「GLOBE」の挑戦ー新聞の可能性を探して
朝日新聞の新たな試みとして月2回、月曜朝刊に挟まれるようになった「GLOBE」。世界のどこかで起きている出来事が自分たちの生活にどのように結びついているのか。通信技術の発達に伴い、私たちが知らなければならない日本と世界のこと、グローバル社会の明日のこと、徹底した調査を背景に生きた情報を届けるのがこの紙面の役割である。創設にあたり、意識したことやwebとの関連性、アンケートなど紙面外の活動を通して得た経験談をもとに、これからの「GLOBE」のあり方について考えた。
授業でいただいた「GLOBE」という新紙面。新聞をもっと斬新で「今」という時代を反映した紙面にしよう、そんな心意気が感じられるこの読み物は、一見雑誌の特集記事のような、あまり新聞を読まない読者にとっても読みやすい軽い印象を受けた。デザインも罫線を使用することで崩れることなく、全体的にかっちりした日刊新聞とは違い、広い余白が紙面全体の清潔感や明るさをひきだしている。月2回、濃縮された、それでいてタイムリーな情報を届ける、というコンセプトが紙面の量と発行頻度において、ちょうど良い関係にあると思う。実は私自身、新聞をとらない現代の人々の一員であるわけだが、「GLOBE」を知って以来、グローバルな、そしてリアルな視点を持つ新聞として興味を持つようになった。
情報化社会と呼ばれる現代において「新聞離れ」を深刻にしている要因はなんといってもwebの存在だろう。今までは誰もが自由に情報を発信できることがwebの強みの一つを担っていたが、毎日溢れ出す情報に周囲は少し混乱しているような気がする。確かに回線さえ繋いでいれば、いつでも無料で最新の情報が手に入るのがwebの長所でもあるのだが、同時にその膨大な情報の中から大切なキーワードを選ぶのは自分自身だ。では、新聞を読まない人は沢山の情報の中からどのように記事を選び出していくのだろう?
答えの一つとして挙げられるのは「ヒット数」だ。新聞のように実体がないのがwebの持つもう一つの特徴であり、それ故にどれだけの人がその記事を見ているのかわかりにくいのが初期のwebの問題点だった。すぐに「カウント機能」というものが開発され、どれだけの人がその記事にアクセスしているのかが数字として手元に残るようになった。こうなってしまえば新聞として発行すべき情報も簡単にwebで伝えることができるし、実体がないのである意味「持ち歩きに便利」と思うのも無理がないことではあると思う。
また「最新情報」だけをピックアップして見るといった方法もあるだろう。
よく見るwebサイトに携帯アドレスを登録しておくと、更新される毎にメールで知らせが届くといったようなサービスは、今やどんなサイトでも行われるようになった。
しかし、「ヒット数」にしても「最新情報」にしても、他の選ばれなかった情報と「それ」を差別化したのは他でもない受け手であることを認識し直すべきだと私は考える。
便利なweb環境がそろっていても、未だテレビニュースや新聞などのマスメディアを見る人がいるのは、そこに「編集」という大切な行程があるからだ。
私自身mixiを利用して情報を得ることがあるのだが、ニュースのランキング1・2位を読んでいても、文章力の乏しさや記者の考えの浅はかさに唖然とすることが度々ある。読者の層にも依るだろうが、webのランクはあくまで受け手にとってエンターテイメント性が高かったか、低かったかということで決まっているのではないだろうか。そこにグローバルな視点やリアルな視点、歴史的な考え方が乏しいように思うのは私だけではないだろう。
これからの「GLOBE」が果たす意義はこの情報化社会をいかに受け手にわかりやすく編集するかということに尽きると思う。あちこちで新たに発信される情報をキャッチして相互関係を考えることだと思う。過去から学ぶべきことを新たな情報に付加していくことだと思う。今を読むことが明日を読むことだと伝えることだと思う。
手を加えることによってそこには責任と信頼が生まれる。今でもマスメディアがマスメディアである理由はこの「編集」の大切さを心得た人が集まっているからだろう。
webを利用したリアルタイムの情報発信でも質の高い情報が得られるように苦心しているところであると思われるが、「GLOBE」の新たな挑戦が情報化社会に再び「編集」の力を訴えるきっかけになっていけばいいと思う。
(2010 広告原論レポートより)
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