覚書_33
※2019年の5月に書いた記事から
ある朝、ベッドから這うように出たのは9時頃。
ビニールの安っぽいフローリングの床に乾燥しきった踵をついて、家着を脱ぎ捨てたまま風呂場へ向かった。タイル張りの冷たい風呂場に温めた水を撒いて、三日だか四日ぶりに42度のシャワーを浴びた。
シャワーすら浴びれないほどに、忙しかったわけでも体調を崩していたわけでもない。風呂場のドアを開けることができなかった。同じく風呂場にはトイレも置かれ、用を足すためにそのドアを開けることはできたが、目的が変わるとドアノブすら握れなかったのだ。
シャワーを浴びるのが億劫になったのは、五ヶ月ぶりに自宅へ戻って来てからのことだ。水道局へ開栓の手続きを行い、蛇口をひねると尋常じゃない勢いで水が出て来た。シャワーだけではなく、もちろんキッチンも同様だ。
問題はこの部屋へ引っ越して来た六年前にさかのぼる。シャワーを浴びると、風呂場のドアの隙間から水が漏れ出て風呂場にほど近い玄関まで水浸しになってしまうことがあった。その時に家主や不動産屋に相談しておけばよかったものの、元来からの事なかれ主義というよりは面倒臭がりな性格が災いして何も言話ないまま今に至っている。
それでも何とかなっていたのは、シャワーをドア側に向かわせないことで
水漏れを防げていたからだった。
話を戻そう。水圧がマックスになった結果、今までの解決策が通用しなくなってしまった。身体や壁、タイルの床に跳ね返った水しぶきが、ドアの隙間から漏れ出るようになってしまった。シャワーを浴びると、その都度玄関まで水たまりができた。友人を招くことはもちろん、自身が出かける時もその水たまりをジャンプして超えないと外に出ることすら敵わない。
ヨーロッパ帰りだったため、毎日シャワーを浴びないことは苦痛ではなかったが、春が訪れ初夏を匂わせる風が吹く頃になるとそうはいかなくなった。
体を綺麗にしていない事実もじわりじわりと罪悪感に苛まれることになってしまった。
時にシャワーを浴びても、その水圧が頭皮や肌を痛め、肌の角質が厚くなり
頭皮には細かい傷ができてしまった。
※ここから、今日書き足した
解決策としてシャワーヘッドを変えることにした。
大きなヘッドにしたことによって、圧の強い水が分散される。
ひとまず、悩みは解決して、風呂に入れないという沼から出ることができた。
でも、半年くらい経って水圧が下がった。
なんだったのかな、あの苦労は、という話。