまったら?そうでなくても、自分自身がそう感じるようになってしまったら?
 瑞希は元来察しもいいですし、おそらくニーゴの面々が自分に配慮してくれていることにはすぐに気づくでしょう。そうなれば、瑞希にとってのニーゴという場所は居心地のいい場所でなくなってしまいます。大切な人達で構成された大切な関係だからこそ、自らの手で変質させることは避けたい。そう考えるたび、カミングアウトの決心は揺らいでしまうのです。

 イベントの話に入る前にもう5,000字も書いてしまいました。あらためて瑞希の抱える問題をまとめると、
・瑞希は自分自身のジェンダーというより、それに伴う他者との関係構築に悩んでいる
・ニーゴの面々に秘密を打ち明けても、打ち明けなくても瑞希にとって受け入れがたい結果が待ち受けており、その板挟みで苦しんでいる
ということになります。これを踏まえたうえで、今回のイベスト『荊棘の道は何処へ』の感想を綴っていきます。

イベントストーリー『荊棘の道は何処へ』

 『荊棘』のストーリーは、瑞希が文化祭を期に自らの問題と向き合おうとする場面から始まります。絵名が文化祭に来るかもしれないことを知った瑞希は、これを機会に今まで隠してきた秘密をニーゴのみんなに打ち明ける決意を「固めようと」します。

 ここで気になったのは、一見決意を固めたように見える瑞希の決心が揺らぎ続けていることです。ストーリー内でも、会って話したいという旨のメッセージを打つ手が震えたり、書きあげたメッセージを送れなかったり、「もし来たら」「来なかったら」とあれこれ考えたり……。「話す」と決めた割には、瑞希の行動にはかなりの迷いが見えます。

 このことについて、瑞希は自分の気持ちを完全に整理しきれないまま無理やり前に進もうとしている状態なのだと私は感じました。先述した通り、カミングアウトをしてしまえばニーゴという関係性は(少なくとも瑞希にとっては)変質し、元には戻りません。おそらく瑞希は、それを落ち着いて受け入れるだけの心の準備ができていません。もちろん、無理もないことです。

 そんな瑞希の決心を後押ししたのは、セカイのKAITO、MEIKO、そして類でした。
 KAITOとMEIKOは相変わらずの口調ではあるものの、瑞希の苦しみは「前に進みたい」という意思があるゆえ生まれているものであること、どんな結末になろうと見守ることを伝えます。そして類は瑞希の率直な気持ちを受け止め、友人として瑞希の幸せを願っていると話しました。

 余談ですが、ここで吐露された暁山の心情、これまでのストーリーから私が自分なりに理解してきたことがそのまま書かれていて嬉しくなってしまいました(喜んでいる場合ではない)。

 こうして瑞希は文化祭前日、絵名に後夜祭で話をすることを伝えます。明日でニーゴという大切な関係が終わりを迎えることも覚悟のうえで。つらすぎるだろ。

 文化祭当日、瑞希は「今のニーゴ」でいられる最後の時間を噛みしめるように、4人での時間を満喫します。そして迎えた後夜祭の時間、奏とまふゆを見送った瑞希と絵名はふたりで屋上へ向かいます。そう、1年前の文化祭で皆とつながり、絵名が待つことを伝えてくれた、瑞希にとって大切な場所へ。もう逃げない、大切な友人である絵名に向き合うと覚悟を決めて。

 しかし、急なトラブルで瑞希はクラスメイトに呼び戻され、絵名は一人で屋上へと向かうことになりました。誰もいないと思ったのも束の間、運悪く瑞希と知り合いの男子生徒たちが屋上へやって来て、絵名を見つけます。そして、事態は最悪の展開を迎えます。

 ……みなさん、お気づきでしょうか。これ、『ボクのあしあと、キミのゆくさき』で瑞希が吐露した「叶わぬ願い」が、最悪の形で実現してしまったことになるのです。

 この台詞で言う「誰か」とは、具体的な人物を指すのではなく、いわば神のような、実在しない存在にすがるような意図だったのではないかと思います。本来自身のセクシャリティに関するカミングアウトは、自分自身の口から伝えるものです。しかし何度も先述している通り、カミングアウトは関係性の変質を伴い、これまでとこれからのニーゴを不可逆的に変えてしまいます。そこまでの覚悟を必要とするカミングアウトから逃避したい、そんな思いからぽつりと漏らした弱音であり、本当は自分の口からいずれ話すことになるのだと瑞希自身も心のどこかでわかっていたのだと思います。

 しかし、その瑞希の願いは、考え得る限り最悪の形で成し遂げられてしまいます。ずっと悩んで、覚悟を決め、自分の口から秘密を打ち明けようとした矢先に、絵名は秘密を知ってしまった。しかも、屋上に着いた瑞希を待ち受けていたのは、この表情を浮かべた絵名でした。覚悟を折られ、抑えていたものが溢れ出した瑞希は駆け出します。

 ここで一つ書いておきたいことがあります。それは、男子生徒Aのやったことは「悪意をもった意図的なアウティング」ではないということです。
 誤解のないように言っておくと、この生徒の発言はあまりにもデリカシーと配慮に欠けた最悪な内容ですし、瑞希にとっては結果的にアウティングをされたことになります。当然許されるものではありません。

 しかしながら、男子生徒側の立場になってみると、絵名が瑞希の事情を知っていると勘違いするのは無理もないことかと思います。
・瑞希は学校で自分の性別を隠しているわけではなく、自分たちのようなそこまで親しくない生徒であっても事情を知っている。
・絵名は神高の制服を着ている(定時制の生徒であることも知らない)
・瑞希とは長い付き合いの友達である
 彼らが絵名について得ているこれらの情報からは、「絵名は当然瑞希の事情を知っている」と推測する方がむしろ自然です。彼らからしてみれば瑞希の秘密を暴露しようという悪意はなく、ちょっとからかってみよう、という程度の気持ちによる発言だったと考えられます(何度も言いますが、だからと言って彼らのしたことが許されるわけではありません)。

 私はこの展開、心底恐ろしいと思いました。というのも、何気ない発言やちょっとした勘違いが他人の大切な人間関係を崩壊させる危険を孕んでいることをまざまざと実感させられたからです。
 このシーン、仮に100%の悪意をもって「絵名に瑞希の秘密を暴露してやろう」という意図でアウティングが行われるシナリオであれば、最悪!とは思うものの他人事で終わっていたと思います。しかし、こうした勘違いが生んだ事故(事故というには発言のタチが悪すぎるけど……)であれば、現実世界でも普通に起こり得ることではないかと思います。何なら、自分もこんなふうに他人の大事な秘密を無自覚に漏らしたり、人間関係にヒビを入れてしまった経験すらあるのではないか?と感じ、とても恐ろしかったです。根っからの悪人がおらず、強い悪意を伴わない物語となっているからこそ、よりリアルで、より残酷なストーリーになっていると思いました。シナリオの匙加減がうますぎるだろ……

 若年層のプレイヤーも多いプロセカですが、瑞希の秘密がこのような形で判明する展開がとられたことは、意図があってのものだと思っています。私はただの一プレイヤーに過ぎませんが、どうか伝わっていてほしいな、と思います。

 屋上を飛び出して追いかけてきた絵名に、瑞希は溢れ出る気持ちをぶつけます。絵名の浮かべていた表情はあくまでも驚きや戸惑いであり、自分を拒絶しているわけではない、これからも変わらずにいてくれると頭ではわかっていること。しかし、その優しさを感じてしまうことが、どうしても耐えられないのだと。

 この問題については、仮に瑞希が自分の口から秘密を伝えられた場合にも付きまとってくるものではあります。しかし、自分で頭の中を整理しながら言葉を紡いで伝えるのと、他者から強制的にアウティングをされてしまうのでは、あまりにも状況が違います。男子生徒のあの発言によって絵名と瑞希の関係は強制的に次の段階へ進められ、もう元には戻れなくなってしまったのです。化けの花は咲いてしまい、蕾にはもう戻れないのです。

 今回のイベストは、自棄になった瑞希が「消えたいな」と独白するシーンで終わりました。今後の瑞希が、絵名がどうなるのか?正直なところ、私には現状まったく予想がつきません。ただ、おそらく次に迎える絵名バナーのイベントで何が問題となるのか、最後に整理して終わりたいと思います。

 絵名は『荊棘』のラストシーンで、泣きながら「私は、なんで!」と悔やむ様子が描かれていました。これは言葉を補うのであれば、「私はなんであんな表情をしてしまったのだろう」「私はなんで瑞希に何も言えなかったんだろう」「私はなんで瑞希の苦しみに気付かなかったのだろう」ということだと思います。自分が「瑞希が話したいと思うまで待つ、大切な友達だから真摯に向き合う」と伝えておいたにもかかわらず、いざ秘密を知ってしまった局面で何もできず、瑞希を深く傷つけてしまったこと。想像ではありますが、絵名は強く悔やんでいるはずです。

 さらに絵名は、「優しさがつらい」という瑞希の苦しみを知ってしまいました。これは絵名にとって、相当ショックな事実だったはずです。
 絵名はこれまで、瑞希が秘密を話すことに躊躇う理由を「受け入れてもらえないことへの恐怖」だと想像していたはずです。そして、自分ができることは、瑞希が何を告白してもそれを受け止め、寄り添うことだと信じて疑っていなかったのでしょう。
 しかし、瑞希が真に苦しんでいるのはそこではありませんでした。「優しさがつらい」こんな風に言われてしまったら、瑞希に対して絵名は何もできなくなってしまいます。自分の優しさや気遣いこそが瑞希を苦しめていた、この事実は相当堪えたと思われます。

 次回のイベントでは、絵名がこの傷にどう向き合い、瑞希に何を伝えるのか?ここに焦点が当たることを期待しています。

 完全に余談ですが、ここで真っ先に何もできなかった自分を責め、悔やむことができる東雲絵名のことが私は本当に大好きです。このシーン、鈴木みのりさんの演技が圧巻なので是非ボイス付きで聞いてください。ニーゴの中でも瑞希の問題に向き合う役目を絵名が担ってくれてよかった、と思います(展開的には全くよくないんですが…………)

最後に

 9,000字近く長々と書いてしまった。プロセカのリリースから4年、ついに暁山瑞希の物語が大きく動き出しました。今後、この物語がどう動いていくのか、私には見守ることしかできません。正直次回以降もどうなるのか怖いです。しかし、セカイのMEIKOも言っていたように、どんな結末になろうと、最後まで見届けたいと思いました。(この言い方が適切かはわかりませんが、)4年目のプロセカで紡がれる物語も楽しみです。

 以前に書いたまふゆの記事も、今読み返すといろいろと書き直したり語りたいことがいっぱいありますね……!ニーゴのこと、これからも少しずつ話していきたいです。
 ここまで読んでくださってありがとうございます。


 





 


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