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時代劇感想【暴れん坊将軍】10年ずっと見たかった回
先日『暴れん坊将軍』の新作発表があった。
たまに再放送を見ていた程度の私でも嬉しくなるニュースだ。
子供の頃、私はよく時代劇を見ていた。
平日、小学校から帰ると祖父がリビングで必ず『水戸黄門』の再放送を見ており、自然と私も宿題などをしながら見ていた。日常の一部だった。
『暴れん坊将軍』はもう少し非日常寄りの存在だった。
私が育った地域では平日の午前中に再放送をしていたのだが、普段その時間は学校に行っているため当然見ることはできない。
したがって、当時の私にとって『暴れん坊将軍』は、風邪を引いて学校を休んだ日限定のちょっとレアな番組だった。
朝一番に病院に連れて行ってもらい、帰ってきたら祖父が『暴れん坊将軍』を見ている。体が弱くてよく風邪を引いていた私には、これが定番パターンだった。
病院から帰ってきて緊張が解けたことや、一日学校を休めるという特別感が結びついたのか、見た回数の割に印象が強く残っている。
10年以上見たかった『散るは望郷はぐれ花』
ごく個人的なことではあるが、今回の『暴れん坊将軍』新作発表に関して嬉しいことがもう一つあった。
これがきっかけでずっと見たかった回を見ることができたのだ。
話のタイトルは『散るは望郷はぐれ花』。シーズン3にて放送された回であり、10年以上前に見て以来ずっと見たかった回だ。
私はAmazon Prime Videoの時代劇チャンネルに加入しているが、以前確認した時にはシーズン3が配信されていなかったため視聴を諦めていた。
今回、改めて確認してみたところ全シーズンが配信されていることに気付き視聴に至る。
『散るは望郷はぐれ花』感想
折角なので感想を書いていく。
ストーリーのネタバレ全開なので、これから見る予定がある方は注意いただきたい。
あらすじ
女渡世人(ヤクザのような人)のおぶんは、とあるヤクザ者の親分の娘お染(そめ)の身代わりとなり島流しにあっていた。お染はおぶんの亡き妹に似ていたため、おぶんは何かと面倒を見てやっており、身代わりになったのもその一環だった。
おぶんはお染に対して、親元から離れてカタギ(ヤクザなどと関わりを持たない普通の人)として平和に暮らしてほしいと強く願っている。身代わりになったのもお染をカタギにするのと交換条件だったようだ。だがお染が言うには、彼女自身はカタギになりたいのだが父親である親分がなかなか許可してくれないらしい。
しかも親分はおぶんの交換条件を無視するだけでなく、口封じを目論んでいた。
つまり、刑期を終えて江戸に帰還したおぶんの殺害を試みていたのである。彼女は事情を知りすぎていたのだ。
イケメンな上様
ある日、おぶんが親分による刺客数名に襲われているところを上様が偶然見かけ助けに入る。なお刺客は、上様が助太刀するまでもなくおぶんがドスを用いて撃退していた。つよい。
流石に刺客の数が多かったのか、彼女は腕を負傷していた。傷口を見ようと袖を捲った上様は、その腕に前科者であることを示す入れ墨が彫られているのに気付く。
だが、まるで気にせず布を腕に巻いてやる上様。イケメンである。
傷の介抱を終え良い感じになる二人のもとに突如桜の花びらが散ってくる。
「散るにはまだ早いのに…」
「風に吹くなとも言えまい」
「世間と同じ…ままなりませんね」
なんとも雅な会話を経てさらに良い感じになる二人。
まさかの裏切り
親分が狙うのはおぶん自身だけではない。彼女の周囲の人々が次々と殺される。
今回のゲストキャラとして彼女の舎弟でありお染と良い感じだった男や、カタギの人間であるおとっつぁんなどが登場していたが、いずれも凄惨な死を迎える。
一度は足を洗おうとしたおぶんだが、復讐のために再びドスを握り、親分の元に向かう。
それを妨害すべく襲ってくる刺客たちを次々と斬るおぶん。その顔は怒りと憎悪に満ち満ちている。だが多勢に無勢で、遂に手傷を負って怯んでしまう。そして、そこに突如現れたお染によって刺される。
お染ははじめからカタギになるつもりなどなかったのだ。おぶんもその舎弟も、お染にとっては利用するだけの存在に過ぎなかった。
駆け付けた上様の腕の中で死にゆくおぶん。彼女はお染に裏切られたことが分かった上でなお、最期までお染のことを案じていた。妹と同じくいい子だが、環境で毒に染まってしまったとおぶんは言う。
そこには自分に致命傷を与えた女への恨み言など全くなかった。
痺れる殺陣シーン
『暴れん坊将軍』では殺陣シーンでいつもおなじみのBGMが流れるが、今回は違う。おぶんを殺され明らかにブチギレている上様とは対照的に、静かで物悲しいBGMが流れるのだ。
10年以上私の記憶に焼き付いているニクい演出である。
また、上様は基本的に右手で刀を振るうのだが、殺陣の中で背後から迫る敵を牽制すべく刀を瞬時に左手に持ち替えて突き付ける場面がある。
ここがカッコいい。サラッとやっているのだが、これは高度なテクニックではないだろうか。
ブチギレている今回ですら峰打ちを徹底している上様だが、手を持ち替えて突き付けたこのシーンは向きの関係上、峰打ちではなく通常の持ち方をしているように見える。突き付けられた相手は怯んで動けなくなっているが、これは仕方ないだろう。
ここは当時の記憶には無かったが、見返して初めて気づいたカッコいいシーンである。
殺陣の最中、上様の刀が庭に生えていた桜の枝に当たって花びらが舞う。非常に印象的で、おぶんと上様のやりとりやタイトルを思い出させ、こちらも強く記憶に残っていたシーンだ。
なお、記憶よりもだいぶ多く花びらが舞っていた。いや、めちゃくちゃ多いと言ってもいいかもしれない。
まさかのゲストキャラ全滅
おぶんの周囲の人々、そして彼女自身が殺されることは既に書いたが、悪役連中も全員死んだ。
ある者は御庭番に斬られ、ある者は自ら腹を切った。お染もまた、転倒した際になんか偶然刀が胸に刺さって死ぬという少々シュールな最期を遂げた。
『散るは望郷はぐれ花』というタイトルからなんとなく察せられたことではあるが、敵味方関係なくゲストキャラが全員散るとは驚きである。
終わりに
お染の悪女ぶり、殺陣の最中に舞う桜、静かなBGMで戦うブチギレ上様などが強く印象に残っていた回だったが、舞っていた桜の量が記憶よりもだいぶ多かったことを除くとおおむね記憶通りで、懐かしかった。
新作発表も嬉しかったし、見たかった回が見られたのも嬉しい。
新作の放送は2025年1月4日。楽しみである。
読んでいただき、ありがとうございました。