賛否両論あるべきライブ[liminal;marginal;eternal]感想
実のところ、本ライブの告知がされた段階ではチケットを購入する気になれなかった。
休日の夜にYoutubeで同じ映像のループを延々と流すという、悪い意味での「シャニマスらしさ」に辟易したためである。
かつて浅倉透の『塊魂』配信目当てでアソビストアプレミアムに加入し、肝心要の配信が短時間で終了したという経験を持つ私は、有り体に言えば警戒していた。
「シャニマスはんは実在性?を重視してはるようですけど、うちのような地に足がついている凡人は付いていけませんわぁ」という気分だったのだ(アソビストアプレミアムの特典には満足しており、加入したこと自体は後悔していない。ただ、この加入経緯には今でも思うところがある)。
その後、「冬が灯る先」というコミュを読んだことで本ライブに興味を持ち、配信チケットを購入するに至る。
本ライブは4つから構成されているものだったが、折角なので全部がセットになっているものを買った。
4つの内容が全部同じという可能性も捨てきれず、その場合は文句の一つもここに書いてやろうという気持ちが少なからずあった。
だが、幸か不幸か実際は全くそんなことはなかった。
折角なので感想をここに書いていく。
忘れないように初日時点での感想も書き残しておく。
また、本ライブはスクショの撮影およびSNSへの投稿が可能(録画、録音は不可)なのだが、note記事へのスクショ利用の可否については分からなかった。
本記事では念のためスクショを一切使っていないが、個人的にはアーカイブ期間中にバシャバシャ撮って保存だけしていくつもりである。
なお、私はシーズでは七草にちかが好きであり、本ライブは全て配信で鑑賞したという立場である。
[never;1]
「完全」なライブ
意味深、というか不穏な演出はしばしば見られたが、ライブ自体は無事に終わった。
また、羽那・はるきのソロ曲が披露されるだろうと期待していたが、まさにその通りだった。これは予想していた人が多かっただろう。
はるきソロの振り付けは初めて見た(おそらく初披露だろう)が、宙に絵を描くような動作や、親指と人差し指を伸ばす決めポーズなどが可愛らしかった。
コメティック楽曲では親指・人差し指・中指を用いた銃のハンドサインがしばしば登場するのだが、それを意識しているのだろうか。
シーズのECHOES 07、『Monochromatic』が披露されたのは嬉しい誤算で楽しめた。
「残り3公演も全く同じ内容だとしたら少し物足りないかもしれない。でも内容は良いし、それはそれで満足かな」というのが率直な感想だった。
[odd;2]を見た上で書くが、[never;1]が「このメンバーでの(2日間における)ライブがもう無い」という意味ではないことを祈る。
追記:[even;4]を見た上で書くが、「このメンバーが揃わないのではないか」という予想は全くの杞憂であった。
そういう予想が出てもおかしくなかった内容だとは思うので(これは「~ことを祈る」などという仰々しい書き方をした上で予想を盛大に外したことへの負け惜しみである)、恥ずかしいがこのまま残しておく。
[odd;2]
「意図的」なトラブル
途中まではつつがなく進行していたが、中盤で異変が起きた。
『Fly and Fly』開始直前で美琴がダウンしたのだ。
ライブはしばらく中断したが、間もなく再開。美琴はそのまま離脱し、ライブは残りのメンバーで進められることになった。
言わずもがなシーズは2人ユニット。当然、にちかが1人でパフォーマンスすることになる。
セトリは1から大きな変更が無い。つまり、7連続シーズ曲からのにちかソロを経て全体曲2曲という構成だ。
美琴が離脱した後、にちかはシーズ曲3曲を1人でこなし、自身のソロ曲を歌った後全体曲2曲を披露するというデスマーチを行った。
偏ったセトリはこれを意識してのものだったのだろうか。
アーカイブを見直したわけではないので分からないが、にちか1人で歌うシーズ曲は美琴パートをある程度カバーしていたものの、所々で歌っていない部分があったように思えた。
それらは(おそらく)1番や2番を問わず共通していた。
歌えなかったのではなく、意図的に「捨てている」ように思えた。ギリギリの状態で、その中でのベストなパフォーマンスを追求する彼女のプロ意識の高さが窺える。
1日目時点での感想
賛否両論あるべき内容
かなり「攻めた」内容であり、賛否両論であるべきだろうと思う(個人的には思うところがあるものの好きだが、これが賛一色だったら明らかに不健全だと思う)。
シャニマスの好きな部分と苦手な部分を同時にぶつけられたようだった。
なお本記事冒頭で触れたものは、明確に苦手な部分である。
仮に美琴が倒れてにちかが奮闘するという流れが「ライブでのトラブルという現実でも起きうるものを取り入れて実在性を高めるため」という目的で作られたのだとしたら、個人的には(実在性云々の部分には)魅力を感じなかったというのが正直なところである。
大一番でのトラブルおよびそれへの対応は、劇的なものに繋がりやすい(これは7月のライブでの『Twinkle way』で経験したことでもある)。
トラブルを意図的に演出に取り入れたのならば、それはもはや筋書でありドラマであると思う。個人的に実在性は高まらなかった。
もっとも、これは私が元々「実在性」を重視していないために抱いた感想かもしれない。
私はライブなどの度に、コンテンツ側がそういった意図をせずとも勝手に没入するタイプのため特に意識していないのである(自分が気付いていないだけでコンテンツ側がそういった要素を高めていたことを知らず知らずのうちに享受していた可能性は大いにあるが)。
個人的には楽しめた
何はともあれ、実在性云々というのは私の邪推に過ぎない。
その点に限っては魅力を感じなかった(重視していなかった)というのは事実だが、その後のにちかのパフォーマンスやルカのリアクション、羽那とはるきの振る舞いがもたらす頼もしさなどは十分楽しめた。
そして、1人でシーズを支えるべく奮闘するにちかの様子には胸打たれるものがあった。
もっとも、これは4つのライブ全ての配信チケットを購入済みであり、1つ目のライブで美琴を含む全員の完全なパフォーマンスを楽しんだから言える感想なのかもしれないが。
自分へのいましめ
私はSNSをガッツリやるタイプではない。だが流石に本ライブへの反応が気になって覗いてみると、賛否両論の嵐が吹き荒れているようだった。
ここで私のようなSNS慣れしていない人間が気をつけるべきは、自分の感情がどこにあるかを見失わないことだと思う。
誰かの嘆きや怒り交じりの感想に便乗し、義憤を膨らませてキャッチーな言葉やそれらしき理屈で装飾する行為は魅力的だが、それを行ううちに自分が本来不満に思っていた範囲がどこからどこまでなのか見失うのは恐ろしい。
SNSという雪原で不満の小さな雪玉を転がして遊んでいたら、いつの間にか制御できないほどの巨塊に成長してしまった…では洒落にならない。
この件に限らず、怒りという感情は大きな快楽を伴う魅力的なものである。またSNSは、怒りを増幅させるには残酷なまでに最適な場である。
私自身本ライブに思う所があるのは事実だが、どこまでが自分の感想で、どこからが他人の怒りに影響されたものなのかは見失わないようにしたい。
ここまで分かり切った内容の講釈を偉そうに垂れた理由は1つで、他でもない私自身がその状態に陥りそうだったからである。
文にする際に努めて客観視したことで、そうなってしまうことは回避できたと思いたい。
自戒の念を込めて書いているこの言葉が誰かの気づきに繋がれば幸いだし、4つのライブを全て見終わった後の私自身の目にどう映るかが気になる。
[or;3]
「完全」な不完全
美琴の体調を考慮した結果、彼女は途中から参加という形になった。
となると当然、にちかが途中まで1人でシーズ曲を担当するという構図は継続である。
また、美琴パートの一部を「捨てている」昨日と異なり、不自然ではない仕上がりとなっていた。カメラワークも1人用のものに調整されていた。
いわば「完全な不完全シーズ」である。
美琴が歌えないことを込みでにちかパートを再構成しているように聞こえた。
先述した実在性云々という内容と矛盾するかもしれないが、そこに至るまでのドラマを想像せずにはいられない。
ハードなセトリは変わらず、途中で疲れを見せている(疲れを見せたのは曲が終わった箇所であり、パフォーマンスに支障をきたしていたわけではない。多分)場面も見られた。
にちかとルカの『Shiny Stories』については、「そう来たか!」という感じだった。個人的に予想できていなかったが、今思えばこの状況には最適な曲であるように感じる。
その後のMCパートにてルカの塩対応と、それに明らかにイラっとしていながらも頑張るにちかが見られて良かった。そのおかげで、危うい雰囲気ではあるが一応会話は成立していた。
美琴が途中から参加した上での『Look up to the sky』は、歌詞に重みが乗っていたように思える。
また、これは全ライブで共通していることだと思うが、彼女が前に踏み出す振り付けの部分ではカメラが足元を映す構図となっており、非常に見応えがあった。
[even;4]
「完全」な完全
冒頭にメンデルスゾーンの『情熱』が流れるのが本ライブに共通していた要素だったが、今回は明らかに様子が違った。いきなり不穏である。
最後まで、この不穏要素が[even;4]のどこで回収されたのかは分からなかった。
[or;3]同様に『Shiny Stories』が披露された。
MCパートではルカからにちかへの厳しめの言葉があったが、これはにちかを見ていないと出て来ないものであり、[or;3]よりは良い反応に思えた。
現状にちかとルカの関係は拗れており、よく分からない部分も多いが、本来の相性自体は悪くないと個人的には思っている。
ルカがにちかをキツめに評価し、にちかがそれを受けてムキムキしながらも、反骨心と共にムキムキに成長していく姿を見たいものである。
また、本ライブでは各公演ごとにカメラワークが異なっていたのも嬉しいポイントだった。
たとえば『Happier』には特徴的な振り付けがある。
「私なりの"いろは"を~」という部分で主旋律を歌っているメンバーに対して、もう片方が両手を挙げてアルファベットのYのようなポーズをとり、ダバダバと動くのである。
本ライブにおいて1~3ライブ目ではYの字をとっている相方は映っていなかった(ように思える)。4公演目にして映ったのは嬉しかった。
それぞれの印象
にちか
シーズ曲を1人で披露する場面は見ていて大変ハラハラした。『Happier』を1人でやっていたらものすごくいたたまれなかったと思うので、それを回避できたのは不幸中の幸いだろうか。
[odd;2]の途中からシーズ曲を1人でやりきった後に待ち構えているのが、よりにもよって『フェアリー・ガール』なのはとんでもない事だと思ったが、しっかりやり遂げていた。
美琴
復帰した後のMCが非常に良かった。
[or;3]後半が怒涛の美琴連打となったのは嬉しかったのだが、病み上がりでそれをこなす形になったのは少々心配でもあった。
同じ事務所のアイドル達の仕事内容やプロフィールは全て把握しているというイメージだったので、羽那の出身を間違えていたのは少々意外だった。
パフォーマンスや仕事に直接関与しない部分なので、覚える優先度が低かったのだろうか。
ルカ
キレッキレのパフォーマンスだった。実力を反映してか、本ライブでもコメティックの3人の中で彼女の動きは頭一つ抜けていたように思える。
美琴退場後にダメージを受けているようにも見えたが、それでも支障をきたさずにやりきる姿に強さを感じた。
ライブのラストに初披露の曲をサプライズで歌うという、かつてのクリスマスライブ(私はリアルタイムで見たわけではないが)を彷彿とさせる演出だった。
羽那
空気を明るくしたという点で、個人的なMVPだった。
重い雰囲気の場面でも明るいテンションで登場する様は、天性のアイドルと称されるだけあると感じた。
また、ルカの尖り気味のMCにマイペースに対応することで独特の空気感が出ているのが楽しかった。
はるき
コメティックの中で個人的に一番好きなのは彼女である。
ソロ曲が初披露されたのは嬉しい。振り付けや表情が可愛らしくて非常に良かった。
また私はライブ当日まで聴けていなかったのだが、『泥濘鳴鳴』がはるきセンター曲というのも嬉しかった。
歌詞をじっくり見たわけではないが、『くだらないや』同様に毒気たっぷりなようだ。「マエナラエが上手ね」という箇所の攻撃力はすさまじい。
これでコメティックのセンターが2巡したと思うので、いつか初期3曲と比較してみたい。
追記:比較してみた
全体での感想:賛否両論あるべきライブ
全体を見た上で個人的には、「私は好きだけど、こういう事は二度とやらないでくれよな!私は大好きだけど!」という感想に落ち着いた。
先述の通り、私はシーズで言えばにちかが好きである。
そのため美琴のプロデューサーの意見を代弁できないし、(おこがましいので)したくはない。
現地参加したわけでもないので現地の方々の意見も代弁できないし、便乗もしたくない。
その上で書かせてもらうと、私は4公演全て楽しめた。
シャニマスのこういう部分が好き、という内容だった。
減点法だと100点マイナスだが、加点法だと1000点プラスという内容だった。
今後のライブも追っていきたい。
読んでいただき、ありがとうございました。