ファラケのグッドボタン
「今日は七夕やね、天の川は見えへんわ…」
おとうちゃんが打ちかけのLINEを眺めて、またため息をついている。さっき、おかあちゃんと大げんかして、「ちょっと散歩行くわ」ってわたしを連れておうちを出たけど、おとうちゃんはほんまにウソがヘタや。散歩なんか言うても行くとこなくて、結局コンビニの駐車場でさっきからおとうちゃんはスマホ片手にため息ばっかりや。おかあちゃんが話しかけてるのにちゃんと返事せーへんからこうなるねん、たぶん、お兄ちゃんもそう思うてるはず。さっきおうちを出るとき、お兄ちゃんがコッソリ顔を出して、親指でオーケー👍をやってた。なぁ、おとうちゃん、ため息はええからじゃがりこ買ってーな。
おとうちゃんがいもうとを連れてさっき出て行った。まぁ、あれやわな。優しく話してるおかあちゃんの声がだんだんトンガって来てるのに気付かんおとうちゃんが悪い。いもうとを連れて散歩に行くって言うおとうちゃんをおかあちゃんはガン無視してたけど、さっきからおかあちゃんはスマホをずっと握りしめてる。ボクは知ってるねん。あれはおとうちゃんからのゴメン、を待ってるねん。おかあちゃんがおとうちゃんの話をする時って、悪口やのに、いつも嬉しそうやねん。ボクが思うにあれはホンマにおとうちゃんが好きなんやわな。ボクも大きくなったら、あんな夫婦になりたいわ。これは、これだけは、いもうとと意見がバッチリあう。さっき出ていく時、いもうとにボクのぶんもお菓子買ってきて!のサイン👍をこっそり出した。どうせじゃがりこやろけど、ボクはとにかくお腹がすいた。
あっ!送った!
あっ!届いた!
ちゃんと謝ってやー。
ボクはお腹が空いてるねん。
おかあちゃんのスマホを後ろからそっと覗く…
ゴメスやて!おとうちゃん!大事な言葉、間違うてるやん!あれ?でもおかあちゃんが笑いながらちょっと泣いてるのは何でやろ?
まぁ、ええけど、早くそこのイトメンつくってよー
ほらっ!帰ってきたで!
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大好きなPodcast番組
『ファラケのグッドボタン』へのお便りです。
過去の配信をベースにした創作物語になっています。
読んでいただいた本編はこちらから💁♂️
とても喜んでいただいて、送った私本人が一番感動しています。ありがとうございました。
元ネタとなったけーちゃんさんの名作謝罪文に触れている最高に楽しいエピソードはこちらから💁♂️
このお便りのセンスに脱帽です。
そして今回、ショートの物語を書いてみたのは、このtweetがきっかけです。
と、このtweetも私自身の背中を押すことになります。
元はと言えば…
大人気Podcast番組
『スカシウマRadio』の書き出し小説大会に端を発しています。
この回が刺さりまくっている私
さて。
物語はファラケのお子様目線で描いています。
子供たちは親をよく見ていますが、子供は子供の価値観で、子供たち自身の損得勘定で考え、動くという点を大事にしています。兄妹の連携も、親たちが考える以上にコミュニケーションを取っているのだろう、と考えています。とはいえ、これもお互いの利害が一致するから、を前提にした兄妹連携で、普段は“面倒だな”なんて思い合ってるのかも知れません…。
妹、下の子は、お兄ちゃんより両親の様子を見ていて空気を読むたちのですが、少しだけ、諦観というか、上の子よりもドライな感覚を持っている風に描いています。これは何事も初めて尽くしで、親子共に慎重になる上の子より、いい意味で放ったらかしにされていることで身につく資質なのかな、と。
お兄ちゃんは自称、よく分かっているのですが、少し甘え気味で、分かっているポイントも時に微妙にズレている。そんな性格をイメージしました。可愛い性格です。
関西弁絵本の名作「おこだでませんように」の兄妹の物語に影響を受けている面もあります。
泣かずに読むことが難しいほど、心に刺さる絵本です。「僕のことをちゃんと見てよ!」と不器用ながら必死に訴えるお兄ちゃんの姿に何度読んでも号泣してしまいます。
今回、書いた物語のポイントは、ファラケご夫妻はこんな子供たちの画策に気付いていないところで、けーちゃんさんはけーちゃんさんっぽく、りほっちさんはりほっちさんっぽく、お互いのすれ違いと仲直りの模索に夢中になっていて、お子様達に意識がさほど向いていない、というところです。
意外と子供たちは見ている。
夫婦仲まで。
だってお腹が空いてるんですから…